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いつもダンジョンに居ます  作者: ねむねむぴよ
第二部 二章 生きたダンジョン
235/256

203話


 ゾゾゾゾゾゾ・・・・!!


 セルジオの眼前で、湖面が盛り上がる。


 渦巻く水面に漂う、犠牲者の肉片と赤い水が飲まれていく。


 暗くて良く見えないが、姿形は捉えられない。

 まるで、水自体が全てを飲み込んで行くように見える。


 ブウゥゥゥン・・・・パリィパリリ・・・・バゴォン!!


 ゴーレムの帯電した頭部が、幾筋もの青い静電気を纏ったかと思った瞬間、空気が爆ぜる音と共に雷撃が放たれた。


 ジュワァァァァ!!


 盛り上がった湖面の表面を、稲妻が舐める。


 青白く光る稲妻が光源となり水中にかなり大きな魔物が居る事は解るが、水面で反射する光ではその姿を捉える事はできない。


「・・・・アビス」

シルフィアがセルジオの腕の中で呟いた。

セルジオは知らないはずの魔物の姿が、頭を過る。


 巨体で全身が鏡の様に周りを写す、銀色の躯体。

 巨大な口に不釣り合いな小さなヒレと尾鰭。

 目の無い顔に大きな口、口の周りには触手の様に動く髭が有り水中に潜み獲物を狩る魔物。


 その実物が、目の前の地底湖に居るのだ。


 放熱の為全身から湯気を上げるゴーレムから、再びチャージ音が聞こえる。

 その音が途絶えると同時に、閃光がアビスを穿つ・・・・ように見えた。


 ドゴン!!


 閃光がアビスの体表で反射され、遥か上空、地底湖の天井を砕き小規模な落盤を誘発した。


 ドボドボボボボ!!!


 アビスを直撃する巨石。

 しかし魔物の上で何度か跳ねた岩は、さしたるダメージを与える事もなく周辺の水中に沈んで行く。


 「拙い・・・・全然効いてないぞ?!」

 ゴーレムの閃光で焼けた岩が赤く光り、真っ暗な地底湖を仄かに照らす。

 辛うじて、魔物を視認したセルジオが湖の入り口に目を向けた。


 「走れるか?」

 シルフィアに問うと、彼女は直ぐ頷く。

 そして、セルジオが腰を上げようとした。


 バシュゥルルルル!!


 アビスの口から放たれた細く鋭い水の射線。

 それがゴーレムの肩口に当り、体を穿っていく。


 ババババシュルルルルル!!!


 水の勢いは衰えず、ゆっくりとだがゴーレムの体を袈裟懸けに切り裂いてゆく。


 「は、走れ!!」

 セルジオは彼女を押す様に、開口部へと走り出した。



 ヒュゥウゥゥゥゥウウウウウウウウ!!

 いつもより長めのチャージ音が背後から聞こえてくる。


 ゴーレムは渾身の一撃が金属が旋回するような溜めを持って放たれた。


 ドルルルルルルル!!! ゴババァァァンン!!


 セルジオが異音に振り向くと、両腕の肘さきから消失したゴーレムが水柱を上げる湖面を背景に立っていた・・・・が、ゴーレムが不自然に傾き、上半身が斜めにズレ地面へと突き刺さった。


 ズザザザァァァァ・・・・


 肌理の細かい砂が盛り上がり、砂に突き刺さったゴーレムの上半身を辛うじて支えている。


 アビスはゴーレムの反撃を許さなかった。

 手燭の束が、ゴーレムに向かって鞭の様に振るわれる。


 ババ、バババン!

 

 次の瞬間、ゴーレムの頭部が砕かれ四散した。


 「やばい!! 早く!!」

 壁面に突き刺さるゴーレムの頭部の残骸が、周囲の岩を砕き落ちてくる。


 命からがら地底湖の入り口に飛び込んだセルジオは、まるで雄たけびを上げるように水上に身を躍らせ仰け反るアビスの姿を視界の隅で捉えたが、その足は止まらなかった。





9.12話に、余談を加筆しました。

気になる方は見て下さい。


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