15話
石戸を閉め長い坂を上がる。
空気が入れ替わってきたのか、かび臭さが薄らいだ気がした。
「よいしょ・・・・っと、ん?」
麻袋を担ぎ石室のような出口から出るとインプが待っていた。
蓋を閉めてもこちらをマジマジと見つめている。
「・・・・持ってくれるのか?」
「ピギィ!」
中身の少ない布袋を差し出すと、子猫程の大きさの魔物が喜んで布袋を受け取る。
しかし体格に袋の大きさが見合わず、思いっきり引きずりながら付いて来る。
最初の塚を再び掘り起こし、残りの遺骸を納めた。
日が傾き薄暗くなる中、10程の墓穴を掘り全て遺品を納め埋め戻す。
日が沈み空に星が瞬き始め、漸く両親の墓の近くに新たな10個の塚が出来上がり家へと戻った。
今日は何故かインプが傍らから離れない。
いつもは家畜小屋の家畜と共に寝ているのだが、妙にセルジオの表情を気にしている。
とはいえ、原型が殆ど残ってない10名分の墓を作ると気が滅入った。
魔物だが非力な生き物が心配するように付き従う様が、懐っこい子犬のように思えてくる。
「すまない、今日は疲れた。相手はできそうに無いよ」
そう言われるとガリガリのインプは家畜小屋に走って行き、干し藁を一抱え持って付いて来る。
今日は意地でも一緒にいるらしい。
「好きにすればいい、俺は寝る」
木箱に藁を敷き布を掛けただけの寝床に倒れ込むと、そのまま意識を手放した。
・・・・
夢を見た。
白い靄のような人影が、部屋を這いながら何かを探している。
そのうち、急に足腰がしっかりし四つんばいになり、膝に手を付きながら立ち上がる。
まだ、何かを探している。
インプが白い靄が近寄らないように、俺の前で威嚇している。
白い靄は、しばらく部屋を調べ探し物がないと分ると、遠くを見るように背伸びをして風に流されるように消えていった。
闇に閉ざされる。
再び、闇の中に靄の柱が立ち上る。
柱の数は10。
一つの柱が近づいてくる。
『あ・・とう、やっ・故郷に帰・る。・・がとう、あり・・・』
声が聞こえた気がした。
白い靄は、次第に騎士のような形を作る。
白い鋼の鎧を纏っている。
深々と頭をたれ佇まいを直すと、騎士の礼を取る。
後ろの影も今は騎士の姿となっており、礼に倣う。
かなり長い間礼を取っていたが、風に吹き消されながらテーブルに何かを置いてゆく。
コトン
夢枕に何かが置かれる音が聞こえたように思えた。
これ迄の記録
名前セルジオ:年齢18歳:男性
職業:農民兼墓守
埋葬者数 13 回収遺体 11
〇入手アイテム
墓守の石鋤いしすき
死者を埋葬するために使用すると魂魄が強くなる。
夢現ゆめうつつのメダリオン
ダンジョンの通行書を兼ねている。
魔法の罠は動かない。