30話
星が見え始め夜の帳が下りた頃、埋葬を終えたセルジオは再びダンジョンに潜る。
カンテラの光が照らす遺体の山は一見昼間と変わらないように思える。
しかし、夜のダンジョンからは何やら陽炎のような歪みを感じた。
怨嗟の囁きや啜り泣き、強い痛みで呻く声、恐怖に震え慄く声、喉を裂く狂気の叫び、さまざまな思いが聞こえる気がする。
セルジオは既に500体を越える遺体を埋葬していた。
そして、その霊が埋葬する度に彼を訪れる。
日常的、いやほぼ毎日幽霊と対面している。
とても異常な日常。
だが・・・・
ここまで来ると、逆に慣れない方がおかしい。
セルジオは最近、幽霊関連に対しなにも感じなくなっていた。
怖い?
恐ろしい?
まったくそう感じない。
それどころか、いつも訪ねて来る知り合いの様に親しささえ感じている。
そんな心持だからか一人で遺体を回収していても、日々の空耳もまぁいつもの事かと聞き流している。
なので今更感満載、彼には酒場で毒づく酔っ払いの戯言レベルに聞こえていた。
『まぁ、死んでも誰にも弔って貰えなかったんだから、愚痴の一つも言いたいよな』
程にしか感じていないセルジオだった。
ゴロン
「結構重たそうだから、転がしていくか」
大人の目方3名分もあろうかという重さのゴーレムの頭に石鋤をあてがい、箒で掃くようにゴロゴロ転がし坂を上がっていく。
長い坂道を掃きあげる。
そして、ダンジョンの入り口に足を掛けると、最後の一掃き。
ゴロリと地上に履き出した。
ドォム!!
相当な重さなのだろう。地面に半分ほど、めり込んでしまう。
「無茶苦茶な重さなんだなぁ、まぁ遺物だし、日が昇ったらニーニャさんに見てもらおう」
そう言いつつも、長い坂道を地上まで運び上げた達成感と、地面から掘り起こす面倒が重なり。
急速に関心が薄れていく。
見ようによっては、ちょうど良い腰掛の様な岩に見えなくも無い。
セルジオは一仕事終え、フゥ、と溜息を付き、狭いながらも楽しい?我が家へ帰って行った。
星空の下、静かな畑の中、石棺を思わせる大石
古代語で『真理』と書かれたゴーレムの頭が静かに月光を浴びていた。




