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いつもダンジョンに居ます  作者: ねむねむぴよ
第二部 王国の食指
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58話


 重苦しい雰囲気の昼食会が開かれた。


 テーブルを挿み、セルジオとグレゴリアル・村長と狐目の男・士官・・・と人数合わせで末席にレェブラーシカまで座っている。

 (こちらの席順でいろいろ揉めたのは言うまでもない)


 「セルジオ殿、まずはこの度は鷹揚な要請を謝罪したい。

 そなたの行いは決して忌避されるものではないと私も感じているし、そなたの口上、感銘を受けた」

 食前酒を呷り、グレゴリアルが話をつづける。

 「兵とは消耗品として扱われる。

 大きな戦になれば、遺族に亡骸なきがらを届ける事もかなわん。

 心在る物ならば、そなたの言葉が意図するとことを悪く言うものは居るまい」

 視線だけを狐目の男に送り、再び話を続ける。


 「しかし、そなたの所からもたらされる財宝が王国の金貨を根こそぎ吸い上げているのも事実なのだ。

 先の言葉に嘘があるとは思えんが、実際死者の遺品を勝手に処分しているのでは言葉に重みがなくなるのだがどうだ?」

 鋭く抉るような視線をセルジオに向けて、給仕に再び酒を所望する。


 「それは・・・・「そうねぇ・・・・」」ニーニャが口を開きかけた所で被せるようにクーリンディアドが口を挿む。

 「あっごめんなさぃ、私は食客のクーリンディアドって申します、以後宜しくねぇ」

 グレゴリアルが眉間に深い縦皺を寄せ彼を睨む。

 「あなた方が思うような事ではなくってよ?

 彼等の遺品の殆どは古の兵士の怨嗟の念を浴びて、呪いの呪物と化しているわぁ。

 しかし、セルジオが正規の流れで取り扱う品物で呪われたと言う話を聞かれたことがお有り?

 丁寧に埋葬し、幾ばくかの遺品を彼等の望む形で世に送り出しているだけよ?」


 「これおいしいわねぇ」などと言いながら前菜を口に運び、視線を向けずに話を続ける。


 「当主はすでにダンジョンの引き渡しに応じてるでしょ?

 それより、王国が正しい手続きを取らず横紙破りをしてきたことが問題なのではなくって?」

 流し目で狐目の男を見ながら、食事に専念し口を閉じる。


 「それは王国に反意ありという事ですか?」

 狐目の男が強めの語気で答える。

 「わ・た・し・は食客なのよ若造、モノの道理を問うているだけよ?」

 いやクーリンディアド、がっつり喧嘩を売ってます。

 「王国の品位や権威が知れるわよ?

 それとも、あなたは国王から全権委任でも受けているわけぇ?」

 「なっ!なにぉ「黙れ!!」」グレゴリアルの一喝で狐目の男が口を閉じる。


 「クーリンディアド殿の言い分も解らぬではないが、言葉が過ぎよう?」

 「あら?ごめんなさい」彼がウインクと共にグレゴリアルに謝罪する。


 「で、何が問題なの? 本音を聞かせてくれて?」

 「・・・・ハハハハ!!

 ただのオカマでは無いとは思っていたが、狸、いやムジナであったか」

 グレゴリアルが笑いながら笑っていない目で彼を睨む。

 「あなたがもう少し若ければ、私も惚れてたかもしれないわぁ♪」

 「それは御免こうむりたい」

 「即答?つれないわねぇ・・・・」ニコリと笑う変態紳士。

 そして「で、どうなの?」とたたみ掛ける。


 「正直、私は気が進まん。

 私の直轄の兵ならば私の指示にも従おう。

 しかし、この度の行軍は既に揉め事在りきの物であった」

 素面では話せないと言いたげに、ワインを瓶ごと所望し、手酌で飲み始める。


 「行軍した兵の八割が貴族のボンボンでな、奴らは村人など人と思ってない節がある。

 私も軍を預かる身である以上、おいそれと引けん。王国の顔を立てろ・・・・」


 「ダンジョンの引き渡しだけではなく、これから起こるボンボンの狼藉に目を瞑れと?」

 グレゴリアルが苦い表情で笑う。

 「そこまでは言っておらん、目の届くところでは統制は取る」

 それは、目の届かない所で色々起きると言っているのと同じだ。


 「・・・・レイクウッドさん? どれだけ時間があれば足りるかしらぁ?」

 「そうさの、4日・・・いや3日あればそれなりに手配が付こう・・・・」

 元村長が苦い表情で答える。

 「だ、そうよ? それまでボンボンたちは禁欲できるかしらぁ?」

 「露骨に言うな、クーリンディアド殿」

 「クディでいいわぁ、グレちゃん?」


 「グレちゃん?・・・・まぁ、よかろう。

 これからの話は、そなたと行えばよいのか?」


 「クディよ! ね?セルジオちゃん・・・・?」

 突然呼ばれ、メインの料理を口いっぱいに頬張るセルジオが振り向く。


 「「「「・・・・」」」」

 「あなたって、ある意味大物ねぇ・・・・」

 男食紳士も思わず苦笑いをした。


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