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いつもダンジョンに居ます  作者: ねむねむぴよ
第一部 一章 墓守始めました
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36話

 タタタタタタ


 「セルジオさん?」

 「はい!?」

 「どうぞコレをご賞味ください」

 トレイにのったクッキーとハーブティーをポットごと運んできて、商談室のテーブルでカップに注ぐ。

 「おかわりが必要でしたら、いつでも言って下さいね? では」


 タタタタタタ


 フリフリの付いたメイド服が可愛いレェブラーシカさんはクルリと向きを変え去って行く。


 「セルジオさん、そろそろお客を入れますけど、よいですか?」


 「え? あ、はい俺は構いません」

 「では・・・ 最初の方を入れて下さい!」

 大きな声を掛けると、扉のドワベルが小気味よい鐘の音を鳴らす。


 セルジオを追いかけた執事の一人だろうか、澄ました表情でカウンターに近寄る。


 「いらっしゃいませ、ご用向きは何でしょうか?」


 「私はレブランド公爵筆頭執事のカールと申し。

 この度ゴダール金貨5枚と指輪を求めたく伺った。」


 「失礼ですが、相場はご存知ですか?」

 ニーニャが失礼にならないように、抑揚に気を配り尋ねた。


 「存じて居る。支払いはザール金貨でよいな?」

 探るように、しかし蔑みのこもった口調で言い放つ。


 「ザール金貨ですか、あれは質が良くないですから・・・・」

 ニーニャも暗に扱いに困る悪貨での支払いは困ると表情で伝える。


 「では、ワール金貨ならよいな?」

 鼻で笑い、業突くな女だとでもいわんばかりに告げる。


 「たぶん、ご存じでお尋ねかと思われますが、いずれの貨幣も取引前に全て調べさせて頂きますがよろしいですか?」


 「それは構わんが、主人に急ぎ求めて戻れと言われおる。

 昨日は随分と待たされ、結局は本日に順送りとなったのだ。

 時間が無い。急いでもらえるか?」

 カールと言う人物は、何か都合の悪いのかチェックを許可をするがソワソワと落ち着かない。


 「・・・・では、私が目利きしますが、よろしいですか?」

 「構わん早くしてくれ」


 「ではお持ちの貨幣をここに」

 カールは手を叩くと、彼の使用人が金貨のビッシリ詰まった箱を3箱持ち込む。


 「これが見本だ」カールという人物は懐から革袋に入った貨幣を差し出す。

 ニーニャはそれには目もくれず、箱に入った貨幣に目を向けそちらに歩み寄る。


 カールの顔が歪み、額に青筋がたつ。

 だが、彼は怒りの表情を作っているが、一筋の汗が首を伝う。


 ニーニャは金貨の山に手を突っ込み、数度グリグリと掻き回し数度に分けて3度金貨を掴みだす。


 全部で10枚のワール金貨、そのいずれも曇った輝きの金貨だった。

 カールの顔色が悪く成る。

 それを天秤にのせ、片方にゴダール金貨を一枚のせる。


 大きさは明らかに10枚の金貨が大きいが、ゴダール金貨を持ち上げる事が出来ない。

 再度左右を入替、金貨を乗せる。結果は同じ。


 そこでニーニャは裏方に声を掛け準備を始める。


 深い陶製の器と試薬を取り出した。

 ワール金貨の一枚にヘラで傷を入れる。

 ルーペで金属を確認した後

 器に乗せ試薬を垂らすとシュワーと発泡音と共に溶けて行く。


 カウンターの引き出しから、自前のワール金貨を取り出し同じ作業をする。

 先ほどより軽い発泡音と共に葉面がとけ眩い黄金色が見えだす。


 「悪貨を掴まされたようですね・・・・残念です」

 持って来られた貨幣は半分以上溶けスカスカになっている。


 怒りか、それとも恥ずかしさか、カールがなわなわと震えている。


 黄金色が強くなったワール金貨を水で漱ぎ、カールに差し出す。

 「目方は在りますが、先ほどの質ですと、そちらの全てでゴダール金貨一枚に見合うか・・・・

せっかくご来店いただいたので、本来このような取引は致しませんが、レブランド公爵の信用取引という事でその条件でなら交換いたしましょう」


 「一枚だと?! それは困る!」

 席を立ち、前のめりでニーニャに迫る。


 「それでは、このお話しは無かったことに・・・・当件は決して口外いたしません、ご安心ください」

 営業スマイル、プライスレスた。


 「何を?!商人風情が!!筆頭執事に恩を売ったつもりか?!

