38話
ニーニャのお店の午後の営業がはじまる。
次々と訪れるお金をもってそうな豪華な服装の人々。
なかには肌の色の違う異邦人まで客として訪れている。
目の前でワールドワイドな感じの取引が行われていく。
持ち込まれる貨幣は様々だ。
ニーニャの手で鑑定され次々とレェブラーシカの手で運び去られていく。
セルジオの理解を超えた金額のやり取りに、なんだか頭がクラクラする。
緊張感あふれる商談が続く店内の空気に耐えられず窓の外を見る。
多くの人の気配がする。
セルジオは表の様子が気になり、裏口から表の様子をこっそり確かめた。
豪華な馬車と従者の長い行列が出来上がっている。
挨拶をしてきた隊長がお店の入り口で来店者の差配を行っている。
彼の部下は思っていたよりも多く、入り口で槍を林の様に掲げ、衛兵の様に隊列を組み来訪者を威圧していた。
『わぁ・・・・どこの国の衛兵?』
まったく実感の湧かないセルジオ。
振り返ると裏口の左右を守る守衛と目があう。
守衛は何事もないように視線をずらし、半眼の瞳孔が正面を見据え微動だにしない。
非常に訓練された守衛のようだが、セルジオにしてみればおっかない人に見えた。
セルジオが脇を抜けると、最敬礼で応じられ、ビクリと身を強張らせた。
ビクビクしながらセルジオは、ぺこりと頭をさげ再び店に戻る。
商談室に戻ると、ニーニャは丁度商談が終わったようでカウンターを片づけていた。
「あら、もうこんな時間、そろそろ閉めるわよ! あと5組ほど、あとはお帰り頂いて!」
ニーニャは戸の向こうに聞こえるように声を掛ける。
ザッザ!
集団の動く気配が、戸の向こうから聞こえる。
カランカラン
隊長が入り口から顔を出す。
「では、周辺警護に人員を回します。
何かあれば表の者に行ってください。では、また明日!」
敬礼をして、その場を辞する隊長。
「お疲れさま、また明日もよろしくね」
ニーニャも慣れた物である。
その後は何事もなく商談が進み、最後の客が店を出るとニーニャが声を掛けてくる。
「どう? 解ってくれた?」
「・・・・えぇ、なんとなくですが凄い事になってるんですね?」
「フフフそうよ、もうウハウハなんだから♪」
彼女の話によると、もうこの国で3本指に自分の名前が入ってるらしく、楽し気に笑う姿がとても充実している事を物語っていた。
パンパカパーン! 記念回、リリル嬢のワンマンショー!! パフパフ!
村の広場の雛段。
ざわめくスタッフの声。
居るはずの、リリルの姿が無い。
・・・・
・・・・
カメラクルーが、慌ててカメラを抱えて移動する。
ひな壇の後ろに回り込み、画面が激しく左右に揺れ動く。
・・・・
『あっ!あそこに居るぞ!!』(プロデューサーの声が入る)
カメラが植込みにしゃがみ込むリリルに走り寄る。
・・・・
・・・・
「ん? はじまってるの? わかった!」
リリルは、植込みの地面をスコップで掘り返すのをやめ、こちらに振り向く。
「リリル レイクウッド っていうの、今度で・・・・」
自分の手を見ながら、指を折り曲げ、年を数の4を示そうとするが、少し考えてこちらを向く。
「こんどね、リリルね、こんど5歳になるの」
「リラおねーちゃんみたいな、おねーさんになるんだよぉ!」
「でね、リリルね、セルジオ兄ちゃんのお嫁さんになるの!」
「マーニがね、男の子は『うわきしょう?』だから、しっかり捕まえないとダメっていってたの」
「だからリリルは、ちゃんと捕まえるんだ! えへへ♪」
「でね、一緒の家に住むと、『どうせい』っていうんだって!」
「このまえ、おじいちゃんが言っての!」
「だから、リリルもどうせいなの!」
「さきに『どうせい』のニーニャお姉ちゃんには、負けないんだよ!」
カメラにすごく近づき、画面が暗く成る。
カメラがさがり、リリルの顔が再び見えるようになる。
「けど、リラお姉ちゃんには負けちゃうかもしれないんだぁ・・・・
だって、リラお姉ちゃん可愛いし、おりょうり上手だし・・・・
リラお姉ちゃんならしょうがないよね?」 少ししんなりするリリル。
「けど、わたし知ってるんだぁ、リラお姉ちゃん少し年上の男の人が良いんだって」
「えへへ、セルジオお兄ちゃん、ざんねん!」
「だからね、わたししか・・・・いないでしょ?」
ニカァッ!!!!と笑顔になるリリル。
「あ! このことは、みんなに内緒だよ!?」
「えっとね、わたしの友達あげるから応援してね?」
ポケットから大量のダンゴ虫を掴み出し、こちらにズイと掌を開いて見せる。
画面いっぱいの、ウゾウゾ、蠢うごめくダンゴ虫。
「ひゃはは♪ みんな、まるくなるのぉ、すごいよぉ」
座り込み、零れ落ちたダンゴ虫をウリウリしはじめる リリル嬢だった。
・・・・
・・・・
彼女の気持ちが向いてる先は良く解りませんが・・・・
今後とも『いつもダンジョンに居ます』をよろしくお願いいたします。




