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いつもダンジョンに居ます  作者: ねむねむぴよ
第一部 三章 再出発
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141話


 祝賀会当日の夜、セルジオ仮館2F執務室で緊急対策会議が開かれていた。


 「今日は特別に、ターニャ婆さんに御出で頂いておる」

 元村長に紹介された、元村長より年上に見える細身の女性が一歩前に出る。

 年齢の割に、背筋が伸び歩き方もとても若々しい、花屋の制服を着た立ち姿もとても年寄に見えない。

 手足と首筋が長く色白、しいて上げる欠点といえば肌の張りが年齢を伝えているくらいだ。

 若いころはレシアを凌ぐ美人だっただろうと容易に想像できる、そんな人だった。


 「私がターニャです。 みんな婆さん婆さんっていうのよ、失礼しちゃうわ・・・・」

 頬に手を当てて悩まし気なシナを作る。

 「実際に孫まで居るのだから、婆さんでも間違いな・・・・いや、なんでもない」

 元村長がターニャに睨まれ、言葉を飲み込む。


 「これでもまだ、時々ラブレターを貰うんだからぁ、ミオール(元村長)はバラしちゃ、ダ・メ・!

 ・・・・あら、ごめんなさい私の事ばかりで。 えっと、座ってよいかしら?」

 レラが紅茶セットとお茶菓子をメイドから受け取り、彼女のカップに注ぐと「またあとでね♪」とターニャが手を振る。


 紅茶の香りが執務室に広がる、白い湯気が一筋立ち上がり、香りを楽しむ様にターニャが口に運んだ。

 「レラのお茶は美味しいわね・・・・そうそう、肌の色の濃いお客様がねお花を買われていったとき、どうも故郷に王国の商人が拙い魔法を持ち込んだらしいの・・・・病気になってそれがうつる魔法、気になるでしょ?」

 セルジオの顔色が変わる。

 「あら、セルジオさん怖い顔しちゃやだ、フフフ、おばちゃんの雑談よ聞き流してちょうだいね♪

 なんでも王国の商人は随分使用人を抱えているらしくで、誰かを呪ってその魔法を使うと、周りに広がっちゃうらしいの、それを治めるために薬で大儲け。

 魔法も薬も出所が同じって酷い商売よね、私も珍しく頭にきちゃったわ。

 しかも、その商会の丁稚がこの村に”また”ちょっかいを掛けて来てるみたいなの・・・・

 そして今日はあんなやんちゃでしょ?! もうプンプンなのよ!」

 拳の背を額に当てて頬を膨らます姿が、あざとい。


 「ほう、もう面が割れたのか?」

 レシアが尋ねる。

 「残念だけど、三つ上まで遡ったとこで闇の中かしら、でも南の国の匂いがするわね。

 ・・・・それと、セルジオ君にも何かあったわね・・・・あ!そうそう。

 王国の花屋さんを畳もうと思うの」


 「え? あ、はい・・・・」

 「それで、現地のスタッフがドタバタしちゃって・・・・

 現地採用の子達とこっちに向かってるはずなのね。

 で多くて15人くらい?

 セルジオ君の所で雇ってくれないかしら?」

  

 「えぇ、元村長さん大丈夫でしょ?」

 セルジオが元村長を振り向く。

 「あぁ、構わんが・・・・何ができるのだ?」

 目の合った元村長はターニャに尋ねる。

 「そうねぇ、もともと花屋の子と、レシアさんが連れてきたホビットの子と・・・・

 サラって子とそのお母さんと・・・・その家の子達だから、専門の仕事はばっちりなはずよ?」

 ターニャがウインクをする。


 「その前に、どうしてターニャは・・・・って、聞いたらいけないのかしらぁ」

 クディが驚きながら訊ねる。



 「・・・・お願いばかりしてるから少しだけ教えちゃうわね。

 こちらでセルジオ君が大変だったころお城でもお家騒動が起きたみたいなの」

 クディの目が見開き、ニーニャが手で口を押える。


 確かに、クディとニーニャは元村長と協議の上、ターニャの活動資金援助を行った。

 しかし、情報の精度と鮮度とその後の実行力がどう考えても異常なのだ。


 「セルジオ君が悲しむと可愛そうだから、サラちゃんは助け出そうと思ってたんだけど・・・・

 現地の子が頑張っちゃって、侍女と王妃も連れ出しちゃったんだって・・・・フフフ♪

 今度臨時ボーナス出してあげないといけないわね・・・・

 それが、ついさっき手元に届いたお話よ、明後日にはみんな着いちゃうからよろしくね」

 再びターニャがセルジオにウインクする。


 セルジオは立ち上がりターニャに深くお辞儀をする。

 「あら? セルジオ君どうしたの?」

 ターニャも驚く。

 「ターニャさんが、助ける必要もない人のはずのサラとその周りの人を助けるために・・・・

 その都の花売りの子達も危ない目にあったんじゃないですか?

 それなのに、できるだけ助けてくれてありがとうございます。

 俺は何もできないけど、元村長さんなら何とかしてくれるから、俺からも元村長さんにお願いします。

 サラとサラの母さんと侍女を助けてあげてください」


 ポカーンと目を見開くターニャのをみて元村長が笑う。


 「ブッ、ハハハハハ ターニャのそんな顔久しぶりだな、お前の旦那がお前に告白したときくらいか?」 「ミオール! ぶっ飛ばすわよ!」

 元村長が、怖い怖いと言いながら首をすくめる。

 「まぁまぁ、この件は任された、安心せい。

 それで、こちらの賊はどうするかのぉ・・・・」

 「それなら、その内にうちの子らが見つけちゃうと思うからそしたらまた知らせるわね♪」

 「あぁ、ターニャがそういうなら間違いなかろうて・・・・」

 元村長は頷きながらセルジオの肩を叩くのだった。


 部屋の隅でひそひそ話す声がする。


 「・・・・クディさん聞いていい?」

 「なによ、ニーニャ、私にも解んないことは沢山あるわよ?」

 「ターニャさんって、早馬でどんなに急いでも丸2日の距離の話を何で知ってるのかなぁ・・・・」

 「だから知らないって・・・・」

 「彼女って魔女?」

 「魔力は感じないわよ?」

 「ターニャさんって謎過ぎない?」

 「いい女って秘密が多いものよ、詮索しない方がいい気がするわね・・・」

 「そ・・・・そうね、解ったわ・・・・ターニャさん怖・・・・」


 ニーニャとターニャの目が合う。

 ターニャはにこりと微笑むが、ニーニャは背筋に悪寒が走るのだった。

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