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いつもダンジョンに居ます  作者: ねむねむぴよ
第一部 四章 そして全ては砂塵と化す。
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167話


 セルジオに付き従うインプの目から見た景色と臭い、感触が全て彼にフィードバックされている。

 とても長い間沈黙していたダンジョンの管理者が感じた変異に、知った者の血が混じっていることを察知した。そして彼に接点コンタクトを取った。


 ・・・・


 彼の回りには濃く成りすぎた瘴気が沼の底の泥の様に彼を包み込み、酷く緩慢にしか動けない。

 彼は、杖に魔力を込める。


 彼を取り囲む空間が一気に浄化され目の前に立方体の真っ黒なタリスマンが出来上がり、床にコトリと音を立てて落ちる。

 一瞬彼の動きが精彩さを取り戻すが、すかさず濃密な瘴気が辺りを飲み込む。

 床には無数のタリスマンが堆積しており、元の床を見る事は出来ない。

 「まだまだのようだ・・・・」

 濃密な瘴気が彼の思考を阻害し、微睡む様に視界がぼやけていく。


 その様な日常が僅かであるが改善されてゆく。

 瘴気の満ちた部屋に、時々揺らぎが現れるようになった。


 彼は、その僅かな間に許せる限りの数個のメダリオンの作成とインプを召喚する。

 濃い瘴気に中てられたインプが目鼻から体液を吹き出し腐り落ちる。


 揺らぎの間隔はまだ微々たるものだが、彼は気長に待つ。

 次の揺らぎが起きた。

 彼はメダリオンを召喚途中のインプに掛ける。


 見るからに脆弱な、うまく召喚できなかった小さなインプ。

 インプは強い瘴気に震えながらも死なずに堪えて見せた。

 彼は記憶の一部を転写したスクロールをインプに持たせる・・・・

 思考が急激に萎びる。・・・・何を考えているのか解らなくなる。


 ただ一点のみに意識を集中する。

 ガリガリのインプに途絶えがちになる意識を繋ぎ、瘴気の薄い場所を選びセルジオの下へ導く。

 自分の意識が途絶えたとしても、自立して動けるぎりぎりの使い魔を彼の下へ。



 大きな揺らぎが訪れ、靄が晴れる。

 ここ数千年なかった事だ。

 彼はメダリオンとインプを複数作る事が出来た。

 前のインプとは違い屈強なインプを召喚できた。

 互いにメダリオンを掛けさせ、瘴気から守る。

 合わせてタリスマンを生成し、彼等がここから離れる時間を稼ぐ。


 何物かの侵入を感じる。

 ダンジョンの防衛機能は自立的、機械的にそれらを駆除するように動作する。

 誤作動を起こすような複雑な機能ではない為、確実に外敵を排除するだろう。


 濃い瘴気のうねりが彼の部屋に流れ込む。

 意識が塗りつぶされる前に、記憶を転写した巻物をインプに渡し、この場を離れさせる。


 最初のインプのリンクはまだ生きていた。

 微睡む思考の中で、昔見た地上の景色が垣間見える、それは彼に潤いを与えた。


 不定期に揺らぐ瘴気の隙間を楽しみに待つ様になっている彼は、自身の思考の変化に驚いた。

 元より彼には人と同じような感情がないはずだが、インプからの映像を見て笑っている。

 髑髏の顔が微笑むのではなく、感情が動くのだ。

 そして、もっと外の世界を見たいと考える。


 どうすればそれが出来るのか・・・・

 微睡む中で考える。


 そして、いつしかセルジオという若者の存在が、彼にとって重要なものになり始めていた。


 彼が新しい風をダンジョンに運び入れる。

 もしかすると・・・・

 呪詛や怨嗟に満ちたダンジョンが、正常な機能を取り戻すかもしれない。

 そう期待させるだけの変化を彼が作り出していた。


 「彼の敵は、我が敵である」


 いつしか彼の思考は、そのように結論付けた。

 メダリオンを作り、インプを作り、外地へ放つ。


 セルジオを見守る為に、脆弱なインプの繋がりは切れない。


 外に放つ見た物を記憶し持ち帰る魔物インプ

 ダンジョンの周辺国を調べさせるために放ったインプが100匹を越えた。

 帰って来た僅かなインプが、彼の知る世界がすたれていることを知らせる。

 そして、セルジオに害を及ぼす輩も少なくないと・・・・


 ダンジョン見えた僅かな希望、かつての賑わいを取り戻す為に必要なセルジオ。

 そのかなめとなるセルジオに、害をなさんとする塵芥ちりあくたがいる。

 彼に苛立ちと怒りという感情が生まれた。


 「許すまじ」

 彼の意識がダンジョンに伝わる。

 幾つかの魔動経路が活性化し、ダンジョンの底に溜る無尽蔵な魔力がゴーレムに繋がった。

 魔力の波動が、彼に、ゴーレムがダンジョンの外に居る感触を伝えてくる。

 膨大な魔力をゴーレムが吸いあげる。

 しかしダンジョンに集る虫はあまりにも無力であった。


