表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつもダンジョンに居ます  作者: ねむねむぴよ
第二部 三章 北方の賢者
253/256

221話

やっと再びダンジョンらしき場所へ戻ってまいりました。

 見覚えのない自室に担ぎ込まれたのが昨日。

 久々の寝具て横になり深い眠りについた・・・・そして目の前が明るく感じ目を開けた・・・・はずなのだが。


 夢を見ているのだろうか、セルジオは自分の体を天井付近から眺めている。

 手足の感触はなく、ただナセスと呼ばれる自分自身を傍観している。


 フェルミナが激しく狼狽している。

「主人が!主人が息をしていない!!薬師を!!薬師さんを呼んできて!!」

 フェルミナが子供たちに大声で捲し立てる。


 そんな様子を眺めながら、自分の体がまだナセスに繋がっている実感がセルジオにはある。心臓の鼓動がかなり弱く呼吸も非常に浅くなっているのだが確かにまだ生きているという実感があるのだ。


 駆け付けた薬師がナセスの脈を取る。微かに動いているが脈が取れない。

 彼は瞼を開き、瞳孔の反射を確認しているのだろう。

 脳のダメージが回復しきれていないので開きっぱなしの瞳孔は反射収縮をしない。

 胸に耳を当てて心音を確認しようとしているが、ボロボロの肉体を魔力で無理やり延命させている今の状態では心音を拾うことも困難なのだろう。


 薬師がフェルミナに向き直り、首を横に振る。


 呆然と立ち竦むフェルミナの表情がスーと抜け落ちたかと思うと、足から崩れ落ち嗚咽を上げ始めた。


 セルジオはその様子を見ながら、『あぁ、フェルミナはナセスを愛していたんだ・・・・』などと、他人事のように思ってしまう。

 しかし、あまりに悲しませるのも酷だと体に戻ろうとするが、これが旨くゆかない。

 天井からゆっくりと降下し、頭部から全身に入り込もうと試みるが、そのまま体をすり抜けベッドの下まで降りてしまう。

 懲りずに、ベッド下から体に入ろうとするが今度もすり抜け天井付近で漂ってしまう。

 鼻や口から何かしらの繋がりがあり切れていないのは分かるのだが、何故今のような状態になっているかも解らない。当然戻り方も見当が付かない。

 そんな様子を丸一日見ていると、ハニバルやカール、その他見たこともない村の住人がナセスの体を見に来る。


 セルジオは何度も声を上げまだ生きていると伝えようとするが、ナセスの体の小指一本も動かせない。


 日が暮れても、フェルミナはベッドの縁に縋り付き呆然としながらもナセスの手を握っている。


 近所の奥様方だろうかフェルミナを励まし、差し入れの食事を取らせようとするが、魂の抜けたような彼女は虚ろな目で食事を拒絶した。


 ・・・・


 日が昇り翌朝が来た。

 村の男衆が棺を抱え室内に入ってくる。

 生きたまま埋められると堪らないと、ドキドキしながら必死に体に戻ろうと一晩中体をすり抜け続けたセルジオだが、棺に納められ野花の敷き詰められると段々自分が本当に死んでしまったのか?と困惑し始めてしまう。

『いやいや、もともとこの体は俺のじゃないし、ナセスの心臓も動いてるし』

 セルジオの突っ込みが聞こえるものは誰もいない。


 両脇を抱えられるように支えられたフェルミナを先頭に、棺に納められたナセスが男衆に担がれ、小高い丘の上にある石造りの霊安所らしき場所へと運ばれてゆく。

 丘の周辺は、棺の中を飾った物と同じ野花が一面の色とりどりに咲き乱れ葬儀という陰気な儀式と不釣り合いな光景が広がっていた。


 ・・・・


 霊安所の石戸が重い音を立て開かれる。

 事前に供えられていた松明に火が入れられ、冷たく陰気な空気が淀む地下へ続く長い回廊に降りてゆく。

 入口付近は、幾度も人の手が入ったのか随分と滑らかな床や壁で出来ているが、つづら折の通路を進むにつれ粗削りな物へと変わってゆく。


 そして、一行は目的地であろう松明の灯された玄室な場所へと辿り着いた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