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いつもダンジョンに居ます  作者: ねむねむぴよ
第二部 二章 生きたダンジョン
234/256

202話


 インプとゴーレムが地底湖の湖畔を警戒しつつ? セルジオ達の周囲を囲んでいる。


 そして、闘技場と同じくゴーレムの赤く焼けた手を調理器に見たて、ドラゴンの焼き肉を温めなおして食事を取っていた。

 焼ける脂身の匂い、塩や香辛料は無くとも、空腹の彼達にはその香りだけでも十分なものであった。

 身ぎれいにした囚人達はからは異臭はせず、その声も明るい。

 これまでも苦難が嘘であったと思えるほど穏やかな雰囲気に、一行は浸っていた。


 ・・・・それにしても、警戒心が薄過ぎると思われても仕方ない。

 現に、油断し過ぎだった。


 インプが、一斉に地底湖に視線を向ける。


 それに気が付いた面々が、装備を手繰り寄せ、湖に背を向けたゴーレムの陰に逃げ込む。

 セルジオも背嚢を背負いカンテラを掲げ、様子を見る。


 ゴリリ・・・・ゴーレムの頭部が180°旋回し湖面に顔を向け、頭部の宝石がなにやらチカチカと瞬いている。



 ・・・・シャバッ!


 闇の中、湖面に何かが跳ねた。


 シアバババ!!


 湖の奥から、魚の群れが跳ねる様な、水面を打つ音が聞こえてくる。


 ・・・・ザバァァァァァァアアン


 大きな魚が跳ねる様な音が、真っ暗な湖面の先より響き、少し遅れて大波が湖畔を洗い始めた。


 「入り口付近まで下がれ!!」

 誰かが叫んだと同時に、これまでよりも更に大きな波が、ゴーレムの腰まで押し寄せ、全てを水の中に引き込もうとする。


 水が引き、それと共にゴーレムの足元の砂が攫われ、ぐらりと姿勢を崩したゴーレムの腰から下に、何かが蠢く。


 ・・・・


 尾のある透明な管・・・・の様な生き物が、何匹もゴーレムの体に張り付いている。

 目は無く、身は略透明、青い血管が透けて見える身体は蛭とも蛆ともいえない動きを見せながらゴーレムに吸い付いている。

 「痛!?」

 囚人男性の一人に取り付いたそれが、足に吸い付き歯を立てたようだ、透明な胴体の中に赤い血液が流れ込み、中身を赤く染めて初めて内臓がハッキリと視認できた。


 「血を吸われるぞ!」

 男が取り付いた蛭モドキが、頭部をグリグリと傷口へ押し込み体内に潜り込もうとするのを強引に引きちぎり、砂地へ投げ捨てるが、生命力の強いその生き物は、玉状に体をくねらせ死ぬ気配はない。


 側に居るインプが、蛭モドキに短刀を突き刺し息の根を止めるが、湖面で再び大物の跳ねる水しぶきが上がる。


 「近いぞ!」

 セルジオが叫ぶ。

 シルフィアは彼に取り付き、様子を窺がう。


 ゾゾゾゾゾ!


 湖面の水位が競り上がり、セルジオが居る場所まで水が迫る。


 逃げ場所は既に無い。



 ブゥゥゥゥン・・・・・ドゴン!


 ゴーレムの頭部から放たれた、灼熱の閃光が湖面を薙ぐ。


 バァァァシュゥゥウゥ!!


 閃光を受けた水が一気に沸点まで到達し、水蒸気爆発を起こした。


 咽る様な熱風と、魚の焦げる匂い。

 しかし、物量に勝る競りあがる水位は、囚人と小柄なインプを水の中へと攫って行く。


 ゴボゴボボ・・・・


 シルフィアを庇うセルジオを、ゴーレムの腕が庇う。

 引き波で拐われ、荒れ狂う湖中に居るインプと囚人等が、蛭モドキの襲撃を受け、悲鳴を上げながら水中へと沈んで行く。


 そんな地獄絵図の湖面に、追い打ちを掛ける大きな陰が現れた。

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