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いつもダンジョンに居ます  作者: ねむねむぴよ
第一部 四章 そして全ては砂塵と化す。
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170話


 砕けた小舟の木片と共に大波で浅瀬に打ち上げられらブロッソ達は、湖の水を吐き出しながら陸へと逃れた。

 皆は満身創痍。


 ブロッソは肩が外れ、強かに背中を岩に打ち付けた為、吐血しながらラットの襟首を掴み駆け出す。

 ラットは骨折した足が在りえない方向へ折れ曲がり、ぐったりしている。


 イルミナは折れた弓を捨て、殴打した脇腹を抱えながらも聖職者の男性に肩を貸しながら彼に続く。

 聖職者は右腕が折れ曲がり顔面蒼白となっていた。


 ・・・・


 水中では大ガザミと大甲冑魚が死闘を繰り広げようとしていた。


 水中の大ガザミは陸上の動きとは別格の、俊敏な動きで甲冑魚に迫る。


 大ガザミが大ハサミを突き出す。


 ガリリリリ!!

 水中で岩を削るような音を響かせ甲冑魚の鱗が舞い上がる。


 体を捩らせ直撃を避けた大魚が大岩を思わせる頭部の咢を広げ大ハサミに喰らいつく。

 ガギギギギギ!!

 大ハサミの表面に万力の様な顎が喰らい付、ミシミシと締め上げた。


 ビチ ビチチ バギギギィ

 細かな亀裂がハサミの表面に走った。


 大ガザミはすかさず残りのハサミを大魚の胴に突き入れる。


 ドッ! ドドッ!! ドドドドド!!

 ハサミの波状攻撃が大魚の鱗を削り取りその身を抉る。


 バギン!!

 甲冑魚の顎が大ガザミのハサミを噛み砕いた。

 ハサミの中の透明の肉がむき出しになり、千切れた筋肉繊維が花の様に水中に広がる。


 大ガザミは力の抜けてゆく大ハサミで最後の衝撃派を放つ。


 パン!


 水中にも拘らず、同心円上に衝撃派が広がる。

 甲冑魚の頭部がその直撃を受け、思わず噛みついた顎の力を抜く。

 しかし、大ハサミはその身に己の衝撃派を受け、耐えきれずに殻が弾け飛び四散した。


 甲冑魚は頭部の衝撃に身を捩るが、翻りながらも尾鰭を大ガザミに打ち付ける。


 ドゴォン!!

 水面が落ち窪む程の勢いで大ガザミの胴体に大魚の尾が打ち付けられ、ガザミの口から体液が吹き出した。

 それでもガザミは動きを止めず、大魚の腹に喰らいつく。

 湖面に白と赤の体液が吹き上がり、渦を巻きながら混じりあった。


 グジジ ミチュ ビチチ・・・・

 複雑な構造の蟹の口が、大魚の身を喰らう。

 三つのハサミで捉えられた大魚は生きながらに身を喰われ、声にならない悲鳴を上げた。


 瘴気の濃すぎる湖底、食物連鎖の頂点の大甲冑魚が王者の意地を見せた。

 腹膜が破れ内臓が零れ出しながらも、ハサミを振りほどき、ガザミの腹に齧り付く。


 バギン!! ビチチチチ・・・・バチン!!

 大ガザミの殻に大きな亀裂が走る。

 その亀裂は次第に大きく成り、ガザミの体を二つに裂いていく。


 大甲冑魚は更に大きく顎を開き、止めとばかりに再び咢を噛みしめる。


 バチン!!


 大ガザミの体がビクビクと震え、力が抜けてゆく。

 体が二つに別れながらも、その目と触角は忙しく動くが、四肢を動かす力は既にない。


 砕けながら湖面に浮かんでゆくガザミの体。

 それを見届けるも甲冑魚の目からも光が失われ、後を追う様にその身も湖面へと腹を向け上がってゆくのだった。

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