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いつもダンジョンに居ます  作者: ねむねむぴよ
第一部 一章 墓守始めました
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19.1話

マーリンの腕輪 補完話です。

ニーニャが奮闘する一週間を外伝的に書いてみようと思います。

20話でボロボロになって戻って来たニーニャの心境が少しでも伝わればよいのですが・・・・


 マーリンの腕輪がセルジオの元に戻るまでの経緯、それを語るには少し時を遡る。



 セルジオから発掘品を預かった数日後の村長宅:宝物庫。


 「 やれやれ・・・・ここもそれ程良いとも思えんがのぉ 」


 村長がセルジオから預かった金貨や宝石、指輪やネックレス、そして幾つかの古代の武器の一部を収めた宝物庫で大きな溜息を付く。

 ニーニャが逗留する事もあり信の置ける縁故を辿り10名近い護衛を雇っていた。


 「 目ざとい奴らはそろそろ嗅ぎつけそうだのぉ・・・・ 」

 村長は商人程目利きができる訳ではないが、目の前の物が莫大な価値がある事を知っている。

 それを魔法の鍵がなければその場に抜付けられる罠の掛った箱に納め、それを更に大きな葛籠へと納た。

 

 セルジオが発掘する古の秘宝の数々。ドロップアイテムと言えるそれらは、既に失われた魔法学により錬成された物ばかりであった。同然、国家が管理する国宝と呼ばれても良い物ばかりとニーニャが村長に零すのだが、世界の迷宮を旅した元冒険者の村長にしてみれば言わずとその価値は理解していた。


 『 早いところ手を打たねば要らぬ禍を招くやもしれん・・・・早々に王都へ売りにいって貰わねばの 』


 書斎に戻った村長は、幾つもの書状と掛る経費を計算し始めた。



 ・・・・


 翌日。


 コンコン


 「 村長? ニーニャさんお連れしました、探しだと聞きましたが? 」

 「 うむ入ってくれ 」


 賄いの女性に執務室へと通されたニーニャが訝しく村長を見る。


 「 ・・・・そろそろ王都に出ようと馬車に乗り「 その馬車は狙われておるでの 」!!? 」

 村長はニーニャの発言を被せるように遮り、経緯を説明しだす。


 「 人の口に戸は立てられんでの、セルジオの持ち込んだ硬貨の話がよからぬ者の耳に入ったようじゃ。

 直接悪さを企むあほうは、もう片付いたのじゃが、悪知恵の回る奴らは搦め手を使てきよる・・・・そなたの馬車を襲撃する算段が整ったようじゃ 」


 村長の手元には矢文みの様な紙片が握られており、何やら小さな文字がびっしり掛れている。


 「 残念ながらそなたの馬車は囮程度にしか役目を果たさん。 悪い筋から御者を雇ったようじゃの 」


 ニーニャの顔色が変わる。

 この度の金貨の販売に関して、本家筋に話をしたがキナ臭い戦争臭いがすると人員の提供を断られていた。悪手と思いつつ、早々に財宝を現金化した方が良いと考えたニーニャは伝手の伝手をたより人員の手配をするが、使用人までの裏をとる手管がなく、なし崩的に採用していた。


 「 まぁそう心配するな、ほれ見てみろ 」


 ニーニャを隠すように窓辺に立ち、少しだけ身を寄せ外の様子を窺わせる。


 村長の家の前で、ニーニャが馬車に乗り込んでいる。


 「 えぇ? だれ? 私?・・・・そっくりなんだけど?! 」

 「 そうさな、そういうのが得意な者を婆さんに頼んだでな・・・・

 さて、それでだニーニャ殿には、この経路で王国入りをして欲しい。 帰りの便の手配も済んでおる。 何事もなければ一週間の旅程は4日で済む、先んじて乗り込み商売を纏めて入れ違いでこちらへ戻れよう。 作れた時間は三日間、無駄にはせんでくれればありがたいの 」


 引き出しの中より、数枚の革用紙と割符と鍵をテーブルに出しニーニャを見ながら微笑む。


 「 ・・・・村長さん貴方はいったい? 」

 「 昔の伝手じゃよ はっはっは・・・・曲者の目は馬車にいっておる、勝手口の安全は確保してある。よろしく頼むぞ・・・・ 」


 ニーニャは村長に頭を下げると、足早に部屋を出る。


 「 ちょっとお待ち! これを!! 」

 賄いのおばさんが、スッポリ頭を隠せる外套を握らせる。

 「 女の子の一人旅は危ないからね、気を付けるんだよ! 」

 片手で洗濯籠を持ち、器用に手を振りニーニャを身を見送る。


 勝手口から飛び出したニーニャの前に、荷を詰んだ馬が引き出されており屋敷の護衛を任された男がニーニャに手綱を渡す。


 「 お気を付けて 」

 「 ・・・・はい 」 


 追い立てられる様に、村長宅の裏門から馬を走らせる。

 一路、王都へ向けて。

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