144話
新雪が降り積もる斜面を屈強な兵士と荷役が馬と自身の背に多くの荷を乗せ斜面を登って行く。
目指す新ダンジョンの入り口は1km程先に見えているのだが、道を切り開き進むという困難なものであった。
ジードが職人に測量を示唆し、雪を踏み固めながらセルジオの側らに歩み寄る。
「やっぱり時間がかかるな、本格的な調査は夕方からになりそうだ」
「そうだな・・・・」
セルジオも周辺の雪を石鋤で掻き分け、休憩スペースを確保する。
先頭の兵士集団は一列に並び、雪を踏み分けては幅を広げる
後続が進む道を確実に切り開いているが、その速度は牛歩といったものであり、目的地には当面到着しそうにない。
先頭の兵士が交替し、こちらに下がってくる。
「ハァハァ、セルジオさん、先の噴出で周辺の雪が緩くなってます。
樹木が少ない分雪崩の恐れもあるのですが、先は大分地熱で溶けいますので、ハァハァ・・・・
もう少し進むと楽になりそうです」
「ありがとう、危なそうなら日を改めてもいいから慎重に進めて下さい」
「ハッ!」
セルジオ家の私兵は敬礼をし、軽い休息をとると軽食と飲み物を持って再び先頭集団へと戻っていく。
高所から見ると領地が一望できる。
眼下の先には、白い世界の中、青い空を写した湖が静かな水面に日の光を反射させとても美しい。
村周辺の馬車溜り、その周辺の幕舎から幾筋もの白い煙が上がり、村からセルジオ仮館に向かう道にはゴマ粒の様な馬車の隊列が何本もの糸の様に繋がっている。
「凄い活気だな・・・・」
ジードがカップに入ったあつあつのシチューをもってくる。
「ほんとにすごいな・・・・」
見ている端から、箱物の建物が組み上がってゆく。
「あとどれくらい建てるんだ?」
「ん? あぁ、流入してくる人が多くてな、向こうの斜面一帯は住宅地予定地だ」
指さした方角の森の木が、伐り出されている。
その傍らで生木が処理され、燻されて無理やり乾燥させられている。
いかんせん木材の供給が間に合わず苦肉の策らしいのだが、セルジオには良く解らず凄いなぁといった感想しか出て来ない。
「王国と隣国から人々が入植してるんだ、食料確保もやばいから、クディと元村長が頭をかかえてたぞ」
シチューを啜り、スプーンで具を口に運ぶジードの表情は険しい。
「そうなのか・・・・何とかなるといいんだけどなぁ」
セルジオもよう分らないなりに、食料が足りなくなることは想像できるので、リリルみたいな子供が飢えるのを阻止したいとは考えている。
「そこで新ダンジョンなんだろ? 魔物の素材はどこの国でも欲しがるから物々交換でも食料確保できるだろうから・・・・ってそう言うつもりで急いでるんじゃないのか?」
きょとんとするセルジオにジードが『まじかよ?!何も考えてないのか?!』といった視線を向ける。
「え? いや、危ないダンジョンなら閉じないと拙いと思っただけなんだけど・・・・」
その言葉に、ジードは何とも言えない表情でセルジオの肩をポンポンと軽く叩くだった。




