20.3話
ハンスシャーマン、彼は四十路半ばのナイスミドル。
彼の偉業は数知れず、ダンジョン博士の異名を持つ泣く子もだまる迷宮探索の権威である。
その研究で明かされた真実はいくつもの神話を紐解き、レリックと言われる多くの遺物を発掘、数多のオーバーテクノロジーを人々にもたらした。
そんな大博士の講義は不人気な筈はなく、遺跡発掘の為に休講との報せがあっても大講堂には人影があると言う訳が解らない人気の講義なのだ。
故に、受講者は厳選され人数を絞ってもなぜだか立ち見がでる程の盛況を誇っていた。
因みに立ち見のほとんどは学校関係者なのだが、生徒としてみればそれでよいのか?と言いたくなる。
「 あぁ、受講者以外は下がっ頂きたい! 」
博士の声が、魔道具で拡大され500名は収まる講堂に響いた。
「 久々の講義にもかかわらす、愛想を尽かさすお集まり頂きだき感謝します。 では、皆の興味深く聞いていただける、最新調査結果を開示する 」
はにかむ様に笑う口元、白い歯がキラリと光る。
講堂のそこここで切なそうな溜め息が聞こえるのは、気のせいたろう。
「 この度調査した、第273海底遺構に続く管理区画に・・・」
博士の声が、手元のレポート読み上げると、助手が魔道具と思われる投影機を操作する。
遺跡の地図
その内景
発掘前の状況
博士の読み上げるレポートに合わせ、いくつものスライドが遺構の状景をスクリーンに投射してゆく。
教台には、昨日の桶とワンドかが赤い滑らかな布が敷き詰められた豪華な箱におさまりライトが当たっている。
「 海底遺構に水場はなく、管理区画にいる人型と思われる古代人は各種の魔道具を駆使し遺跡の運営を行っており・・・・ 」
そう口火をきりワンドによる実演をおこなうと、講堂にどよめきが起こる。
簡単な詠唱と共に、精神集中もせずに大量の水が空中へと吹き出し渦巻く球体を作り出す。
「 このように、飲料水ほか生活用水を作り出しその貯水機構を備えた魔道具が各部屋毎に設えてあり・・・」
小さな部屋程の水球が、手元の桶に近寄ると一瞬の内に吸い込まれる。
「 この桶は1000立方近くの容積があり、その重さも外部には影響を与えない。
いわゆるマジックバックの原形と言われる機構を内在している。
特筆すべきは、その構造が比較的安易に確認・メンテナンス出来る様ほぼ剥き出しになっており、内部の・・・・ 」
スライドが、多重露光のように重なった幾つもの魔法陣と輝く古代語をを映し出す。
「 いずれのレリックも保存状態が悪く、復元に当たっては18個の同様の遺物を用いても辛うじて一点のみ実践に耐えうる状態に戻すことが・・・・ 」
後方の講師や博士たちが、いつの間にか教段の真下に齧り付いている。
「 解析に付いては別途と資料を作成の上、学園に提出済であります。
興味のある者は、教務課に資料請求をしていただければ写しを配布するので詳しくはそちらへ! 」
博士の言葉を聞き終わる前に、殆どの関係者が先を争う様に講堂から去っていく。
「 ・・・・さて、邪魔者が居なくなった訳だが・・・・休講が多く折角受講して頂いた受講生の皆さんには予てより申し訳なく思っており、次の講義は実際の遺構へのフィールドワークを経験して頂こうと考えている 」
シャーマン博士の視線が、ニーニャに向かう。
そして軽くウインクをした途端。
「「「きゃ!」」」 ニーニャ周辺から黄色い悲鳴が上がり、数人の女子生徒が気絶した。
博士は頭を掻きながら、再び口を開く。
「 ごほん・・・・ ついては保護者の了解を得て、そのサインのある指定の書類を提出する事。
本日の講義における疑問点、問題点などはレポート10枚程度に纏め、明後日迄に教務課提出する事。
また、フィールドワーク関連書類は教務課および学生課に問い合わせをするように! 以上 本日の講義は此処まで! 」
質問したそうな生徒から逃げるように、博士は足早に講堂から立ち去る。
その後姿を見送りニーニャも教室から出ようとすると、先ほどのスライドを操作する助手の一人がニーニャに駆け寄って来た。
二十歳程の男性であるが、ニーニャにぺこりと頭を下げ博士よりと手紙を渡すと再びスライドの片付けに戻っていった。
数人の生徒がニーニャを訝しく見ており、悪目立ちしたくないニーニャは制服のブレザーの内ポケットに手紙をしまうと足早に教室から立ち去った。




