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いつもダンジョンに居ます  作者: ねむねむぴよ
第二部 一章 古の廃城
209/256

177話


 熱で炙られ、セルジオとその一行は全力で遁走していた。

 半ば夢現のカジミールは譫言のように「もっと、もっと・・・・まだだ、まだ保つ・・・・もっと」と呟き魔力で火柱を成長させている。


 「カジミール?! いい加減にしない?」

 クディがカジミールを肩に抱えたブロッソと並走しながら、マッド魔法使いに声を掛ける。

 「何を危ぶむのですか? 禁術を使う機会などそれ程ないのですよ?

 こんな時だからこそ、魔法の真価を示すとき・・・・あっ・・・・」

 感情が高ぶり、制御していた魔法とのリンクが切れる。


 隕石の時の様子を知る者の顔がみるみる青くなる。

 「早く隠れろ!!!」

 いつものオネエ言葉が出ない程緊迫するクディの叫び声が響く。

 足元に、熱に耐えれなくなった甲虫が同じ方向へと逃げている。


 「そろそろ崩れますよ?」

 「何で疑問形なんだ?!」

 カジミールの呟きにレシアも突っ込むが足は止めず、一行は勢いよく大通りに飛び出した。

 そして、飛び付くように建物の影に張り付いた。


 ドォォォムムムム!!!!!

 空気が激しく揺れる。


 複雑に入り組んだ路地を舐めるように過加熱水蒸気が吹き抜け、逃げ遅れた甲虫と壁に張り付いた藻を瞬時に焼いていく。

 そして、一行が飛び出た路地から真っ赤に焼けた空気となって吹き出し、前方を逃げ惑う甲虫を背中から焼き、炭にしていく。


 ドドドドドドド!!!!

 ゴォオオオオオオ!!!

 空気が震える。

 爆発による激しい上昇気流が周囲の空気を根こそぎ空へと吸い上げる。


 一瞬風が止む。

 しかし、それは一瞬であり、次の刹那、逆向きの突風が巻き起こった。


 先程、甲虫を焼き払った高温熱風が動きを止め、逆向きに路地へと吸い込まれる。


 ゴォオオオオオオオ!!!


 まだ、健全な甲虫も路地に吸引される。

 壁面に叩きつけられ砕け、破片諸共路地へ消えてゆく。


 「魔法障壁を張れる者は張れ!!」

 髪が風に乱されるレシアが叫び、マジックシールドを展開させた。

 足元にはアレクと冒険者の数名。

 セルジオ側には、クディとカジミールが障壁を展開し残りのメンバーを庇う。


 ゴォオォォォ・・・・

 十数秒の突風であったが、それはとても長く続いた気がした。


 上空に傘の様な雲が幾つも出来上がり、古城に影を落としている。


 ヒュルルルル

 ドボン ドドドボン!

 飛翔音と共に湖に何かが着水する音がしていた。


 ・・・・


 「もう、大丈夫ですかね・・・・」

 カジミールがシールドを解く。


 空から灰交じりの雨が降っている。

 雲は形を崩し、入道雲となって流されている。


 「カジミール殿、あれは遣り過ぎです! 我々も焼け死ぬところでしたよ?!」

 アレクが語気もあらく詰め寄る。

 しかし、カジミールは悪びれた風もなく、キョトンとした表情で『敵を殲滅しましたが何か?』といった態度を取っていた。

 「カジミールさん、あの魔法は時と場所を選んで下さい。

 もし、周辺に貴重な魔法書なんかあったら燃えてしまいますよ?」

 さすがのセルジオも、熱で炙られ少し焦げた髪の毛を撫で、カジミールを詰めた。


 「・・・・そうでありますな・・・・配慮が足りませなんだ、申し訳ない・・・・」

 カジミールは、はっと気付き素直に頭を下げる。

 そんな傍らで、「妾の髪の毛がぁぁ!!!」「わたくしのもぉ!!!」と騒ぐ姫様はこの際、放置されていた。


 ・・・・


 大魔法使いが大通りの片隅で正座して説教を喰らっている。


 「さすがにセルジオ様の供の者ですね・・・・」

 聖職者のブレナがリーダーのブロッソに呟く。

 側ではラットとイルミナが首を縦に激しく振っている。

 「我々の出番は有るのかな・・・・」

 少し心配になるブロッソが路地裏を覗く。


 周辺数ブロック四方が完全殺虫・殺菌され、済んだ空気になっていた。

 「セルジオ様達の言う事は、ちゃんと聞こうな・・・・」

 ブロッソが零す。

 冒険者の一行は真剣な表情で頷くだけだった。


 ・・・・


 そして、一行はウナギの居た場所に戻る。


 池は跡形もなく蒸発し、ウナギの残骸は跡形もなく吹き飛んでいる・・・・いや、行けの場所に僅かな焦げ跡があるだけで、きれいさっぱり煮沸消毒され、ドブ臭い臭いも残っていない。


 「あの魔物は何だったんでしょうか・・・・」

 ブロッソが池のあった場所を調べながら尋ねた。


 「あれは、瘴気で異常をきたしたウナギではないでしょうか・・・・」

 カジミールもルーペで焦げを調べながらブロッソに答える。


 強力な魔法を使う魔物を、一撃で吹き飛ばしたマッド魔法使いに少々怯えながらイルミナも尋ねる。

 「生き物が変異したのですか?」

 「そうでしょうね、今となっては解りませんが・・・・」

 石畳の隙間にこびり付いた欠片をピンセットでほじくり、試験管に収めコルク栓を閉めるカジミールが大事そうにそれをサイドポーチにしまう。


 瘴気の空白地に周りの瘴気が流れ込んでくる。

 ここも再び瘴気の濃い場所に戻るのだろう。


 セルジオは頭を掻きながら、みんな心配しているだろうと思い、二日目の探査を切り上げることにした。

書き貯め分は、ここまで。

いよいよタイトルの通り、主人公かダンジョン内に…


どんな状況でそうなるのか、今しばらくお付き合いください。

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