 女とおもって優しくすればつけあがりおって、黙って交換すればよいのだ!!」

 椅子を蹴って掴みかかろうとするカールを冷静に見つめるニーニャ。

 逆切れである。


 次の瞬間


 カランカッ!


 戸のベルが激しく鳴り、音が消えぬ間にカールの姿が表に引き出される。

 表の荒事担当が摘まみだしたのだ。


 「お帰りですね、持って来られた貨幣は全てお持ち帰りください」


 ニーニャは戸を開けたまま、彼の使用人に目配せし貨幣を運び出させる。

 最後に、自前の溶けたワール金貨をそっとカールに握らせ微笑みながら耳打ちする。

 「都の方には内緒にしておきます、ご留意くださいませ」

 再び営業スマイルで逃げるように去っていく彼を見送る。


 怖い笑顔だ。

 セルジオが身震いする。


 「次の方! どうぞ中へ」


 ・・・・


 午前中に金貨、銀貨、銅貨の各種 指輪とネックレスが売れて行った。

 売れる度に大量の金貨が運び込まれ、レェブラーシカがよっこらしょと代車で運び出していく。


 昼時になりニーニャが商談室訪れ、レェブラーシカの運んできた昼食を3名で戴くことになった。




 ――――――


 ご覧頂いてる皆様も、セルジオの収支が気になっていると思いますのでコッソリ開示します。

 これ迄の記録(資産が莫大な額に膨らんでます。セルジオまったく理解してません)


 以下、村人の態度が変わった要因です。

 (尚、宝飾品は鑑定後、都で競売に掛けられて高額取引されているようです)

 もう、いつ強盗が、いや国が襲ってきてもおかしくない資産額になっています。


 ダンジョン探査 33日目

 潜入階層不明


 名前セルジオ:年齢18歳:男性

 職業:墓守兼一応農夫

 埋葬者数 1363 回収遺体 1361


 装備

  墓守の石鋤いしすき

  死者を埋葬するために使用すると魂魄が強くなる。


 夢現ゆめうつつのメダリオン

  ダンジョンの通行書を兼ねている。

  魔法の罠は動かない。


 マーリンの腕輪

  古ゴダール王朝の筆頭宮廷魔法使いの腕輪。

  古の魔法技術ロストテクノロシーを駆使して作られた物。

  まだ、腕輪の能力が発動するような窮地に立たされておらず、能力は不明。

  一応装備はしているようだ。


 村長預かり

 ※通貨イメージ

 金貨一万円・銀貨千円・銅貨100円:金属価値で比例した大きさと判断下さい。


 所持金:精霊銀貨 50枚 約50億円相当の

金貨   845,180枚 

     銀貨   24,342枚

  宝石(時価): 2 ブルーサファイヤ 

          1 ピンクダイヤモンド 

          2 大粒のダイヤ 

          4 大きなぎょく(翡翠) 

          3 大粒のルビー


 ニーニャ預かり

  ゴダールの硬貨 金貨 153枚

          銀貨 40枚

          銅貨 37枚

  素早さの指輪 3個

  回復の指輪  2個

  力の指輪   2個

  囁きの指輪  6個


 未鑑定

   死者のサークレット  5個

   死者のネックレス   4個

   死者の腕輪      2個

   死者のイヤリング   1個

   死者の指輪      3個

   死者の宝石      5個

   死者の剣       2振

   死者のナイフ     2口(握りは朽ちており刃のみ)

   死者のメイス     1本(握りは朽ちているが装飾の瀟洒な金属部分)

   死者のスタッフ    1本(木と金属の様な素材だが朽ちていない)

   死者の弓       2個(黒檀のような光沢の有る長弓、弦はない)


 ※武器類の再生は、工房に発注するか検討しているが、まだ死蔵中

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