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いつもダンジョンに居ます  作者: ねむねむぴよ
第二部 二章 生きたダンジョン
246/256

214話


 意識が次第にはっきりとしてきたが、それに伴い体中が痛む。

 セルジオは殆ど光の無い真っ暗な部屋の壁際に座り込んでいた。


 正面の扉の隙間から、非常に弱い光が一筋見える。


 「 痛てて、あぁ、太っとい触手にガスガス突かれたからな………

 ……って、あれはサルマンの身体で、しかも腐ってたような……… 」


 体を触ろうと手を動かすが、重い鎖を引きずる音がして殆ど腕が動かない。


 「 ……へ? 」

 壁も床もボコボコとした丸石が埋め込まれた石造りの様だ。

 いつの間にか漏らしてしまったのが、股間に糞尿がこびり付き酷い匂いがする。

 セルジオは、ぼやける視界に無理やり目を細め周りを見回した。


 トイレも何もない、石材の剥き出した小部屋…

 石の隙間には髪の毛や小骨が挟まっているのが解る。

 部屋の隅には排水口が口を開けている。

 …ここはたぶん、独房という名の部屋なのだろう…

 次第に暗闇に慣れてくる視界に、自分の手足が朧気ながらに見えてくる。

 南京錠の様な厳つい錠の付いた手枷と足枷、しかも丁寧な事にそれは壁に埋め込まれた鎖に繋がれており、武骨な鎖が重過ぎてとても身動きが出来ない状態になっていた。


 「あちゃ、あの後誰かに捕まったのかな………」

 セルジオは記憶を手繰る。

 当然心当たりはない。


 『サルマンの戦いの後じゃあり得ないな、管理者なら魔法で拘束するだろうし………

 あり得ないけど、ゴダール城で意識を飛ばした後、城の地下に……………無いな。

 それならカジミール達が大騒ぎしてるだろうし……』


 情報が少なすぎて思考がループする。

 少しでも手がかりが無いかと、感覚のある自分の手足を見ようとするが、暗がりでは辛うじて輪郭が見てる程度……では、どうしようもない。


 『えっと…じゃ、また別の身体……な、パターンか? くはぁ~身に覚え無いって!』

 セルジオは、誰も見てない暗がりの中一人で様々な表情を作り一人突っ込みをおこなった。


 一頻り表情筋の運動をした後、重い鎖を懸命に引きずり、入り口付近まで這い進む。

 案の定、鎖の長さは入り口まで届かず、薄明かりの差し込む戸の隙間を覗き込むことは出来ない。


 『これって手詰まり感満載? 何とかなるのかな………このまま野垂れ死ぬって感じか?』

 セルジオは何度も辺りを見回すも使えそうな物は皆無。

 何かを喉に詰め死ねない様に、服さえ身に付けていない。


 『自害防止?……』

 ふと疑問に思う。


 『猿轡してないと、舌噛むヤツいるんじゃないかな?』

 で、首元をの違和感を見ると、布で巻かれた木製の何かが首に掛っている。

 良く解らないが、意識が覚めるまでに轡が外れたようだ。


 『えっと、これ外してるの見つかったらヤバいよなぁ………

 蹴ったり殴ったり、鞭で打たれたりするんだろうなぁ………

 嫌だな………とりあえず元の状態に…』

 セルジオ自身にしてみれば罪を犯した記憶は無い訳で、当然それを肩代わりする気も起きない。

 だから猿轡を元の状態に戻し、やり過ごそうと思うのだが…………


 ” 鎖重すぎて、腕が上がらない! ”

 舌を出して、引っかけようにも届かない。

 寝そべって、体を捩らせ何とか口に運ぼうとするが、轡が滑って頭の後ろに回り込む。


 「ひたのばしすきて、ことはがうはくしゃへれなくなってひゅお」

 無理に舌を伸ばし轡を噛もうとするあまり、何度も舌や唇周辺を噛んでしまい実は顔面血だらけ。

 よだれと血の混じった唾液が胸元にべっとり張り付いているのだが、暗がりのセルジオは気付いていない。


 ・・・・


 かれこれ終日、だれも現れない。

 それを良い事に、セルジオはまだ見た事のない大道芸の大脱出ショーモドキを演じ悉く失敗していた。

 しかも、一日中無理な体勢で頑張った為、こむら返りと筋肉痛、あっちこっちがってしまい、痛みでガタガタ痙攣している。

 太腿が攣り、その余波で背中がおかしくなり…左肩をずらすと首がビチビチと固まり曲がらなくなる。

 永遠と続く拷問の様な激痛を自分自身で与えつづけるセルシオ。

 ……大人しく寝てれば治ることに気が付かない。


 三日程何も食べなくても何とかやり過ごすことが出来るセルジオもさすがに体にこたえる。

 独房の中、幽鬼の様な唸り声をセルジオは上げ続けていた。


 そんな状態のセルジオの独房の扉の向こう、看守らしい声が聞こえてきた。


 「……もう死んで……………ねぇ? あいつボロ………しよ…」

 「……なぁ………あぁ、死んでたら………って報告する? 」

 「まぁ、そん時はそん時で、一生懸命延命処置はしました形式3の報告書を作ればいいだろ?」

 「………形式2の方が良くないか?」

 「ばか言え、3で作って薬をちょろまかせばいい小遣いになんだろ?」

 「……バレないか? ってバレ様がないか…… 着いたぞここのはずだ」


 ジャラジャラジャラ…

 扉を鍵を手繰る音が聞こえる。

 『ヤバイ、轡…結局もとに戻ってないぞ?! ど、どうする? とりあえず死んだふりか?』

 そんな焦るセルジオの前に、二人組の看守が姿を現した。   

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