151話
4章に入ります!
カシミール一行が傘下に加わり3日後、皇国進軍の知らせが届いた。
ゴートフィッシュ家の面々は協議の上各対策を既に実施中であり、想定される工作にも万全の態勢で挑んでいる。
知らせが届いてさらに一週間、たいした変化もない・・・・イヤ、変化は有るのだが・・・・
セルジオ村開闢以来の人口増加、人口爆発といえる大量の流民がゴートフィッシュ領に押し掛けてくる。
殆どが近隣地区からの移住になるのだが、当然その中には曲者が混じるようになる。
犯罪者や盗賊、野党は当然の事、各国の間者、どこをどう拗らせたか分らない殺人鬼の類まで、まるで選り好んで、纏めてごっそりやって来ていた。
「クディ殿、レイクウッド殿、ついに想定されていた患者が現れました」
アレクが付箋がやたらと付いた魔法書(大巻物)や巻物を小脇に抱え執務室に顔を出した。
「アレクちゃん、それでどんな物なの?」
元村長と打ち合わせ中のクディがアレクに声を掛ける。
「これですよ、これ・・・・」
魔道書の大巻物を下ろし、ゆっくりと床にころがし付箋を付けた場所を指し示す。
「あぁ、なるほどねぇ ペスティア疫病を真似た病魔の魔法ね・・・・
で、教会で対策は可能なの?」
「少々値の張る触媒さえ在れば対抗魔法と治療薬で感知する魔法ですね。
そして、その触媒は新ダンジョンでとれるものですから、慌てることもないでしょう」
アレクがニンマリと笑う。
「そうか、アレク殿・・・・
必要な費用が有ればセルジオ金貨でもゴダール硬貨でも好きな方で決済させるからのぉ?
何時でも、ゆうてくれ」
元村長もニンマリ笑いながら答える。
「感染者は打ち合わせの通り、療養所で完治確認後、新ダンジョン側に隔離でよろしいでしょう。
当初から、それが目的なのですから問題無いでしょう」
アレクが罹患者リストを二人に差し出す。
「こんなものなのか? もっと、こうドバーッと感染しておるものかと思って居ったが・・・・」
「そうねぇ、40名程?って、もしかして感染元を押さえたってことかしら?」
元村長とクディが、頭を突き合わせて感染者の身元調査結果を合わせて確認している。
「さ、さすがクディ殿ですね、その通りです。
ターニャ様の伝手で既に魔法を使用したと思われる者は特定されましたが・・・・」
「はいはい、口封じねぇ・・・・」
「ハ、ハハハハ・・・・わ、私の報告する必要が・・・ハハハハ」
アレクが微妙に落ち込んでいる。
「そう落ち込む必要は無かろう。
この報告書があれば随分助かる。 必要な物は至急揃えさせる、明日には揃うだろうのぉ」
報告書の巻物を見ながらフムフムとクディと共に頷いている。
「あぁ、アレク殿。
そなたには先に伝えて置くが・・・・皇国がこの地に向かっておるのは間違いないようだ。
到着は約・・・・二月後。
避難計画と合わせ、ダンジョンのゴーレムや黒いスケルトンの利用を含めて目下検討中だて」
元村長の言葉に、アレクが目を剥く。
「あ、あのゴーレムを再び使うのですか? セルジオ殿は何と言っておられるのでしょう?」
「ん? まだ話して居らんがのぉ?」
「えぇ、そこは大事なところでしょ? レイクウッド殿!?」
「はいはい、アレクちゃん? 他にもまだいろいろやんないといけないしぃ、そっちが煮詰まってからでも十分間に合うから、セルジオちゃんにはそれまで楽しくお仕事しててくれたらいいの♪」
相変わらず、当主に内緒でいろいろ準備が進んでいる様である。
「まぁ、もしもの事を考えて、魔法薬は多めに準備しておくかのぉ?」
「そうねぇ、それが良さそうじゃない?
ターニャさんとニーチャちゃんにも配っておけば良いかしら?」
「うむ、アレク殿? 至急、増産に取り掛かって頂きたいが良いかの?」
「は、はい、承知しました。 ・・・・あれ? なんだか、私もセルジオ家の者のように・・・」
怪訝な表情で頭を捻りながら、執務室を辞し修道会の元へと駆けていく。
アレクは教会関係者である。 一応、セルジオ家の者ではない。
「それでじゃが・・・・ん?」
執務室の戸が勢い良く開きニーニャが駆けこんでくる。
「あああああぁぁあぁ うっとおしい!! カジミールと愉快な仲間たちは何とかならないの?」
執務室のソファーにドサリと座り込み、鼻息を荒くしている。
「どうしたのよぉ、ニーニャちゃん?」
「あっクディさん、もう、聞いてよぉ・・・・
カジーミルのとこの学徒さん達?が入れ替わり立ち代わりやって来ては、昨日のアイテムはどれだ?
見せてくれ? 分解して調べたいから貸してもらえないか?
ああぁぁぁ!! 私は調査機関の人じゃなくて、商人なの!
アイテムの鑑定は、だいたいで良いの!!
はぁ・・・・」
「・・・・な、なるほどのぉ、でカジミール殿は?」
村長は学徒の暴走を許している元凶に付いて尋ねる。
「あ、カジミールさんは、ここ数日、セルジオのストーカーしてるわよ・・・・」
メイドが差し出す紅茶を受け取り、一気に飲み干し一息つく。
「・・・・カジミールさんにも話を詰めないといけないんだけどねぇ・・・・」
クディが腕組みしながらつぶやいた。
「まぁ、できるとこから詰めて置けば良かろうて」
クディと元村長の打ち合わせは続くのだった。




