22話
セルジオはこの所、ダンジョンと墓所の往復ばかりしている。
袋を使い捨てにすることにも少しもったいないと感じるが、遺骸の状態が次第に悪くなり個々を判別できない為、一纏めに埋葬するようになっていた。
そんな日が数日過ぎたある日、ジードに依頼した倉庫が出来上がった。
「どうよ!セルジオ」
「うん、いまの家より立派だ」
柱や張りは厳選された木材でしっかりと組まれ、三方を壁で仕切られた母屋よりも立派な倉庫がそこにあった。
二人は腕組みして倉庫を眺める。
ジードが作りや工程について、アーダコーダと語っていると、ふと、顔を上げた。
視線の先、袋を抱えたニーニャがこちらに歩いてくる。
「倉庫できました? わぁ立派ですね」
などと声を掛け、袋はどこに置く?と尋ねながら倉庫の隅にドサリと荷を降ろした。
「あ、ニーニャさんお体はもう大丈夫ですか?」
「えぇ、この通り」女性なのに腕まくりして力瘤を作るポーズを決める。
「そうそう、この倉庫の隣にお店を設えたらだめですか?」
「え? セルジオさんもちでいいの?」
「えぇ、いろいろお手間掛けますし」
「ひゃぁセルジオさん太っ腹やん、惚れてしまいそう♪」
ニーニャの言葉に自分のお腹を見て『俺って太った?』というリアクション。
ジードとニーニャが思わず吹いてしまう。
「とりあえず500位用意したけど大丈夫そうね、今週中には全部納めるわね?」
「あ、500じゃ足りなくなりそうなので1000で」
「え?・・・・分かったわ、追加発注しておくわね」
ニーニャのあとから荷を運ぶ女性の商人に声をかけると、彼女は頷きかけていく。
「埋葬、一人で大変そうね。 それにしてもペースが速くなってる?」
「そうですね、個別に埋葬できないので申し訳ないのですが・・・・」
ゼルジオは両親の塚のほうを見ると周りにいくつもの塚が出来上がっていた。
「・・・・もうあんなに」一見どこかの分譲霊園風の雰囲気が漂い始めた墓所に思わずこぼす。
「たぶんあの斜面一面が墓地になるんだな・・・・」ジードも感慨深げに言う。
「あ、そうそう古銭は全部買い手がついたわ。
すごい額だから、また村長に預けてるのだけど好かったかしら?」
「はい、それでいいです」
「それと、墓地の土地も買い戻したって言ってたわ」
「おぉ よかったぁ、これで気兼ねなくお墓を掘れます」
「それと、倉庫の傍のお店には私が常駐することにするけど、かまわない?」
「「え?」」
若い女性が、独身のセルジオの家の直ぐ近くに一人で住むというのだ。
若い二人が驚くのも無理は無い。
『だって、どこかの泥棒猫にこんな美味しい金づる取られちゃ堪んないし。
私の地位もここらで確保しないと・・・・』
などと我欲満載の呟きが零れているのを二人は華麗にスルーする。
「えっと、追加の預けていた遺品は受け取られました?」
「えぇ確かに、ちゃんと受け取りも村長に渡してるから後で見といてね?」
「・・・・分かりました」
「預かった物を鑑定して残りの袋も持ち込むから、次来るのは5日後かしら。
それまでに仮住まいくらいできるようになってたら嬉しいかも」
「あぁ、分かったよ!急ぐよ、でも手抜きしないから、そこんとこ宜しくな?」
「ふふふぅ、よろしく♪」
スキップするような足取りで差って行くニーニャを見ながらジードが呟く。
「セルジオ、喰われるなよ?」
「え?ニーニャさんってグールかなにかなのか?」
「・・・・いや悪かった、忘れてくれ」
ジードは駄目だこりゃ的な仕草をして、新たに建てる店の広さを歩幅で測っていった。
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