 セルジオ以外の塵芥に何の感情も湧かない。

 セルジオがこのダンジョンに再び潜り、瘴気を掃う事が出来る様に・・・・

 彼の心身が朽ちないようにのみ注意を払う。


 瘴気が濃く成り霞みが掛かる。

 薄れゆく意識の中、メダリオンをインプに握らせ策を練り、放つ。

 そして彼は再び微睡んだ。


 ・・・・


 刹那の微睡みが覚める。


 「む? ・・・・干渉か!?」


 瘴気と魔力が動いている。

 ダンジョンに立ち込める瘴気を魔素に還元し空の彼方へと解き放つ術式を感知する。


 瘴気はまだ濃ゆいが、揺らぎが激しく交差し彼を覚醒させる。


 インプの目から、当代の魔術師たちがアーキファクトの解析を行いそれを利用しようとしている。


 彼は心がざわつくのを感じる。


 脆弱な虫の如き人々が足掻く姿をインプを通して知り、彼は思わず立ち上がっていた。

 ダンジョンに必要なセルジオを支えようとしている。


 「ハハハハハ 足掻きよる」

 愉快なのだ、これが愉快だという感情なのか?!

 魔力が揺れる。

 彼は、笑っていた。

 彼は、初めて笑ったのだ。


 稚拙な魔法が何をしたいのかを理解する。

 「ハッ、詰めが甘いわ」

 ダンジョンの魔力を外部に通すリンクが張られている。

 彼の力が、ある一定の範囲で行使できるのを感じる。


 「これでは持たぬな・・・・魔動経路、出力術式ともに焼き切れよう。

 簡易転送装置もだめか・・・・」


 彼はタリスマンを同時に数個空中に作り時間を稼ぐ。

 その場で見た目を寸分に違わず、現物と全く違う簡易転送装置を作り上げた。

 そして、魔法具から漏れ出す魔力を辿り、それを入れ替える。


 次に埋設されたキーストーンを強化した物を作りだし、同じく入れ替える。

 濃い瘴気が部屋を満たし始める。


 「まて、もう一仕事ある」

 彼は、オベリスクを改良し空間と時間を制御する術式を割り込ませ、マーキングされた空を彷徨う巨岩の大気圏突入の方角を再計算する。

 「これではどこに落ちるか分ったものではないな・・・・最初は、もう間に合わない。

 次は質が悪い。その次は遅すぎる・・・・これで良かろう」

 再計算された軌道に導く術式を、キーストーンに転写。


 最初の巨岩は大気圏突入経路が浅く遥か彼方に飛び去るはずの物の角度を変え、被害を近場に限定させた。

 次の巨岩は良いが、空中で爆散する恐れのある巨岩であった。

 そのため、三番目の巨岩を差し替え確実に敵を駆逐する大きさの物にする。

 被害を局地に限定させる魔動の阻害する恐れのある強い呪物を探る・・・・

 数は2・・・・インプに排除を命じ、地上に放つ。 


 瘴気が更に濃くなり、思考を邪魔し始める。

 「最後は・・・・・」

 彼はダンジョンと新ダンジョンの入り口に、時間制御の自動展開術式を転写しはじめる。

 霞んで行く意識の中、星と地上の座標を割り出し時間を止めた後に取り残されない様に注意を払い最初の隕石の衝撃波を感じた段階で発動するよう実行待機させた。


 そして、念の為に同じ術式をセルジオのメダリオンにも・・・・

 転送が完了するまで集中力を手放さない様力む。

 転送完了・・・・


 彼の意識が途絶えた。


 ・・・・


 僅かな微睡だった、意識が覚醒する。

 ダンジョンの一部より瘴気が漏れ出しているのか、瘴気が胎動する。


 「ハハハハハ 上々!」

 彼が細工をした呪物は、一部を残し全て自壊するよう仕込んであったが、キーストーンの一部が彼の魔動波に反応し、正常に動いていることを返して来る。

 キーストーンのいくつかは完全に埋没し、見つからないであろう。

 地上に姿を現しているキーストーンを自壊させ、埋没したキーストーンのリンクを強化する。


 「彼の者の名は?」

 セルジオの身近にいるインプに意識を集中し尋ねる。

 「ピギィィギギ」

 「ガジミールと申すか・・・・フフフフ、何か褒美を考えねばならんな」

 新しいおもちゃを手に入れた子供のようにワクワクする彼が瘴気を掃いスクロールを作ろうとし、手を止める。

 「いや、直接会いに行くとしよう・・・・フフフフフ」

 重い纏わり付く瘴気を払いのけいそいそと立ち上がり、セルジオとカジミールに渡りをつける策を練る彼の背中は ダンジョンの管理者のそれではなかった。  

4章、本当のエンディング?

セルジオ村の人々に誤るセルジオは書かなくていいかな・・・・

どうせお金で解決するんだろうし・・・・

次話から二部に入っちゃおうかな・・・・

まだ、読んでみたい所があったら感想付けて頂けると書くかもです!


どこから書こうかなぁ・・・・

館の再建? お城? シャロンのその後? サラのストーカー行為?

あ、サラのお父さん・・・・は、どうでもいいかw

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