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いつもダンジョンに居ます  作者: ねむねむぴよ
第二部 一章 古の廃城
212/256

180話


 一行の背後から外の光が射しこみ、彼等の作る影が階段を這う。


 甲冑の数は階段の両サイドを埋め尽くしている。

 甲冑は膝を抱える物、他の甲冑に寄りかかる物、倒れ伏す物様々。

 その中には、甲冑の主であった者の骸が、萎びた干物の様に収まっている。


 黒門から伸びる階段だけで数百。

 最後の映像を見たセルジオは、彼等の末期の絶望を想起し肌が泡立つ。


 階段を上ると、入り口の光が完全に届かなくなった。


 魔法とカンテラの灯りに照らされた通路の周辺には横たわった亡骸が幾つも並べられ壁際にはびっしりと甲冑が座り込んでいる。


 「ここは大広間かしらぁ・・・・」

 クディが呟く。

 まだオネエ言葉であり、余裕があるようだ。


 「甲冑の痛みが少ない所をみると、保存の魔法が効いているようですね・・・」

 カジミールも涼し気に呟く。

 冒険者達は警戒心MAXで、セルジオの両脇を固めている。


 床を埋め尽くす、負傷兵と兵士の亡骸を見ながら、足を進める。


 大広間の先に大階段が現れた。


 階段の周辺に、これまで見た兵士の甲冑と明らかに異なる煌びやかな装備の亡骸が一団となって伏している。


 「この先が謁見の間かしらぁ・・・・」

 クディが呟く傍ら、カリカリと地図に起こすラットの筆の音が聞こえる。


 近衛兵の亡骸を避けるように、ゆっくりと進む一行は、階段を上ってゆく。


 瘴気が一層濃くなっていく。


 近衛兵の亡骸は、階段を埋め尽くしており、一段一段上がって行く足取りは遅々としていた。



 階段を上がると、大広間より狭く区切られた部屋に出た。

 「控えの間ねぇ・・・・」

 クディが呟く。

 もともと贅を凝らした造りであった事を偲ばせる壁面の装飾や倒れた彫像などが、天井に穿たれた明り取りからの僅かな光に照らされ、もの悲しい廃墟の姿を映し出していた。


 「ここも遺体だらけねぇ・・・・」

 兵士の甲冑は疎らと成り、その代わりに貴族風のドレスやマントが目につく。

 「子供も多かったみたいだな・・・・」

 レシアが親と思われる遺骸に飽き抱えられるように干乾びた子供の遺骸に目を向け零す。


 控えの間の門も黒色化しており、元の木材異なる質感を醸す。

 ラットが地図を描き終え、扉を調べる。


 「罠は無さそうですが、開く気配はないな・・・・」

 ラットが退くと、セルジオが前に出る。


 セルジオは石鋤を突きだし扉に触れると、扉は音もなく手前に開いた。


 ・・・・


 謁見の間、そこは時間が切り取られたように当時の状態を保っていた。

 天井には極彩色の壁画が絵描かれ、煌びやかな甲冑を身にまとった近衛兵の亡骸が直立不動で王座までの空間を未だに守っている。


 「魔力をかんじます・・・・魔法がまだ生きているようです」

 カジミールが歩みをとめ、注意を促す。


 「「「うげぇ・・・・」」」

 ラット、イルミナ、ブロッソが突然嘔吐した。


 セルジオは意に介さなかったが、此処の瘴気は更に濃く、耳の戸には多くの囁き声が聞こえている。

 「幽鬼だらけねぇ・・・・恐怖と怨嗟が渦巻いてるわ、気をしっかり持たないと呑まれるわよ!」

 クディが矢を番え警戒を一段上げる。


 冒険者一行は口元を拭い、聖職者に加護を受け気合いを入れた。


 カシャッ!


 それは、玉座傍らの甲冑がロングソードを床に突いた音であった。

たて込んで来ましたので、明日はアップ出来るかな(泣)

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