143話
黒いスケルトンの側に有った冒険者の遺体は五つ。
死霊憑きは全てスケルトンの手により屠られており多分安全だろうという判断の下、セルジオの隠れ家にまた一体、置物が増えていた。
ゴーレムとその残骸、大きなゴーレムの頭部のテーブル、黒いスケルトンの立像に緊急用の食料と酒気の強い酒瓶。
変化が無いのを確認し、カンテラを揺らしながら黒門へ向かう。
「セルジオさん! 下段、3か所の黒いスケルトンの残骸は動かし終わりました!」
「ありがとう、じゃ手分けして袋に入れて行こう!!
遺品を絶対とったらダメだから! わかってるよね?」
「「「はい!!」」
約30名程の、男衆や兵士、それに冒険者風の人員が、声を合わせ返事をする。
「今日は午前中まで!! 終わったら、食堂で一杯つけるからその心算で頑張るように!!」
「「おぉぉぉ!!!」」
気合も十分である。
・・・・
ダンジョンには代車も持ち込まれ、流れ作業でダンジョン入り口に遺骨が運び出されていく。
「今晩の幽霊の数が凄い事に成りそうだなぁ・・・・この調子だと一か所10日位か・・・・」
午前中だけで数百体程の遺骨を埋葬できそうな勢いに少し元気がもどるセルジオ。
ダンジョンの管理者も、悪さをするわけではないので大目に見てくれているのだろう。
何事もなく午前の作業が終わり、食堂へ戻ると給仕たちの様子がおかしい事に気が付く。
「セルジオ様少し宜しいですか?」
「・・・? どうしたんですかレラさん」
レラが困った顔でセルジオを呼び止めた。
「実は、あそこをご覧頂けると・・・・」
増築された食堂の一番奥の暗がり。
満席の店内にも関わらず、周辺だけだれも座ろうとしていない。
「予約席?」
「違います! もっとよく見て下さい」
レラに促され目をこらすと・・・・
「あっ!・・・・幽霊? 昼間から?」
「はい、新年明けてからだんだん増えてるんです」
そこには幽霊達の酒盛りをする姿があった。
「あれ、何を飲んでるの?」
「・・・・一応お客様? だから店の酒と料理と出してるんですが・・・・」
幽霊が実物の酒瓶を触れると、そこから瓶の形をした靄が浮き上がり、それを煽る幽霊。
食事も同じように、実物から何かが湧き上がり、楽しそうに酒盛りをしている。
「あれ・・・飲み食いしてるんだよね?」
「はい、あの後実物は残るのですが・・・・
お出しした全ての物が気の抜けたというか、薄味というか・・・・そんな感じになるっていうのです」
「?いうのです?」
「はい、私は怖くて食べる気がしないのですが、豪胆な子が食べるとなんな感じだそうです。
もう、お客様に出せないので賄いに廻すのですが・・・・」
「食べる子がいなくて余らせちゃうんだ・・・・」
「いいえ、全て喜んでみんなの胃袋に収まってます・・・・」
「はい? 怖くないの?」
「なんだか、食べると調子が良くなるとかで・・・・」
「・・・・そ、そうなの・・・・じゃ、何が問題? 代金を払わないとか?」
「・・・・いいえ、それも無いです。
幽霊が消えるときに、しっかりお金を置いてゆきます」
「えぇ?! お金払っていくの?」
「はい・・・・それがこちら・・・・」
レラが見は、隣国の主要通貨を懐から出して見せる。
「・・・・あれって、隣国の兵士ってこと?」
「はい、どうもそのようです・・・・」
「・・・・じゃ、遺族の人も、もしかしたら死者に合えるかもしれないのか・・・・」
喜んでいいのか悪いのか、直良く解らないを相談され頭を掻くセルジオは、みんなに相談(丸投げ)しよう・・・・そう思うのだった。




