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いつもダンジョンに居ます  作者: ねむねむぴよ
第二部 一章 古の廃城
217/256

185話


 クディを受け取とったカジミールの弟子とブロッソを先に行かせ、アレクはレシアに叫ぶ。


 「セルジオ殿とカジミール殿は?!」

 アレクが周囲を警戒しつつレシアに聞く。


 「我等を逃がすため、残られた・・・・」

 泣きそうな表情のレシアがクディを見つめ呟く。

 だが、彼女の背後で、霊気が収束し始めた。


 「・・・・!? 何かが涌く!!」


 アレクが叫び、一行を先に行かせ、アレクを含む魔法師の二人とブレナが残った。



 ・・・・


 青白い靄が、大きな獣のかたを取り始める。

 それに吸い寄せられる骸・・・・

 次第に形を成すそれは、骨の集合体と成りグラリと傾きながら骨の集合体の頭をもたげた。


 「・・・・骨竜ボーンドラゴン?!」


 『 シャァアァァァアアァアァ 』

 声ではない思念の叫びが一行の居る空間を埋め尽くす。

 「ピギィ!」

 その叫びを皮切りに、インプ達が果敢に骨の竜へ挑みかかった。


 鬼火の様な赤い炎が竜の体表で瞬く。


 竜は違和感を覚え身動ぎをする、視界に蠢く小さな生き物に気が付き反射的に尾を振った。


 鎧と骨の混じる尾が横薙ぎに振られる。


 ゴォゥゥ

 風を切る尾の一撃が、逃げ遅れた一匹のインプを捕らえた。

 インプは直撃を受けパンと軽い音を上げ爆ぜ飛ぶ。


 「あの小猥なインプは・・・・セルジオ殿の?・・・・」

 メタリオンを着けた一際小さなインプが、骨の竜の足元をちょこまかと走り枝を振るう。


 一振り毎に、骨の竜に小さな火が灯り点々とした火が、他のインプの火と合わさり炎となってゆく。


 「小さなインプに後れを取るな!」

 カジミールの弟子が叫び、詠唱を開始する。


 「ブレナ殿、我らも!」

 「承知した!」

 二人の聖職者も祈祷を開始する。


 ブオォォオオォ!!


 肺も喉も無いのに、白濁した息吹が胸元から湧き上がり、口元から放たれた。


 一か所に集まり枝を振るうインプは飛びのく。

 しかし、一番後方にいたインプは、息吹の範囲から逃れるには遠すぎ逃げ切る事が出来なかった。


 ビキキ・・・・


 インプの表皮が石質に変化し、細かい亀裂が無数に走る。

 骨の竜の息が一匹のインプを捉え、石に変えた。


 空中で飛びのく姿勢のまま石へと変えられたインプは、不自然な体勢で地面に転がる。


 床に触れた四肢が砕け、バラバラと音を発て石槫いしくれに成ってゆく。


 その間もアレク側に迫らぬよう残りのインプ達はデスゲームを繰り広げていた。


 煩く足元を走り回り、体に取り付いては火を点ける。




 アレク達の場所から魔法の光が瞬く。


 『『 炎の柱をあれに! 』』

 『『 聖なる光をあれに! 』』


 魔法師と聖職者の魔法が骨の竜の体を焼く。


 ブワァアァァァァ


 二本の火柱が骨の竜を貫き、パチパチと乾いた音を発てその身を焼き、光の粉が降り注ぐ部位が砂へと変わる。

 だが、竜を形どる材料は此処彼処(ここかしこ)にあり、欠いた部位をすぐさま補充し再び虚ろな空洞を一行に向けた。



 「ピギィ!!!!」

 小さなインプが枝を振るう。


 風の壁がアレク達を、出口の方へと押し除ける。


 ブオォォ!


 竜の尾が、アレク等が先ほどまで居た場所を薙ぐ。

 間髪入れず、竜の胸に白い靄が湧き溜る。


 ブファァアァァ!!


 首を振りながら放たれたブレスが残りのインプを石へと変えた。


 「ピギィ!!」

 小さなインプは竜の前足の間に潜り込み、顎下に向け幾度も小枝を振るう。


 ボ、ボ、ボボ、ボボボォォ!


