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いつもダンジョンに居ます  作者: ねむねむぴよ
第一部 四章 そして全ては砂塵と化す。
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164.5ー1話

バルザードの最後と皇国軍ENDの回収話です。

時系列的に164.5話ですが、追って挿入し直したいと思います。


 東の空からの幾筋もの白光が、朝の陽光を区切った。

 夜空に、静かに流れる流星雨ならば皇国軍の兵士達も知っている。


 しかし、今上空に見える流星は明らかに異質のものであった。


 「な、なんだ? 流れ星が何故こんなに?!!」

 体調不良でこけた頬の兵士が東の空から放射線状に流れ散る流星雨に目を捕らわれた。

 周辺の兵士達も、上空の変事に開戦を告げるラッパの音にも耳に届かず見入っている。


 「魔力を感じます!! 魔法の攻撃だ!!」

 皇国軍の魔術師連隊が、障壁の術式を唱え幾つものシェルターが展開されていく。


 「皇帝陛下を障壁の中へ!!!」

 近衛兵が、円陣を組み皇帝の馬車を中心に展開された魔法障壁の中で様子を窺がう。


 ・・・・異変は直ぐに現れた。


 放射線状に広がるその中心に空を割るような轟音を響かせ、赤色に燃える星が現れる。

 「な・・・・禁術?! 星落としだ!!!」

 宮廷魔法使いの賢者が叫んだ。

 賢者の回りに皇国の魔法使いが集い、いつものように冷静に対抗魔法を示唆するであろう彼の言葉を待つ。

 「・・・・術者が生き残れない、禁断魔術。


 我々に生き残る術は・・・・まだだ!! まだ諦めてはならぬ!! 何か、何か・・・・むっ!!」

 賢者が何かを閃く。


 「積層状に! 斜面の魔法障壁を上空へ出来うる限り展開せよ!!!」

 賢者の号令の下、魔法使い達が一斉に詠唱を開始する。

 彼の差配に従い、ガラスでできたひさしの様な魔法障壁が上空に幾つも浮かび上がった。


 ゴゴゴゴゴオオ バン、バン・・・ゴゴゴゴゴゴオオオオオオオオオオオ!!!!

 隕石はその身を時折爆ぜさせながら真っすぐに、侵攻を開始した軍に向け飛翔してくる。


 幾つもの小振りな支飛翔物が煙を吐きながら魔法障壁に当り、障壁を滑りいなされ方角を変える。


 「い、行けるかもしれん!! 魔力を惜しむな!!! 全てを注ぎ込め!! これを躱せば・・・・」

 鼓膜が破れる程の轟音が天から降り注ぎ、賢者の声はすぐ隣にいる魔法使い達に届かない。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴドドドドドドドド!!!!!

 隕石本体がすさまじい速度で障壁の表面を舐める。

 障壁は触れた端から砕け、魔素の放つ魔光と共に消えてゆく・・・・


 シャララララララ

 轟音の中、魔法障壁が砕ける音が聞こえている。

 幾層もの障壁は薄紙の様に破かれ隕石の威力を削ぐ事は出来ない・・・・

 賢者の額には玉の様な汗が大量に浮かび、地上より上空の障壁に魔力を注ぐ。

 周辺の魔法使いが魔力が尽き次々と事切れていく。


 ゴゴゴゴゴゴオゴゴゴゴゴゴオオォォォ!!!!!

 皇帝の馬車を数倍にしたような大きさの火球が、身を屈めたくなるほど直ぐ頭上を滑り行き、湖へと飛び去った。


 ドドドドドドドドドオオオオオオオオ!!!!!

 激しく地面が揺れる。

 湖が大量の飛沫と水蒸気を拭き上げ、背後に巨雲を作ったかと思いきや、衝撃音と共に巨雲が赤く燃え、幾つもの巨石が空に舞い上がるのが見える。


 「し、凌いだぞぉ・・・おおおおおおお!!!!?」

 賢者が成り止まぬ轟音に、東の空を見る。


 先程と同等の火球が、天を切り裂き再び飛翔してくる。

 「「「「・・・・・」」」」

 魔力の殆どを使いきった魔法使いと賢者が絶望に引き攣った顔を空に向け、その最後を悟る時間は僅かであった。


 世界が赤く燃える隕石に埋め尽くされた。

 皇国軍のほぼ中央に隕石は落着した。

 直撃を受ける前から兵士たちは押しつぶされ、蒸発し、地面が泥の様に柔らかく歪んで隕石を受け止める。

 賢者の目の前で、大地をフワリと波打ち見えない壁が突風と共に辺りを吹き飛ばす。


 最後の魔力で魔法障壁を隕石に対し、垂直に近い角度で張っていたおかげで、ボロボロになりながらも彼と皇帝の馬車だけはまだ原形を留めている、しかし無傷ではない。

 凄まじい勢いで吹き飛ばされた飛翔物が体をかすめただけで、周辺の体組織を根こそぎ抉り取る。

 地面に伏せる賢者も例外ではなく、四肢は既に失われていた。


 灼熱の風が、地面を舐める。

 優れたマジックアイテムのローブが千切れ飛びながらも、まだ賢者を辛うじて生存させていた。

 馬車も一見形を保っているが、扉は吹き飛び、至るところに穴が穿たれていた。

 激痛が思考を白濁させるなか、僅かに顔を馬車の方に向ける。


 視線の先には、右肩から股間までの上半身側のない皇帝の骸が転がっている。

 何故か賢者は心の中で、『漸く御守りから解放されたか』と素直に喜べた。


 彼は今際の際に不思議な物を見た。


 何処から来たのか、首からメダリオンを下げたインプが皇帝の骸から何かを取り出し、すかさず消え去る。その背後に、熱風の吹きすさむ地獄絵図の中、高笑いするグールの様な男が立ち上がり奇声を上げている。


 そして、その背後には同じインプなのか、魔物か・・・・

 メダリオンを輝かせながら、男の指に喰らい突き指をもぎ、空中で消え去った。

 グールの様な人影は、インプが消え去ると同時に赤黒い炎を上げ灰となり消し飛ぶ・・・・


 賢者の視界が急激に暗くなる。

 『仕える主を誤ったか・・・・儂は地獄に来たようだ』

 薄れゆく意識の中、三度現れた一際大きな火球が暗いそらに浮かんでいる。

 賢者の口から浅い最後の息がスゥーと吐き出され、その瞳から輝きが消えた。


 生き物の居ない焼けた大地にが、再び泥の様に柔らかく歪み、火球を迎える。

 その赤い塊が地面を犯す様に大地に潜り込み、世界が白く塗りつぶされていった。

次話 10日 0:00予約です。

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