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いつもダンジョンに居ます  作者: ねむねむぴよ
第二部 二章 生きたダンジョン
225/256

193話


 天然の鍾乳洞に思える地下空間にカンテラの灯が揺れている。

 天井では猫程ある蝙蝠が飛び交い、暗がりでは何かが蠢いている。


 洞窟の中に僅かな残響音が響く、セルジオの声だ。



 「・・・・シルフィアが口を聞いてくれなくな、なりました! 俺、独り言全開で叫んでます!」


 カンテラの灯りしかない暗がりで、妙な空気を醸すシルフィアの扱いに困り果てたセルジオは、先ほどから一人で色々しゃべっていた。


 セルジオの後ろでは、こけた頬を膨らませたシルフィアが、未だに赤い顔のままセルジオのベルトをしっかり握っている。


 「・・・・だから、ね?」

 セルジオが振り向くと、タイムラグなくそっぽを向く。

 だからと言って、セルジオから離れない。

 いや随分近い。

 ほぼくっ付くほど近い。


 「あぁだれかぁ!! どうしらいいか教えてぇ・・・・」

 セルジオが叫ぶ、あれほど危険に感じたダンジョンが、なんだか平和に感じる程に何も起きない。


 ダンジョンの暗がりで、大型犬程のカマドウマと鷲程の蝙蝠が大暴れする姿が見えたりと、いろいろ起きているのだが、セルジオの周辺では断じて起きていない。

 単に灯や、大きな音を嫌う獣しか居ないだけなのだが、間が良いとしか言いようがない。


 セルジオにしても単に叫んでいる訳でなく、シルフィア同様の捕虜が居れば、救おうと考えての行為である。

 それに、暗闇の中で微妙な雰囲気の女の子と二人きりの状況に、嫌な汗がドバドバ出てく状態が辛い。

 現状を何とかしたい気持ちが大きい点も察して余る。



 『水の補給もままならないのに、こんなに汗かいたら死ぬ? 俺死ぬの?』

 意を決して、数十度目かの声を掛ける。


 「そろそろ、許して貰えないかな? ね?」


 プイ コクン そっぽを向きながらも頷いてくれたシルフィアに、セルジオは安堵の溜息をもらした。



 ・・・・そんなやり取りをしていた二人の耳に、自分達が発した以外の音が聞こえてきた。



 「静かに・・・・」

 セルジオが岩棚の下にある岩陰に隠れ耳をそばだてる。

 セルジオの視線の先、進行方向からだろうか、銅鑼の鳴らすようなけたたましい金属音と魔物らしい雄叫びが聞こえてくる。


 「しばらく身を潜めやり過ごそう・・・・」

 囁くようにシルフィアに囁く・・・・しかし、完全に血の気の引いた彼女の視線はセルジオの背後、岩棚の裏に釘付け成っており、唇がフルフルと震えだす。


 銅鑼の音が近づいてくる。


 セルジオはゆっくりとシルフィアの視線の先へ振り向いた。



 「・・・・す、すごい量だな・・・・」


 セルジオの視線の先、岩棚の裏は『カマドウマ』の群生地であったようだ。

 鼠から子猫程度の大きさのそれは逆さに張り付き、触覚をサワサワ動かして周囲の仲間の体を障る。


 一面を覆うカマドウマの多さに、ミミズやダンゴ虫を見慣れているセルジオですら鳥肌が立つ。


 「もともと臆病な虫だった気がするけど・・・・何でも喰う系?」

 長い触角の他に、独特の形状の口から体液を出しモゾモゾと顎を動かす。


 足元を見ると、共食いの跡だろうか、幾つもの虫の足や頭部の一部が転がっている。


 「もしかしなくても、拙い?」

 コクン・・・・シルフィアは震えながら頷く。



 バン! バァ~ン!! 「ゴァアァァァ!!」

 銅鑼の様な物を打ち鳴らし、野太い雄叫びを上げる何かにおびえた虫が、一斉に向きを変える。


 バィン! バンバババン!!!

