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いつもダンジョンに居ます  作者: ねむねむぴよ
第一部 三章 再出発
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142話


 祝賀会から数日後、ターニャの発言の通り14名ほどの人員が黄昏時にセルジオ仮屋敷に到着した。


 花屋の制服を着たサラはセルジオを見るなり飛びつき大粒の涙を流している。

 そんな娘を困った顔で眺める王妃も、その姿は花屋の従業員の服装であった。


 「受け入れの準備は整っておりますが、何分人手が足りない新興の公爵家で、皆さまにも何かしらのお仕事をお願いしなければなりません・・・・」

 レラが申し訳なさそうに王妃に頭を下げる。


 「構いませんが、私やサラティアを自由に行動させてもよろしいのですか?」

 王妃はレアを品定めするように口を開く。

 「はい、セルジオ様よりそのようにと申しつかっております」

 レラが頭を下げたまま返答をする。

 「・・・・そうなの? 懐が深いのね・・・・」

 王妃もそれ以上踏み込まない。


 「助けて下さった花屋の子が言って居りました。

 私は、公爵家のお花の管理をして欲しいと・・・・そんな事位しかできませんがよろし?」

 「はい」

 「では、私の事は花屋の使用人エリザベス。 ベスとでも呼んで下さい」

 「では、そのように・・・・ベス様、ターニャさんとお会いに成られました?」


 「実はまだなのです。ご案内頂けますか? サラティア!ターニャ様にお目通し頂けますよ」

 「はい! お母さま  では行って参ります」

 サラは涙を拭い、セルジオに微笑み小走りで去って行った。


 「モテル男は大変だなぁ・・・・さすがセルジオ当主様だ」

 偶々居合わせたジードがセルジオをからかう。

 「そんなんじゃないだろ?きっと・・・・カールさんがどうなったかまだ分かってないんだ、それは心配にもなるだろう?」

 「そうなのか? 違う気もするが・・・・

 そうそう、温泉だが結構な熱さの湯が出ててな、風呂を作れそうだが、どんなのがいいか聞きに来たんだ」


 「風呂か?」

 「あぁ、クディとニーニャあたりが言うには混浴で良いんじゃないか?って言うけどさぁ・・・・」

 「なにか拙いのか?」

 「拙いだろ? 裸じゃないにしても女子と一緒なんだぞ?」

 「・・・・良く解らんが、元村長とターニャさん辺りに聞いて見てもよくないか?」

 「・・・・わかったそうしてみる。 要はお任せって事でいいんだな?」

 「あぁ、俺にその辺のことは解らんから全権委任でいい」

 「おう、任された! じゃ行ってくる!」

 セルジオはジードの後姿を見ながら、男湯でもクディさんに追い回される姿しか想像できない。


 「さて、ダンジョンの片付けの進捗を見た後、新しいダンジョンの下見かぁ・・・・なんだか最近、農作業してないなぁ・・・・」

 少し寂し気なセルジオはいつもの服装でダンジョンに向かうのだった。


 仮館の周辺は大々的な基礎工事が始まっていた。

 幾つもの大きな石材が馬や牛で引かれ盛土の上を動いて行く様は圧巻である。


 犯罪者の労働力のおかげもあり、ゴートフィッシュ領周辺の防護壁も随分様になってきている。

 他にも並行して木造建造物も建て方が進んでおり、館周辺の賑わいは、毎日お祭りといって良い喧騒を醸していた。


 最近の子供達の流行りは当主のまね。

 石鋤を親にねだりそれを持っては残土の山をほじくる姿があちこちに見受けられる。

 その中で異彩を放つリリルの姿はいうまでもなく、着実に友達が増えているのをセルジオは微笑ましくみるのだった。


 潤沢な資金でダンジョン入り口から見える墓所も墓石へと変わりつつあり、日々異常な速度で景観が替わってゆく。

 隣国からの弔問団が姿かたちもない亡骸を弔う唯一の方法が、墓所への礼拝でしかなく、少し離れた場所にある敵軍墓地にも多くの花やお供え物が置かれ、涙に暮れる遺族の姿も見える。


 「・・・・なんか持って帰れる遺品でもあればいいのにな・・・・」

 肩を落とす遺族の姿に、セルジオはそんな呟きをもらしながら、ダンジョンに潜った。

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