51話
パ・パ・パッパラ・パァー
パ・パ・パッパラ・パァー
王国の使者が来訪を伝えるラッパを鳴らす。
ニーニャが店の窓のカーテンを少しだけめくり外を覗く。
「とうとう来たわねぇ」「はい、来ましたねニーニャさん」
「来たな、レ・レ・レラ殿・・・・」「?、はい!」
『はぅ~ん♪ 鼻血が出そうに成るではないか! なんだこの愛らしい生き物は!?』
「ケレブレシアさん、来ましたね・・・」「ん? あぁ来たな」
『っち、私の心の楽園を邪魔するな小僧・・・・』
『くぁ、貫くような鋭い視線がいぃ!しかも、いい匂い・・・・俺幸せかも』
「わたしもぉ、きたわよぉ♪」 ピィキーン! 固まるジード。
「予定では昼には紋章官の鑑定証書が届くはずなのに、まだなのよねぇ・・・・
だから、時間を稼ぐの、いいわね?「うん!リリルも頑張る!」」
「え、誰? 彼女お店に入れたの?」
「あん、ごめんなさぃ、わたしぃ「行ってくるぅ!!」」
「「「「あっ!」」」」
なんだか色んな計画が瓦解してゆくイメージが一同を包んだ。
・・・・
勅使は馬車に乗っており、四方を着飾った騎士が護衛している。
屋敷から、元村長がメイドと共に表に出てくる。
馬車から、真っ白な法衣を纏った老人が身の回りの世話をする助祭と共に降りてきた。
元村長とメイド達が傅きレイクウッド(元村長)が口上を述べる。
「鄙びた村に、猊下のご尊来の栄を賜り誠に・・・・」
最後まで口上を言い切らず頭を下げる。
「しかしながら、この家の頭首、セルジオは現在所用にて不在にしております。
まだ家を興し間が経ちませぬゆえ、猊下をお招き出きる備えが・・・・」
高齢の高僧に替わり、助祭が前にでる。
「お気遣いに及びません、当方にて全ての用意があります。この場にて待たせて頂く。」
見下したような視線を元村長に向ける。
「おじちゃん?」
『!?、リリル!!』 元村長の顔色が青くなる。
無礼打ちなど平然と行う奴等の中に、5歳の女の子が立っているのだ。
「リリル! こちらを手伝ってくれますか?」
メイド服を着た可愛いレェブラーシカ(見た目は10歳)が5歳の子を呼んでいる。
騎士達も思わず、『あぁお手伝いか』と思わず納得してしまう。
そこにメイド服のケレブレシアが今にも零れ落ちそうな胸を揺らしながらレラに駆け寄る。
「レラ、私がやりますから貴方は食堂に・・・・」
下働きの子供をかばうお姉さんメイドの絵がそこにあった。
騎士達の目がケレブレシアの胸に釘付けになる。
「・・・・レシア!」
ジードが彼女を追って現れると、『この美女の男か?』と言う微妙な空気に変わる。
「あらぁ、ジードちゃん? こんなところでどうしたのぉ?」
馬にまたがる騎士達が身震いしたような気がする。
しかし、一人反応が違う。
助祭の視線がクーリンディアド(紳士男エルフ)に縫い付けられ頬を赤く染めている。
「こんな所で待ってても仕方ないじゃない?
ここも、食堂もたいして変わらないのだから食堂でお茶でも如何かしらん?」
クーリンディアドが彼にウインクする。
「き、貴兄がそこまで言うのならば・・・・皆の者その様に!」
助祭は何故かとても嬉しそうに司祭を介護しながら、紳士男エルフに付いて行こうとするそばで、再びリリルが助祭に追いすがる。
「おじちゃん偉いの? 偉い人?」
「・・・・私は神に仕える身、偉くもなんともありません!」
子供が嫌いなのか、邪険な態度をとる。
少し寂しそうなリリルが何かを握った右手を助祭に差し出す。
「そっかぁ、おじさんにも私のお友達をあげる♪ おじさんも友達だよ♪」
分けも分からず、差し出された物を受け取る。
手の中で蠢くダンゴ虫。
「ひっ、ひゃぁあぁぁぁあ!!!」助祭は手を払い顔を青くしてよろめく。
元村長ほか、見てる面々が凍りつく。
「あぁ?! えっ? あん♡」
助祭の肩を抱くクーリンディアド、何故だか少し開いた口元の歯がキラリと輝く。
助祭と紳士男エルフの顔が近い。そして助祭の目がウルウルと潤み始め両手が胸元で組まれている。
クーリンディアドが助祭を優しくエスコートしながら食堂へ向かう。
途中すれ違うジードがサムズアップのサインを送る。
それに答え紳士男エルフの口元が、口パクで伝えてくる。
『あとで、からだで払ってね♡』 再び凍りつくジード。
『・・・・わしの心配はいったい』元村長は一行を見送り、大きな溜息を付き天を仰いだ。
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