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いつもダンジョンに居ます  作者: ねむねむぴよ
第二部 三章 北方の賢者
255/256

223話

 光り輝く女神像の真下、少し窪んだ石の台座の中に明らかに押し込んでくれと言わんばかりの立方体の石柱が収められていた。

 セルジオは躊躇いながらも、石柱に真上から体重を掛けて押し込む。


 グググググ、ゴクン。

 石柱が台座の奥にある何かを押し下げ、留め具が外れた感触の後・・・・

 サァァァァァーーーー

 肌理の細かい砂のようなものがどこかへ流れ落ちる音が、女神像の台座のある壁の下から聞こえ始めた。


 ゴッ・・・・ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・

 隙間や切れ目の全く見えなかった荒削りの岩壁の一部が、何かが流れ落ちる音と共に真下に沈んでゆく。

 壁の沈む速度は次第に早くなり床の高さと段差が無くなった頃、目の前には大人が二人ほど並んで通れる通路が現れていた。


 奥から吹き込んでくる新鮮な空気。

 墓所とは思えない瘴気を全く含まない、魔素の多く含まれた風がセルジオを包み込む。


 魔力を見ることが出来るようになったセルジオの目には青白い光の靄が噴出してくる通路を凝視する。


「・・・・この先で何かが瘴気を浄化しているのか?」

 空腹で強い喉の渇きを思えながらも進むしかないセルジオは、壁に手を着きながら光の靄の中に飲み込まれていった。


 ・・・・


 光の靄の中では濃密な魔素がセルジオを包み込み、今まで自分自身で無理やり補完していた不調部分に否応なしに流れ込んでくる。


 セルジオには呼吸が肺を魔素で満たし、潰れた肺胞一つ一つを物質化・作り変えてゆくのが透けて見える。泡立つように膨らんだかと思うと元の臓器を形どり、そのまま自分の細胞と似たものに置き換わってゆく。

 魔素は肺からだけでは無く、生皮を剥がされた皮膚からも入り込み骨や健、筋や肉までも修復してゆく。

 その時に成って初めて、セルジオの知っている気配が自分の体を生かそうと故意に魔素を操り遠隔治癒している事が、魔力の流れで感じ取ることが出来た。

 その気配をセルジオは知っている。彼の中ではつい先日まで一緒に居たエルフの娘:シルフィアの臭いがした。

 北の氷山に残してきた彼女が、自分を助けようとしている。

 そう感じたセルジオの胸の中に温かいものを感じ、少し寂しくなった。


 ・・・・


 濃い魔素と魔法治癒のお陰で、体調はずいぶん良くなった。

 欠損した手足の指は元に戻らなくても、肉が盛り上がり骨を隠し始めている。

 ここまで来て、漸く痛みが全身を襲った・・・・


 やたら痛い!全身が作り変えられているのか、激痛でその場に蹲ってしまう。

 陥没した頭蓋の中、針で刺されるような痛みが脈打つたびに頭の先から足先へと駆け抜けてゆく。崩れた脳細胞までが魔素によって物質化しているのが感覚でわかる。

 折れた骨が接ぎ合わされ、体の中に残った機能を果たさなくなった骨の欠片や臓器たちが再び体を作る材料へと強引に変えられてゆく。


「ぐふぅうぅぅうううう!!」

 舌を噛まないように歯を食いしばる。

 奥歯がミシミシと軋み、ひび割れると同時に再び修復される。

 セルジオは床の上で水揚げされたエビの様に、痛みのたびにビチビチと跳ね回る。

 その痛みが頂点に達したのか、セルジオの視界は再び暗転し意識を手放した。


実は適役の描写が薄く感じています。今は特にバルザード弟の周辺描写・どうやって掘り下げようかと思案中です。本編が突然途切れて、話が挿入されたら・・・・とうとう手を付けたなと生暖かく見守ってください。

 尚、小さな矛盾が一杯出てきてるのかなと心配してます。

ここがおかしくない?とかここを掘り下げてとかご意見があればコメントいただけると嬉しいです。

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