 竜の頭が炎に包まれる。


 「行けるぞ!!」

 カジミールの弟子が気色付き、詠唱を始めようとした。


 ブファァ!!

 再び風の壁が、一行を出口へと押し下げる。


 「「「 な?! 」」」

 小さなインプがこちらに小枝を振る。


 「逃げろと言うのか?!」

 「ピギィ!!」

 小さなインプが問いに答えた?


 アレクは頷き踵を返す。

 階段の遥か下に、ブロッソ一行が走り行く姿が見える。

 『時間は稼いだか・・・・』

 「撤退!! インプが時間を稼いでいる内に、早く!!」


 カジミールの弟子たちもお互いにアイコンタクトを行い走り出す。

 「アレク殿、あのインプは?!」

 「彼が任せろと言っている」

 「ピギィ!!」

 「だそうだ! 行きましょう!!」


 アレク達の姿が階段に消えてゆく。


 「ピギィ!!」

 小さなインプはその姿を見送り、幾度も小枝を竜に振る。


 ボ、ボ、ボボ、ボボボ、ボボゴバァ!!


 先程より一回り大きな炎が竜の体を焼く。


 『キシャァァァァァァ!!!!』

 骨の竜が声に成らない叫び声を上げる。


 竜にはインプの姿が見えない。

 しかし足下や体に張り付き、ちまちまと体を焼かれていく。

 白濁した意識が不快感で埋め尽くされる。


 骨の竜が、闇雲に地団太を踏みインプを潰そうとする。


 ゴ、ゴゴ、ゴゴゴ、ゴオォオオオオオ!!


 インプの振る小枝が空気を切り素早く振られると、火力が増した。

 カジミールの弟子が放った火柱と同等の炎が、竜を焼く。


 『キシャァァァァァァァァ!!!』


 竜の胸に大量の靄が溜ってゆく。

 その量は骨の腹膜を裂く寸前まで膨らみ、ゴブゥっと喉元に競り上がる。


 小さいインプは小枝を捨て、首から下げたメダリオンを掻き抱き、空中でとんぼ返りした。



 ゴバババババァァァァアアァァァ!!!!


 骨の竜が自分の足元にブレスを吐くと略同時、インプの姿がパッと空中で消失し姿を消した。



 ゾロロロ ゾロロロロロ


 骨の竜が辺りを見回す。


 小さなインプだった石槫を探している。

 跡形もない煩い生き物を仕留めたのか判断できず、のろのろとその場で蜷局とぐろを巻くように回る。

 しかし、見つける事が出来ない。


 ハタと頭を擡げる。

 生者であった司祭達の姿も無い。


 『 キシャァァァァァアァァァァ!! 』

 ぶつけ様の無い憤りの叫びで大広間を揺るがすが、その声を聞く者はだれもいなかった。



 ・・・・


 「 アレク殿が戻られた!!! 」

 冒険者や他の場所を探索していた兵士らが歓声を上げる。


 「ハァハァハァ 黒門を、黒門を閉じよ!!」

 兵士たちが黒門を押すがビクともしない。


 「閉まりません!!」

 隊長らしい人物が悲壮な声を上げる。


 「仕方ない! 夜は拙い! 一次城外まで撤収!!! 日没までに撤収!!!」

 アレクが声を張り上げる。


 まだ日があるとはいえ、随分西へと傾いた日光が古の城を闇に閉ざすまで僅かな時間しかなかった。

次話より二部二章です。

ダンジョン内の冒険?をお待ちの方、お待たせしました。


冒険というか探検というか・・・・

普通は初めての漆黒の空間なんてサクサク進んでなんて行けません!

というか私は無理。そんな感じの表現になってます。


幽霊はあまり出て来ないですたぶん。

その代わり生き物てんこ盛りです。


二章は(大量の)ウジ虫やゴキブリ系がダメな方は、読まない方が良いかもです。


この流れは、かなり長くなるかもです。

だって、セルジオ一人で彷徨うのだから・・・・

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