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いつもダンジョンに居ます  作者: ねむねむぴよ
第一部 四章 そして全ては砂塵と化す。
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166話

バルザード回収話です。

少し時間を遡る。

 時は開戦前、バルザードは馬車に揺られ嘔吐を繰り返していた。


 「バルザード様 近くの集落跡で数名の女を捕まえました。如何いたしましょう!?」

 私兵が縄で拘束した3名の花屋の店員を馬車の側に控えさせている。

 少女と思われる年齢の獣人とエルフ、そしてホビットと思われる女性はいずれも顔にあざを作り花屋の制服は血で汚れている。

 彼女達は、顔に痣こそあるが顔かたちは整いいずれも美形である。


 馬車の窓から覗くバルザードの食指が動く。

 「そのまま、馬車の中へ入れろ」

 「はっ!」

 痛めつけられたのか、足を引きずりながら馬車に乗り込む3名の女性達。


 ・・・・


 ガタガタと揺れる馬車の床に座り込む女性達を舐めるように視姦するバルザード。

 「脱げ!」

 女性達はビクリと体を震わせるが、荒縄できつく縛られ脱ぐことは出来ない。

 「くぅ・・・使えんなぁ」

 バルザードが腰から短剣を取り出し、一番艶めかしい姿態をもつ獣人の少女の縄を切る。


 縄がハラリと床に落ちる。


 獣人の少女は、傍から見ても解る程ブルブルと震えている。


 バルザードが再び口を開く。

 「早く脱げ!」


 少女は涙目になり、上着を肌蹴させ脱ぎ始める。


 扇情的な肩口の肌の色、太腿が露わになりバルザードが息を呑む。

 バルザードは嘔吐する気色を忘れ、少女に見入る。


 ゴバッ!

 「きゃぁぁ! お、お許しを!!」

 馬車の中から声が聞こえる。

 私兵たちは、いつもの事と聞こえないふりをし、何事もなく馬車を進める。


 馬車の床には、泡を吹き倒れるバルザード。

 その側には縄を外した3名の花屋の少女達・・・・

 冷徹な視線をバルザードに落としている。


 意識の無いバルザードの耳元でエルフの少女が囁く。

 「あなたの様な卑劣な男を殺るのに、セルジオ様の手を汚させる訳にはゆきませんの。

 あなたの弟さんと、あなたが苦しめた人々の恨みはしっかりその身で受けて頂くわ・・・・」

 そう言うと、懐から厳重に封印されたリングケースを取り出し、中の指輪を彼の指につける。


 「あなたの弟さんの持ち出した同種の指輪よ。

 ジェネシスリング、って言うらしいわ。

 凄まじい魔力で身体を回復させるの・・・・

 けど、弟さんの呪いを3倍増しにした呪詛が篭っている物よ?

 村に近づけば近づく程、体を蝕み腐らせるけど、死ねないの・・・・

 ターニャさんとニーニャさんからのプレゼント、女性からの物よ?

 最後のプレゼント、しっかり楽しんで下さいね」

 少女とは思えない妖艶な微笑みを浮かべ、バルザードの腹を蹴り上げる。


 「うげぇ・・・・!!!」

 激痛に胃液を撒き散らし嘔吐するバルザード。


 少女達は衣服を破き、悲鳴を上げる。

 「「「きゃぁぁぁ!!」」」

 吐瀉物を体に塗り付け、馬車から飛び出す少女達。

 みな涙を流し、先ほどの姿を微塵にも感じさせない生まれたての小鹿の様に震え、馬車の前で座り込む。


 「ぐぉおおおおおおぉ?!?! な、なんだぁ?!ごれ・・・がっがああぁぁぁぁ!!!!」


 指輪から黒い靄が吹き出し、肩口までの肉が一気に腐る。

 ジュブジュブと緑や黄色のおよそ人体の体液と思えない汁がしたたり肉がずるりと剥がれる。


 チカチカ!

 指輪が輝き、逆回しの様に肉が再生されていく。

 腐臭を漂わせる肉が血色の良い皮膚に再生されていく。

 「ぐがぁ!!!!! 痛てぇえぇぇぇ!! 何をし・・・がぁ!!!!!」

 腕の肉が再生される間に、左足が腐る。

 そして、その足が治ろうとすると、次は右足が・・・・

 常に腐敗と再生を繰り返し、絶え間なく激しい痛みを男に与え続ける。


 「ハァハァ ぐあぁ!!!! た、助けてくれ!!! ぐあぁ!!!!」

 馬車から転げ落ち、地面を這いまわる主人を見ても、おろおろするしかできない私兵達。

 私兵の一人が、剣を抜き黒煙を吹き出す腕を切り落とそうとする。


 黒い靄に剣が触れる。

 「ぎゃぁ!!!!!」

 私兵の男の剣から靄が体に纏わり付き、みるみるまに心臓まで登り上げると、草木が涸れるように男の顔から生気が抜ける。

 「ぐぅが!」

 男が断末魔の声を上げ地面に倒れると、鎧がごろりと地面に転がる。

 鎧の中身は枯れ枝の様に干乾びた胴体が、腰から折れ、鎧の中で乾いた音を立てている。


 その様子をみた私兵達は飛びのき、ただ見守るだけど主人を助けようとする者はいない。

 そんな私兵の一人がふと花屋の少女達がいない事に気が付く。

 痛みに悶絶しながら馬車に逃げ込む主人が、あたりに罵声を浴びせる。

 「村に!村にいそげ!! あ、あそこに・・・・ぎゃぁぁぁ!!!!」


 馬車は主人の命に従い行軍に続き移動を再開する。

 すでに少女達の事はすておかれていた。


 近くの茂みに、3名の少女と一人の従者がいた。

 「任務完了っと!」

 「早く戻りましょう♪」

 「なんなの? あの男! 気持ち悪ぅ・・・・」

 吐瀉物を拭い取り、新しい制服に着替える少女達。


 「あの、私はこの後どうなるのでしょうか?・・・・」

 嘗てバルザードの傍らに侍っていた従者が口を開く。

 「?! 腕はよさそうだからターニャ様に採用面接して貰うけど?」

 「・・・・タ? ターニャ様?!」

 ターニャの事を知っているのか従者の体が強張る。


 「あら、知ってるの? それはポイント高いわよ♪」

 草むらの先の花屋の馬車に引き立てられる従者。

 「逃げようなって考えない方が良いわよ、すでにあなたの内定は済んでるの。

 どこに逃げても、見つけ出すからね♪」

 ホビットの少女が朗らかに告げるが、男顔はすでに血の気が引いていた。


 そんな開戦数日前の一幕であった。

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