表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつもダンジョンに居ます  作者: ねむねむぴよ
第一部 一章 墓守始めました
63/256

34話

 『なんだか道が広く成っている』

 驚くほど綺麗に整備されている村へ続く道をみてセルジオは目を見開く。


 このところ、セルジオは家とダンジョンの往復しかして居らず村には降りていない。

 そのひと月で、家から村までの道が拡幅かくふくされており、馬車が余裕ですれ違う幅を確保してある。


 「いつの間にこんなに・・・・」

 数人の職人が、道を石敷きにするため既に集まっており、パイプを吹かしながら雑談をしている。


 彼らとセルジオの目が合う。


 「!!? セルジオさん? おはようございます!!」

 休んでいた職人達が突然立ち上がり直立不動で挨拶をしてくる。


 「な!・・・・お、おはようございます」

 面食らうセルジオ。


 驚いて思わず固まるセルジオを、リリルが行こうと手を引く。


 村へと向かう道をまた下り始めると、職人たちがヒソヒソと何かを話始めるが、気にせず先を急ぐ。


 「リリル、さっきの人達変だったね・・・・」

 鼻歌を歌っている少女に思わず話しかけるが、不思議そうに首を傾げるだけで、また鼻歌を歌い始める。


 いつの間にか土の道が石畳に変わり、守衛小屋の様な物がある所に差し掛かるといかつい守衛が飛び出してきて敬礼をする。


 気味の悪く成ったセルジオはぺこりと頭を下げ、リリルを引き小走りで通り過ぎた。


 そして、村の広場に着いたのだが・・・・

 「・・・・凄い」

 村は建設ラッシュ。


 地面が見えていた広場は、石畳になっており周辺の建物の殆どは改装か増築、新築もあちこちで着工している。

 時折すれ違う昔からの村人が、にこやかに微笑みかけてくる。


 「あ! あれだよ! 新しいお菓子のお店だってお姉ちゃんがいってた」

 リリルが手をグイグイ引いて行く。

 「あ、え? お姉ちゃん?」

 「ん? レラお姉ちゃんだぉ?」


 「・・・・お姉ちゃんだね」 何かを思い出すが口には出さない。


 ポップな色彩の看板の方から、甘い香りがする。


 「これこれ、くれぷ? っていうんだって」

 「そっか、リリルって物知りなんだね」

 「へへぇ~ん♪」 得意げな満面の笑顔をみせるリリル。


 若い女性の店員が、始業前なのか試し焼きをしている。

 「えっと、 いいですか?」 セルジオがおずおずと話しかける。


 「はい! いらっしゃいませ・・・・

 え? セ、セルジオさんですか? キャ!」


 店の奥に身をひるがえし飛んでいく。 

 「セルジオさんが来てるの、うそじゃないって!!」奥が騒がしい。


 奥から、おばちゃんが出てくる。

 「いらっしゃい! まぁセルジオ? 久々ね♪」

 とてもフレンドリーに話しかけてくるおばちゃん。

 

 あまりどころか、まったく記憶にない。

 いや見た事はある気がする位。

 その他大勢のおばちゃんの一人。


 「うちの看板娘、どうだい? 可愛いだろう? うちの娘なんだよ、今年で18になるのよ」

 「もぉやめてよ母さん」娘は耳まで真っ赤にしてこちらをチラ見している。


 「は、はぁ・・・・あの、くれぷ?って言うのを二つ下さい」

 「え? あぁそうね、うちのクレープを買いに来たんだね・・・・直ぐ焼くからちょっと待ってね」


 わたわたと鉄板で生地を焼き、この季節には珍しい果物をのせてシロップを垂らす。


 「わぁ!おいしそう!!」 リリルがトッピングをぴょんぴょん跳ねながらみている。

 「・・・・あの、お代は?」


 「あぁ、そんなの要らないよ!


 だからね、また来てくれないかい?


 それとも上がってくかい?

 ちょっと散らかってるけどねぇ、アハハハ。

 なんなら今からでも構わないんだけど、どう?」


 どこかのセールスレディー張りにグイグイくるおばちゃんに、機会があればと言葉を濁す。

 そして、クレープを受け取ろうするが、なかなか渡してくれない。


 「・・・・だから、うちの旦那がね、セルジオが凄いって褒めっぱなしでねぇ。

 若いのに頑張ってるってさぁ・・・・


 あら、やだ、ごめんなさい。

 この後なにか用事でもあったのかい?」


 おばちゃんの長話に少しうんざりした顔をしてしまい、空気を読んだおばちゃんが水を向ける。


 「えぇ、打ち合わせがあるんです『夕方だけど』」嘘はついていない。


 「あら、冷めちゃったね、また焼くから・・「それがいいです!」」

 被り気味に声を掛け、「そうかい?」という残念そうなおばちゃんからクレープを受け取りその場を去った。


 「セルジオ兄ちゃん、モテモテ♪」

 リリルがニコニコしながら顔を覗きこむ。


 「ハハハ、何だろうね?」

 乾いた笑顔を見せながら少女に尋ねる。


 「お兄ちゃんが、どくしんだからだよ!

 だから、私がお嫁さんに成ってあげようか?」


 ちょっと赤い顔して、照れながらクレープに齧り付くリリル。


 「はっはっは・・・・リリルはおませだねぇ」


 ・・・・下手に返事をすると、とんでもないことに成りそうだと話を濁すセルジオだった。

感想・評価おまちしてます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