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いつもダンジョンに居ます  作者: ねむねむぴよ
第二部 二章 生きたダンジョン
223/256

191話


 セルジオは、カンテラを片手にゴブリンの詰所のような場所を物色していた。


 彼等の食料と成った人肉の山・・・・指先には指輪がいくつか残っていたが手は付けなかった。

 木箱には、幾つかのスクロール(革用紙の巻物が4本)が無造作に突き込まれ隅が破けている。

 ゴブリンの死骸の足元に、少し光って見える赤と白の賽子ダイスが落ちており、内ポケットにしまう。( 賽子は後で振ってみると、いずれも出る目に偏りがあり重心がぶれているようだ )

 木箱には、錆びて折れた剣、曲った甲冑の篭手、皮鎧の胸当て部分のみ・・・・


 唯一古いが使えそうな15m程のロープ。


 ゴブリンの死骸からは、子袋がそれぞれ一つずつ。

 首には狼だろうか、動物の牙から作られたネックレスが一つ。(結構生臭い)


 小袋の中は、いろんな動物の牙や指の骨(たぶん人骨だろう)嫌な感じのする小石が詰まっていた。


 ・・・・


 彼女用の服でもと期待したが無理だった。

 ロープを担いで戻るとシルが笑顔で迎えた。


 「さて、ここも安全ではないだろう・・・・どちらの方が安全だろう」

 セルジオが呟くと、シルが詰所の反対側を指さす。


 「ゴブリンが出て行って戻ってこない方。 戻ってくるときはセルジオさんが来た方からだけ」


 「うぅ~ん 一方通行かな・・・・そっちに行く方が良さそうだな。

 ここはいつゴブリンが戻るか解らないから直ぐに移動したいところだけど少しまってくれるか?」


 シルフィは良く解らないがコクリと頷く。


 セルジオはシルフィを連れ、小山に近づくと、木箱に有った折れた剣で近くの柔らかそうな場所を探す。


 カツン・・・・

 カツン・・・・

 カツン・・・・

 ザザ・・・・


 砂岩の様な感触を折れた剣で掘り出す。


 セルジオは汗をかきながら一頻り掘り進み、小山が収まる程堀上遺体を中に収める。

 「ハァハァ・・・・もって帰ってやれないから・・・・ハァハァせめてな・・・・」


 セルジオは穴をふさぐと、今度はゴブリンの死骸を動かし始める?


 シルフィが怪訝そうに眺める。


 余った土で、二つの塚が出来る。


 「こいつらも、喰う為に人を狩ってるんだろうが、まぁついてだ・・・・」


 セルジオはまず、人の墓に片膝を付き祈りを捧げる。

 セルジオは気が付かない・・・・

 穴から白い靄が吹き上がりセルジオに感謝の意を表す様に頭を垂れる幽霊・・・・

 シルフィアは、これまで死者の霊など見た事は無い、それが目の前で立ち昇っては消えてゆく。

 怖くない不思議な光景。

 シルフィアの心が温かくなるのを感じる。


 カツン・・・・カツン・・・・


 セルジオの前に二つの指輪が落ちた。


 それを、大事そうに拾いシルフィアに手渡す。

 「亡くなった人が、使って欲しいって・・・・言ってたよ」


 「・・・・セルジオさんは司祭様なの? 死者の声が聞こえるの?」

 シルフィアが驚きながら尋ねる。


 「ははは・・・司祭じゃないんだけどね、なんか聞こえるんだよ」

 少し照れながら、シルフィアの指にその指輪を付けてみるがサイズが合わず。

 布紐を取り出し、指輪を通して首から下げさせた。


 「かわいそうだから守ってあげてだってさ・・・・あれは君の知り合いだったのかな・・・・」

 セルジオは呟いて、ゴブリンの墓に跪く。


 シリフィの目から涙がこぼれる。

 私を探してた仲間かもしれない・・・・そう思うと胸が締め付けられる。

 救いに来て命を落としたのならやりきれない、悔しくて悲しくて立ち竦む。


 セルジオが祈りを捧げると、床からも白い靄が立ち上がる。

 人よりか細い靄は、小さな子供のゴブリンの様に見える。

 彼らはじゃれる様にセルジオに触れて消えてゆく。


 「ははは・・・・止めを刺してくれてありがとうだってさ・・・・」

 セルジオが引き笑いの表情で振り向く。


 「たしかに、あのままじゃ苦しんで死ぬことに成ったかもしれないけど・・・・まぁいいか」

 適当に折り合いを付けて立ち上がるセルジオを、シルフィアはただあきれて見るしかできなかった。


 「じゃ、行こうか」

 セルジオがシルフィアの手を取る。


 『 手を繋いで歩くのって、いつ振りだろう・・・・』

 シルフィアは暖かいセルジオの手の温もりを感じ、胸がドキドキする。

 彼女の背はセルジオの胸より少し低い。

 セルジオの横顔を見上げると、顔が赤く成るのを感じる。

 『 私、助かるんだ・・・・彼に助けてもらえるんだ・・・・』


 シルフィアは胸がときめく。

 汚れた体、革袋の服が急に恥ずかしくなる。


 セルジオは当然、気付いていない。


 二人の影がカンテラと共に闇に消えた後、魔物の声が下層から聞こえてきが、切れたロープがただ風になびいていた。


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