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いつもダンジョンに居ます  作者: ねむねむぴよ
第一部 三章 再出発
183/256

153話


 皇国の進軍情報。

 セルジオが、その事を聞かされて既に半月が経とうとしていた。

 だがしかし、彼の周囲はいたって平常運転、領内に変わった動きはないように見える。


 まったく変化が無いわけではない。

 強いて上げるならば、必要性の点から新ダンジョンの入植村の工事が優先され人の流れが変わった事位だろうか。


 それに、カジミールの一門は非常に優秀であった。

 今では、ニーニャの商会に所属する魔法使い(その殆どはカジミール一部に吸収されているのだが)に替わり、ダンジョンから回収された遺品の全てを【ゴートフィッシュ魔法院特別鑑定書】なる物を発行し、その鑑定の質の高さから、売買される価格が更に跳ね上がっていたりする。


 「それで今日は黒門先の探索と、混浴温泉のお披露目を兼ねた視察かな?」

 早朝の暫定執務室にはセルジオの仲間が既に屯っており、建て方担当のジードにセルジオが確認する。

 「おう! いい物が出来たぞ! 戦火にさらされるのが残念な出来だ・・・・」

 かなり残念そうなジードに、まぁまぁと慰めるアレク。


 「セルジオ殿・・・・朝が早いのでこんな時間しかお会いするのが叶いませんので押し掛けましたが、新ダンジョン内に教会の建築を認めて頂きたいのですが・・・・」

 「ん?! まだ作ってなかったの? 別に構わないけど?」

 「そ、そうですか?! 急ぎ最寄りの枢機卿等に打診いたします!!」

 アレクの顔がパッと明るく成る。


 「え? アレクさんの教会じゃないの? もういっその事アレクセイ教会でいいんじゃないですか?」

 セルジオがメイドに渡されたサンドイッチを頬張りながらアレクに尋ねる。

 「え、あ、いや教会も色々面倒でして・・・・

 その辺りはちゃんと話を通しておかないとならないのですが・・・・」

 「いいんじゃない?セルジオちゃんが良いって言ってるんだから早い事建てちゃっても♪」

 クディがアレクに、「書簡はこっちから送っておくから進めちゃいなさいよぉ」などと言いながら予算の話をジードと元村長で始めてしまっている。


 「セルジオ様、新たに観測所の建築もおねがいしたいのですが・・・・」

 今度はカジミールが口を開く。

 「ん? それはなんですか?」

 「気象の調査と、星の運行を調べる観測所を墓地付近に設けていただきたいのですか・・・・」

 「え、あぁ、元村長さん・クディさん、何か支障はありますか?」

 セルジオが訪ねると、別に無い、土地は余ってるとの回答だった。

 「じゃ、良いですよ。 詳しくはジード達と打合せしてください」

 相変わらずの丸投げ政策だが、魔法院は周辺国随一との噂が流れ始めており、時折名のある魔法使いが土下座して魔法院の所属を望む姿を目にする事がチラホラあったりする。


 「それと一部魔法関連の成果が出ております」

 カジミールも朝食のサンドイッチをもらい受け口に運んでいる。


 ジャラララ・・・・

 セルジオの身に着けているものより小型のメダリオン。

 ゴダール制御紋の刻まれた簡易メダリオンである。

 カジミールは、十数個ほどのそれを革袋の中からテーブルに広げた。


 「これで、雑務は捗りましょうな」

 老エルフが紅茶でサンドイッチを流し込み一息つく。


 「「「おぉ・・・」」」

 「これは凄いの、瘴気に耐性が在る者が単独作業も可能になるか?」

 「そう成りましょうな・・・・」

 「うむ、当面は人員を厳選し配布するとしようかのぉ」

 元村長が顎を撫でながら物思いにふけっている。

 そして、ハタと思い出したように皆に目を向ける。


 「そうそう、皆に伝えておこうかの。

 皇国との各地の貴族との間で、散発的な戦闘が起きておる。

 当家の現状はそこまでではないが、影戦といえる状態かのぉ、概ねこちらの優勢で事は進んでおる。


 具体的には、カジミール殿の発案で敵兵糧を腐らせる倒置型魔法を設置しておってな?

 美味い具合に掛かってくれるもので、随分疲弊して居るようだ」

 実際、皇国軍の兵糧で腐りにくい物として挙げられる酒は酢になり、干物はカビが浮く。

 食べれば腹を下だす。

 ターニャが事前に通達を行った進軍経路の領主の土地から鹵獲した食料には毒が入っており、食べられるが明らかに体力が減退する、ゴートフィッシュが仕掛けられた疫病魔法の改良型が食料に仕掛けられているのだ。


 敵の一般兵には申し訳ないが、既に戦争状態である。

 それでも進軍速度が落ちていないのは、部隊を預かる敵将の敏腕ぶりをうかがわせるのだが・・・・


 そんな最中、セルジオ等の下に皇国からの使者が訪れるのだった。

 

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