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いつもダンジョンに居ます  作者: ねむねむぴよ
第一部 四章 そして全ては砂塵と化す。
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163話


 セルジオ村の南方、嘆きの湖の東側に流れる川の下流、洪水等で河岸が削られ河原が広くなった場所に皇国軍が陣を張り始めた。

 それに伴いセルジオ執務室を訪れる伝令の出入りも激しく成り、つぶつぶの報告が口頭によって伝えられてくる。


 「セルジオ村住人の撤収完了!」

 「遊撃部隊、敵斥侯と散発的な交戦状態!被害軽微」

 「敵より伝達、最終勧告 【全面降伏せよ】進軍は明日 9(きゅー):00(まるまる)」


 「いよいよねぇ」

 クディが呑気に執務室でお茶をしている。

 ちなみに相手は目の光が死んでいるジードである。


 「セルジオ様ほんとうに大丈夫でしょうか?」

 サラがセルジオに張り付いている。

 その側にシャロンも控えているが、その表情は人形の様に固い。


 「要石への配置完了 偽装工作完了! 花屋部隊も同地に護衛として駐留!」

 入れ替わり報告を行う伝令に、ターニャもお茶をしながら頷く。


 にぎやかだった領内は人影が疎ら、篝火ばかりが目立つ。

 セルジオ仮館のテラスの近くに、小型の記念石柱が鎮座し鈍い魔光を放っている。


 薄闇の中、獣の鳴き声は聞こえない。

 大軍の放つ殺気に当てられ、動物たちもなりを潜めているようだ。

 早春の空気は澄んでいて星々に手が届きそうな程空が近い。


 セルジオはそんな空を見て、溜息をつく。

 明日、皇国軍が攻めてくる。


 ・・・・


 シャロンの心は、軋み張り裂けそうだった。


 『兄上達は何故わらわを切り捨てた?

  なんで、ここまでして他国の領土を欲するの?

  なぜ、セルジオ様は私を助けようとするの?

  10万の敵兵の前に、なんでこんなに落ち着いていられる?

  なぜ、なぜ、なぜ、なぜ・・・・』


 シャロンの頭の中には、答えに辿り着けない疑問が渦巻き、戦争を回避できない自身を嘆き憂いていた。

 食事も喉を通らない。

 セルジオ家の人々は、敵国の皇女である自分に、一個人として接してくれる。

 憐みも蔑みも媚びた笑みもなく、ごく普通の人として接してくれるのだ。


 激しく動揺した、混乱したのだ。

 皇都での自分はなんだったのか?

 皇女とはなんなのか?

 自身の存在価値が根本からグラつく。


 自分が居るだけで、ゴートフィッシュ家に迷惑をかける。

 そんな彼女の帰る場所を求め、交渉するセルジオを見てしまった。

 彼等の事を嫌いに成れない。

 嫌いどころか、好きになり始めている自分が居る。


 その事に気が付き、落ち込み、憔悴してしまう。

 そうなるとまた心配される。


 嘆くシャロンは夜毎枕を濡らしている。

 自分に何かできないのかと・・・・泣いて泣いて、泣き疲れていつのまにか寝ている。


 しかし、戦争の火蓋が目の前で開かれようとしている。

 彼女の心はボロボロと砕け落ちる寸前なのだが・・・・目の前にいるセルジオの背中を見つめる。


 シャロンは何故だか涙が零れそうになる。

 シャロンは心の中でセルジオに尋ねる。

 『わらわは、セルジオ殿を頼ってもよいのですか?』

 その問いを声に出すことは、彼女にはまだできなかった・・・・

  

ということで、9:00に予約投稿 ポチ!

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