 相当脚力が強いのか、一斉に逃げ出す大カマドウマの跳躍力は凄まじく、一跳ねで視界から消え失せる。


 ・・・・消え失せる虫は良いのだが・・・・

 狭い場所で強力な後ろ足で飛び跳ねると、当然岩壁に当たる。

 固い甲皮に包まれていると言え、鼠や子猫の重さの物が勢いに任せて体当たりをするのだ。

 それが大量に・・・・


 バン! バチン! グシャ!!バキ!! グチュジュ!!・・・・


 二人の目の前で、自滅の跳躍を繰り返す虫達が、体液を振りまきながら屍の山の作ってゆく。

 中には、遥か彼方へと飛んでゆく個体もいるが、馬着陸できているかは考えないでおこう。


 セルジオはシルフィアの目を手で塞ぎ、様子を見守る。


 虫が居なくなった青白い体液がねっとり張り付く暗がりで、カンテラの灯を吹き消す。



 バン! バァ~ン!! 「ゴァアァァァ!!」

 音が近い。


 岩棚の直ぐ上が、また別の通路となっているようだ。


 バン! バイィン!! ブオァァ~ン!! 「ガゴォアァァァ!!!」


 岩棚の上で掲げられた松明の爆ぜる音。

 その燃える臭い。


 灯に照らされ、洞窟内を乱舞する蝙蝠が見える。


 「・・・・こんなにいるのか 」

 セルジオは多くの羽音に視線を向ける。

 そこには、天井の見えない洞窟の上空を埋め尽くすほどの蝙蝠が雲のように蠢くのが見えた。


 「違う通路があるようだけど、追跡してみるか?」

 シルフィアが震えながら頷く。


 「食べ物と水くらいは手に入れたいな・・・・」

 心もとない食糧と水が気にかかるセルジオが溜息を付く。

 二人は、騒音で魔物を払い奇妙な集団の後を追うことにした。


 ・・・・


 セルジオ達が潜んでいた岩棚の下、一か所周辺の岩と明らかに違う質感の岩があった。


 虫の体液で濡れた岩にピシリと罅が入る。

 岩の表面が葉の様に欠け、ズルリと下がるが落ちる事は無く、その欠片に無数の罅割れが走る。

 岩の中から茎が伸び、岩の葉を持ち上げた。


 細かなひび割れから、次々と細い茎が伸び石の欠片がいつの間にかシダの枝のように大きく葉を開いている。 石質の表面が毛羽立ち、石作りのシダの葉は蛾の触角の様な形状へと変わる。

 蝙蝠のせいか、洞窟内に風が生まれていた。


 岩から伸びた触覚は、磯巾着のように表面の毛を動かし空中の何かを探す。

 風向きが変わった。


 銅鑼を鳴らす集団の後を追うセルジオ達。

 その方角から漂う何かを捉えた、岩の触角はスルスルと元の形に姿を変えた。


 石鋤の刃と同じ材質の岩。

 その岩はブルリと震え硬度を失い、己の一部を小さな欠片として残し、水のように地に滲みこんでいった。

セルジオの装備 備忘録

 メダリオン

 ゴブリンの使っていたカンテラ

 革の子袋(セルジオ金貨が10程入っている)

      胸の内ポケットに入れてある。

 ポーチ✖2

 ポーチ①怖くて中身を確認していない。

  割れたポーション(試験管サイズ)✖3

  殻のポーション容器✖2

  カンテラの油小壺(割れてるかもしれない)

  布片数枚(ポーションを包んだハンカチサイズの布)

 ポーチ②

  火打ち棒(金属製の灯点け棒)

       ニーニャにもらった物、結構愛用している

  メモ紙と墨壺と筆用の藁数本


 背嚢小

  革袋1(水筒に使えない:簡易的な物)

  布袋2(調査用に資料回収用として持ち歩いてたもの)

  酒気の強い酒瓶(5分の2程の量)

  小振りな毛布

  布紐✖5本程(袋を縛る為に用いる然程長くない物)

 NEW

  古いが丈夫なロープ 15m


 ダンジョン探索用の生地の厚い作業服上下

      一般的な農夫が着るような服

      結構立派な生地が使われている。

 ベルト(ポーチが付けられるよに丈夫な革でできている)

 丈夫な靴(ほとんど安全靴)


  腰に結わえた布袋

   サソリの黒焼き✖1(靴程の大きさ)

   セルジオの拳程ある牙のある芋虫の黒焼き❌10

カリカリに焼いてある


  鞘付きの短剣

(血と油のネバネバは少し取れたがホントは洗いたい)

  金属製のマグカップ

  木製のカップ



シルフィア:エルフっ子

      年齢は70歳以上

      見た目は少女 でもガリガリでドロドロ

      密かにセルジオにアタックを掛けようかと思案中。


   殆ど布袋の服?

   革袋の靴

   死者の遺品の指輪 ✖2 未鑑定


※ 次回投稿、少し?数日?間が開きそうです。

 手元が片付き次第再開します。

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