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いつもダンジョンに居ます  作者: ねむねむぴよ
第一部 一章 墓守始めました
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20.1話

ニーニャとレブラーシカの補完話です。本編にはさほど絡まないので読み飛ばしても大丈夫です。


 セルジオに泣いて詫びたニーニャ。

 ニーニャの商売に対する姿勢が如何にして培われてきたのか・・・・

 

 海に面した街道の要所とは言えない僻地にあるソルトコート。

 その街は各方面の学術を目指す人々で溢れ、王都の魔法大学と並ぶ一大学術都市である。


 大陸でも著名な迷宮学者のハンス・シャーマン博士が海中遺跡群の調査の為にこの街に居を移した事が発端と成り、各地に点在する迷宮や遺跡の調査、前人未到の大陸から様々な物を集め王国中へ卸す一大物流拠点へと僅か数十年で成長を遂げた。

 今では各産物の卸問屋、魔法具の製造を手掛ける工房も多数あり、王国でソルトコートと言えば商売を行う上でも決して外す事が出来ない町となっていた。


 ニーニャの父ハミルトンはソルトコートに古くからある雑貨店の倅であった。

 当時まだ然程有名ではなかったシャーマン博士が居を構える折に、貧乏な異邦人を嫌煙する地元の商人と一線を隔し、ハミルトンは彼を気に入り欲しがる各物品の手配を一手に取り扱った。

 何分貧乏博士の依頼品、ある時払いの催促なしといった大らかな対応を、ハミルトンは親に諫められても貫き通した。

 町の人々は『 物を見る目がない 』『 ハミルトンの代で店は無くなる 』と散々に扱き下ろし蔑む者が多かったが、後に大成した博士がその後も愛顧したのを呼び水に、今では周辺国でも屈指の大商家となっていた。

 ニーニャの父ハミルトンは田舎の雑貨屋を一代で大成させた慧眼の持ち主と、後の歴史家は一同に評価した。


 そんな大商家の令嬢ニーニャは、正妻ではない妾腹の子であるといわれていた。



 ・・・・


 後に出典された伝記、『 ソルトコートから世界を狙う 』に収録されたニーニャ女史の系譜では、ハミルトンの実子である可能性が低いと注釈が付けられ、多くの謎を残していた。


 ハミルトンやニーニャはもとより、その親しい人々も固く口を閉ざし終いには墓まで持ち去った点は、ハミルトンの商訓 『 本当の秘密は墓場まで 』を有言実行ならぬ無言実行したものであったのかもしれない。


 残念ながら事実は闇の中。

 只、若くして逝去したニーニャの母はシャーマン博士の学者仲間の女性の子であると確認されているのみである。

 父親は博士である可能性が有るが、ニーニャの母もその真相を墓場の中まで持ってゆき、誰にも伝えることはなかった。

 ニーニャ自身は後に、ハミルトンが愛嬌のある顔は母譲りと楽し気に話す事があり、彼女もそうなのかと認識しているだけで、母の顔を覚えていない。



 迷宮調査のプロである彼女の母は、常に博士に付き添い数多の迷宮、遺跡を調査する日々。

 凄腕の冒険者でも危険な迷宮の奥底で彼女は消息を絶つ事となった。

 その時の目撃情報によると、ニーニャの母の死因は遺跡調査中の事故であるらしい。



 博士の研究実績を裏打ちする調査や発掘に年中赴くニーニャの母は育児が出来ず、ニーニャは乳飲み子の頃から家族包みで付き合いのあった商家のハミルトンに預けられていた。


 とは言え、当時ハミルトンにしても店を離れる事が多く、姉程にしか年の離れていないホビットを乳母として彼女に付け面倒を見させることとなり、後にハミルトンも” 可愛い時期を殆ど見ることができなかった ”と言わしめている。



 ・・・・


 そんな境遇のニーニャが周りの子供と少し変わり始めたのは3歳を越えた頃だった。

 幼児ながらに知能の高さの片鱗を見せ始めたのだ。


 同年代の子は野山を駆け回る天真爛漫な獣のような暮らしぶりであったが、そんな中ニーニャはハミルトンの書斎の図鑑や商売に興味を持ち常に店の片隅で商取引を見学する変わった子だった。


 同年代の子と遊ぶより大人と話すことを好み、4歳を過ぎる事には誰から教えられることも無く読み書きと算術をマスターしていた。

 ニーニャの中にある才能に気が付いたハミルトンは彼女に殊更手を掛けた。

 しかし、それが原因で実子の嫉妬を買う事まで気が回らなかったのが彼の汚点であろう。


 幼少のニーニャは、父ハミルトンが何故ニーニャの母へ情を掛け自分を引き取ってくれたのかは、母の人柄と豊かな人間性が起因していたのだろうと父の零れ話で幼心に察していた。

 時折自分の顔を見ながら昔を懐かしむ若くはない父の顔がいつも楽しそうであったと記憶しているし、滅多に合う事もない父に、会う度に母に似て来たと言われ続けている。


 幼いが賢さ故に、ニーニャが異母兄弟から避けられるようになった頃、『 ひょっとしたら父と血のつながりが無いのかも? 』と確信に似た疑問に思った彼女は、寄宿学校への入学を二つ返事で了承した。


 それは彼女がまだ五つの頃だった。

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