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いつもダンジョンに居ます  作者: ねむねむぴよ
第一部 四章 そして全ては砂塵と化す。
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160話


 カジミールの報告が終わった日から6日後、記念石柱の設置が終わった。

 そして、それを見計らったように、皇国からの降伏勧告が特使によってもたらされた。


 セルジオ仮館、執務室に特使を交えたいつもの面々が集う。

 この度はその場にサラとシャロンが同席を許されていた。


 「・・・・売国奴の女が居るとは・・・・」

 開口、特使はそんな言葉を吐き、高圧的に要件を伝えてくる。

 「我々は蛮国からもたらされた疫病、皇国の民草の病魔の蔓延を憂い、挙兵した。

 蛮国領地およびその周辺の平定をもって、病魔の原因を探りその賠償に当てる。

 この申し出は決定軍事事項である」

 高飛車に申し出る、特使も疫病に犯されているのか顔色が悪く咳き込み、こちらに魔力を帯びた疫病を撒き散らそうとしている。


 「お加減が芳しくないようですね、薬草茶は御口に合わぬかもしれませぬが、一服されてはいかがか?」

 元村長が同じティーポットから注いだ薬に口を付けながら、特使に飲み物を進める。

 尚、執務室の面々には同じ飲み物が既に配られ、口にしている。


 特使の面々が薬草茶に口を付ける。

 効果は芳しく、飲み物を飲みほした特使は深くため息をつき目を見張る。

 「当主より皇国側への薬草茶の提供を行う準備が有ります。

 要らぬ諍いを招かずとも、ゴートフィッシュ家と皇国には良き関係が築けると思いませぬか?」

 元村長が薬草茶に視線を落したまま、呟くように零す。

 「家宰殿、この申し出がもう少し早ければ・・・・いや詮ない事。

 皇国は賠償を求めて居るのです。

 疫病の根源を打ち滅ぼし、蓄えらえた巨万の富をもってそれを贖うと言う考えは、もはや変わりません」


 特使も薬草茶のお代わりに口を付け、体調が回復して行くのを感じながら口を開く。

 「皇国は・・・・嘗ての皇国と変わってしまいました。

 首脳陣は病魔憎しだけでなく、ダンジョンのもたらす恩恵を欲している。

 ゴートフィッシュ家がたまたまダンジョンを所有していた、運が無かったと思うしか無かろう・・・・」

 彼は、特使とは思えぬ感想を私的に述べている。

 「そうですか・・・・」

 「吾輩も軍人である以上、皇国の盾であり鉾である。

 民草の怒りや悲しみも理解したうえで、御当主の申し入れに心を動かされぬわけではないが・・・・」

 特使はちらりとシャロンを睨む。

 「・・・・身中に救う虫、バルザードは既にかなりのところまで貴国を腐らせてしまったようですな」

 元村長が一石を投じる。


 「・・・・」

 特使も心当たりがあるのか、口をつぐむ。


 「其方は10万の兵、こちらは1万にも満たない私兵のみ・・・・と、お考えのようですが侮られると痛い目をみますぞ?」

 元村長が攻守を変え特使に告げる。


 「フン、地の利があったとしても10倍の戦力差には抗えまい。

 双方既に覚悟は決まっておるという事であるな・・・・


 改めて伝う。

 皇国はゴートフィッシュ家に対し宣戦布告する。

 貴領の私兵の勇猛さを楽しみにしておくとしよう、ハハハハハ! 」

 偉丈夫の特使が愉快気に高笑いする。


 カジミールがムッとした表情を見せる。

 頭を振り、元村長が溜息をつく。

 ターニャは冷ややかに微笑み、シャロンは褐色の肌を蒼白にし唇を噛んでいる。


 沈黙が執務室を覆う。


 「あのぉ・・・・特使の方・・・・」

 何故か、セルジオが口を開く。

 席を立とうとする特使がセルジオを睨む。

 「セルジオです。 当主をしています」

 セルジオは執務室の当主席から立ちあがり、特使に視線を向け言葉を紡ぐ。


 「ダンジョンに兵を送り込むとどうなるか、噂をきいてませんか?」

 セルジオは特使の挙動を伺う様に尋ねる。

 「特使、皇国軍隊長グナール。 世迷い事の噂であれば聞き及んでいる。 それが何か?」


 「要らない話と聞き流しても良いです、もしもの事を考え・・・・

 シャロンが無実の場合、帰国できる様取り計らえますか?」


 特使が固まる。

 シャロンも冷や水を浴びたような間の抜けた顔をしている。

 そんな中、セルジオを知る者は朗らかに笑っている。


 「シャロンの罪が冤罪だった場合を考え、彼女を許せる、彼女を信じる者達を、軍の後方に下げ要らぬ手心が加わらない様に、取り計らえますか?

 無為に成らぬように、薬草茶を用意できるだけ準備させましょう。

 それでもだめですか? 」


 セルジオが真剣にグナールに問う。


 「・・・・合分った、その要請に答えられるかは答えられぬが、善処しよう・・・・」

 グナールは苦し気に答え、執務室を去って行った。


切りの良いところまで刻んでアップします。

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