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いつもダンジョンに居ます  作者: ねむねむぴよ
第一部 三章 再出発
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154話


 過去、王国を訪れる皇国の使者は古強者を思わせる武人だった。

 単騎敵陣に乗り込み、使命を果たしあわよくば生きて帰る、そんな使命を帯びた者が軟弱な若者のはずはない・・・・のだが、そこに居る人物は褐色の肌に緑の瞳の見目麗しい女性、しかも銀色の髪は縦ロールの貴族の御令嬢で、さぞ長い旅程で大変であったであろうと想像に難しくない髪形をしていた。


 「第三皇女、シャロン・クロード・マルヌである、当主にお取次ぎを願う。」

 白い馬上で大きな胸を強調しお嬢様オーラを漂わせる人物の後ろには侍女と従者と幾ばくかの近衛兵を従えセルジオ仮館の前で自ら口上を述べるあたり、かなりの跳ねっ返りのお姫様の様だ。

 「私、ゴートフィッシュ家の家宰、レイクウッドと申します。

 皇国の姫君が当家にいかようなご用向きか、取次ぐ前にお知らせいただけねば私が叱責をうけます」

 元村長が恭しく慇懃に答える。


 「むっ・・・・」

 何故か元村長の視界に、石鋤を肩に掛けたセルジオがポクポクとダンジョンに向かって歩いている。

 『くぅ、あれだけ執務室から出るなと言ったのに、面倒だから逃げたな?!』

 元村長は心の中で叫ぶ。


 なんの気負いもなく使節の背後をぺこりと会釈して通り過ぎようとするため、おもわず声が漏れてしまい、使節の面々も元村長の視線を辿り、農夫の様な人物を見定めた。

 「随分、大らかな家柄よのぉ、家宰よ農夫が地に侍らず素通りしおったぞ?!」

 皇女がムッとした表情で馬上から語気荒く元村長を責める。


 「ハ・・・・ハハハ・・・・彼の者が当主であります。

 皇女様の来訪を存じ上げぬ故、死者の埋葬に向かう所のようです」

 元村長は、もう隠し庇うのが馬鹿らしくなったのか、セルジオの正体を明かした。


 「な・・・・なんじゃと?! 彼の者が当主とぬかすか?!

 あっ!? 待て、いや待たれよ!!」


 セルジオは面倒臭さそうな人物と見たのか、全力で逃げる。


 「セルジオ殿待たれよ!!」

 皇女が無理やり馬の鼻を向けるが、供回りが儀礼の配置についており馬脚が乱れる。


 「いや、俺には用事無いですからぁ!!」

 セルジオも答えずによい問いかけに、まじめに答えるが止まらない。


 「わらわは、戦争を回避しようと、独断で乗り込んだ身であるぞ!

 わらわの話を聞いても損はあるまいぞ!! ハッ!!」

 皇女は巧みに混乱を抜け、セルジオの後を馬で追う。


 「そこのレイク何とかに話してくれたらいいから!!」

 セルジオも追われると更に逃げたくなるのか、もう一心不乱に走っている。


 「ぬしは、それでも当主か?!

 遠方から遥々訪ねて来た、皇女をそのようにあしらうとは如何ぞ?!」

 皇女も向きになって追いかける。


 ズザザザザザ 「きゃぁぁ!!」

 セルジオはダンジョン入り口を石鋤で払い、あと一歩でダンジョン内に潜り込もうとした瞬間、後方で落馬する激しい転倒音に振り返った。


 最近随分薄く成ったが、ダンジョンの瘴気に中てられた馬が泡を吹いて倒れ、皇女が空を舞う姿が目に留まる。


 「きゃぁぁぁぁあぁぁ・・・・あっ?」グキッ!!?

 放物線を描きセルジオに向かって飛ぶ皇女。

 セルジオも思わず石鋤をもったまま受け止めようと腕を広げる。

 しかし、勢いがかなりついていた皇女の放物線は浅い弧であった為、空を滑るようにセルジオに向かってゆく。

 そして子猿が親猿の背に張り付くような姿勢のまま空を飛び、セルジオの顔面に股間からボディープレスをかました。

 セルジオの首から嫌な音がする。

 セルジオの背が大きく仰け反りながらも踏ん張るが、頭がすっぽりと皇女の乗馬服の裾から彼女の服の中に入り込み、両腕がわたわたと空を掻いている。


 「ひ、ひやぁぁぁあああぁぁ!!!不埒者!!!!」

 軽くは無いであろう体重を全て肩から上で支えているのだが、皇女が激しく暴れるのに耐えきれず、セルジオは躓き後ろにゆっくりと倒れて行った・・・・

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