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いつもダンジョンに居ます  作者: ねむねむぴよ
第二部 一章 古の廃城
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176話


 左右に5対の目を持つ、長い髭をを持つ頭部。

 口は何かに吸い付くのに適したような円型をしており、その中には鋭い歯が何重にも円型に並んでいる。

 胴回りが牛程の巨大な異形の鰻。


 キシャァ!!


 空気を絞り出すよな鋭い奇声を発し威嚇してきたかと思うと、蛇の回りに幾つもの水球が浮かび上がった。


 「建物の影に!!」

 カジミールが叫ぶ。

 一行は変色した瓦礫の裏に逃げ込む。


 バシュ! ババババシュ!


 幾つもの細い水流が、水球から放たれ瓦礫の表面を撫でる。

 その圧力は相当の物なのか、瓦礫の表面の藻が水圧で弾き飛ばされ綺麗な岩肌をみせる。


 「強い魔力の流れを感じます! 魔法で水を打ちだしてます!!」

 カジミールが魔法の働きを察知し叫ぶ。


 空中に浮かぶ水球、その表面の一か所が僅かに窪み、水球が僅かに縮むたびに細い水流が放たれる。

 その水流は、変色していない石材に当ると・・・・石材であるにも関わらず表面を削り穴を穿つ。


 「なんだ!あれは? 水で石に穴が開くぞ?!」

 ラットが叫ぶ。

 「直撃はまずいわぁ、どうするぅ?」

 クディがカジミールに尋ねる。


 「そうですね、範囲燃焼の術式を唱えます。それまで牽制できますか?」

 カジミールがクディとイルミナに尋ねる。

 二人が頷くとカジミールは詠唱を開始し、トランス状態に入る。


 シュシュ! シュシュシュ!


 矢がウナギに放たれた。


 水中と違い動きが緩慢なのか、全ての矢が命中する。

 「やった?!」

 イルミナが少し頭を出して確認するが、狙ったように水撃が近くの岩を穿つ。

 「きゃ!!」

 頭を引っ込めるが、飛沫を浴びてグショグショに濡れるイルミナ。


 ラットが短剣を投げる。


 ビュ!

 体重の乗った短剣がウナギの額に命中する。


 キシャァ!!!!

 ウナギが叫ぶ。


 恐る恐る顔を出すと、矢と短剣すべてがウナギの表面、その粘液に捕らわれズルリと水の中に落ちていく。

 「効いてないわぁ! レシア! 魔法で行くわよぉ!」

 クディが叫ぶとレシアが頷く。

 二人は簡易詠唱を唱え、岩陰から飛び出しざまにウナギに魔法を放つ。


 『精霊風の刃』

 シュルルルルルルル ッパ! パパッ!!


 旋毛風が吹き、そこから風の刃がウナギに放たれる。


 ウナギの胴に幾つもの風の刃が突き刺さる。


 初弾で粘膜が、次弾で体表が削られる。

 そして三発めにして体表を切り裂き、鮮血を撒き散らし赤身の肉が顔を見せる。


 キィ キシャァァァァァァァァアアアアアア!!!


 ウナギが怒った。


 水球の数が、先ほどの数倍。

 そこら中に浮かび上がり、散発的だった水撃が面の様に打ち付けられる。


 ビビビビビシュ! ビビビシュ!! ビビビビビビビシュ!!


 セルジオ達は頭を抱えてやり過ごす。


 『火炎旋風』

 カジミールの口から魔力の篭った言葉が漏れた。


 池に向かって空気が集まってゆく。

 その空気が次第に密度を増し、離れているこの場にも熱気を感じ始めるのにそれ程かからなかった。

 

 渦を巻く風の弾が次第に赤色を帯、吹き込む風に含まれるチリに火が付いた。


 ゴオォゥ!


 風の玉が赤い火球に変わる。

 熱気に押され、ウナギは水中へと逃れるが、空中に浮かぶ水球は熱気に炙られ次々に萎んでいった。


 「あ、熱い、こちらが煮える!!」

 ブロッソが叫ぶ。

 逃れる隠れる岩陰にも熱気が届く。


 火球はゆっくりと池に落ちていく。


 ジュワワワワワ!!!!!

 池の表面が蒸発し水蒸気の渦を作る。


 渦は更に火球に吸い込まれ、いつしか渦巻く火柱となった。


 「強すぎるんじゃなぃ? まずいわ、逃げるわよ!!!」

 クディが風鳴の中、皆に大声で伝える。


 「早く路地裏へ!!」

 一行は風から顔を庇いながら路地裏に逃げる。

 ブロッソはカジミールを抱え上げ、最後に路地裏に駆け込んだ。


 ゴォオォォォォオオオオオオオオ!!!!


 路地裏の隙間から、先ほどの広場の片隅が見える。


 真っ赤に燃える広場。


 時折パリパリと静電気の様なスパークが見える。


 天空に立ち昇る火柱。


 ゴォォオォォォ!!!


 広場から一ブロック離れた場所からも火柱の音が聞こえる。


 「やりすぎましたか・・・・」

 カジミールが涼しい顔で呟く。

 『遣り過ぎたじゃないだろ!』

 一同がそう思いながらも飽きれて言葉にならない。


 「カジミール? あれってどんな魔法なのよぉ」

 クディが問う。

 「あれですか? 

 あれは空気を圧縮して加熱させ、その時副次的に作られた電気が空気中の水を分解し燃料とするものです。

 燃料が無くなるまで燃えつづけますが、燃料過剰だと最初の空気の弾が絶えられなくなり炸裂して一帯を殲滅する禁術ですよ」


 『このおっさんサラッと禁術使ってるよ!』

 皆は平然と言ってのけるカジミールを見ながら、彼の言葉を反芻する。

 「・・・・炸裂?!」

 そう言うと皆が建物の路地に飛び込んだ。



 ・・・・・


 城下町で調査を行う人々は見ていた。


 ドォォォムムムム!!!!!


 上空に傘の様な雲が幾つも出来上がる。


 ヒュルルルル

 ドボン ドドドボン!


 ダンジョン化されていない構造物が衝撃波をもろに受け、放物線を描き湖に吹き飛び、幾つもの水柱を作っっていた。

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