145話
セルジオ仮館の警備を引き継ぎグレゴが、クディとニーニャも新ダンジョン探査に合流した。
そして、なぜここに居るのか良く解らないアレクとサラが、セルジオ達を見ている。
「・・・・新ダンジョンの入り口に辿り着いたのはいいけど、皆はどうしてここに?」
「わたしぃ?お目付け役、ニーニャは遺物調査担当ね」
クディとニーニャがセルジオに手を振る。
「ハハハ、セルジオ家近衛隊長の俺は、セルジオ様の護衛役だ!」
グレゴが胸を張る。
「私は怪我人が出た時の救護役ですよ、セルジオ殿」
アレクも胸を張る。
「わたくしは・・・・セルジオ様のお側に・・・・・ゴニョゴニョ・・・・」
サラは顔を真っ赤にしてモジモジする・・・・いろいろと面倒なので軽く会釈してスルーする。
まぁ、厳しかったら帰るだろうと、セルジオは適当に割り切る。
裏山の山頂付近に出現したダンジョンの入り口は、遠目では判らなかったが、意外に大きく、馬車が何台も並んで通れる広さだ。
開口部には扉は無く中は、広い空間となっている部屋の中央に道標のような石柱しかない。
壁と床接合付近は拳大の穴があり、そこから常時暖気が出ているため部屋自体はとても暖かい。
ニーニャが石柱を調べている。
「たぶん、何かの装置だと思うけど・・・・死んでるのかしら?」
ニーニャがペタペタ触りながら、周辺の文字を読もうとしている。
「なんて書いてあるのですか?」
セルジオがニーニャの傍らでのぞき込む。
兵士や荷役は暖気にあたり休息をとっている傍ら、ニーニャに付いてきた魔法使いが暖気の吹き出す穴を調べている。
「それが、見た事無い文字なのよね・・・・神聖文字かしら」
セルジオもニーニャに習い、石柱に彫り込まれた文字を触る。
パリリ・・・・
セルジオが触ると電流が青白い閃光を放ち石柱を駆け抜ける。
「痛ぅ・・・・」
セルジオは手から頭まで突き抜ける痛みに顔を歪めた。
「大丈夫か!?」
グレゴとクディが駆けつける。
アレクは念の為と回復の詠唱を始めていた。
「いや、ちょっと驚いただけ・・・・あれ?」
セルジオが首を傾げる。
「どうしたの?」
ニーニャや他の面々も心配そうにセルジオを見つめる。
「・・・・なんか、この文字読めるんだけど・・・・」
「「「へ?」」」
セルジオは石柱の文字を触りながら、文字を声にだして読むが、いつも使うものとは全く違う言葉だ。
『時空を跨ぐ門を開き、此は彼方へ彼方は此へ繋ぐなり。行きつ帰りつするものは唱えよ、【ゲート】と!』
セルジオが声に出すと同時に、部屋一面に薄布のような淡いベールが掛かる。
セルジオは不思議そうに自分の手を見ると、此処にあるはずなのに、手の向こう側が透けている。
兵士や荷役も驚いて立ち上がり、部屋の中央に集まり出した。
光のベールがゆらゆらと揺蕩う。
自分の存在が希薄になったように見えるが、意識はしっかりある。
ベールの光が次第に強くなり部屋一面を覆う。
皆は恐れ身を固くする。
そして、再び薄くなりベールは霧散した・・・・
「・・・・???」
サラが入り口をみている。
「どうしたのぉ?」
クディがサラに問う。
「日の光があちらから・・・・」
ダンジョンの入り口から、時間的におかしいな方角から日の光が射している。
一同はダンジョンの入り口に集い絶句する。
少し高台にあるダンジョンの入り口。
入り口には変化が無いのだが、そこには幾つもの岩山とジャングルを思わせる密林が広がり、南方を思わせる獣の鳴き声が響いていた。




