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いつもダンジョンに居ます  作者: ねむねむぴよ
第一部 三章 再出発
169/256

139話


 パタパタパタ・・・・

 切れたロープが暴れながら落ちてゆく。・・・・その音しかしない。


 「「「「・・・・」」」」

 賊が注意深く窓から下を覗いた。


 ピン!

 鉤ロープの鉤金具が少女が波打たせたロープのうねりで外れ、そのまま落ちてゆく。

 賊が覗き込む窓からは、彼女らが一つ下の階の窓枠に鉤ロープを掛け、今地面に着地した姿だった。


 殺気立った偽装兵と少女の目が合う。

 そんな視線を正面から受け止め、花の様ににこりと微笑み(営業スマイル)返す。

 しかも、御愛想とばかりに、少女は投げキッスを投げ侍女達を追い生け垣の先へと消えて行った。


 実は都の花屋でも一位二位を争う看板娘、その子が視線を合わせての営業スマイル&投げキッス。

 その時、若い偽装兵の何人かは、『いいかもしれない・・・』と思ったのは仕方ない事だった。


 ・・・・


 「彼女たちは大丈夫かしら?」

 サラが、階下で身を受け止めてくれた小柄な少女に尋ねる。

 「えぇ、姉さま達は私よりずっと手練れさ」

 蓮っ葉な物言いのレブラーシカを思わせる容姿の少女が答える。

 「早く、お母さんを連れて向こうへ行きな! 侍女達が降りて来るよ!」


 ドン・・・・

 背後に土嚢が落ちてくる。


 隣では王妃が地面に降り立とうとしている。

 「ほら、あんたの母さん降りてきたよ」

 ホビットの少女が視線を向けると、目隠しされた王妃が情けない悲鳴を上げながら降りてくる。

 着地点近くで黒いローブの人物が、ひき綱を手繰り、王妃の着地の早さを緩和させ受け止める。

 「ひゃぁぁぁぁ!! あっ?!」


 目隠しを外され、よろよろとサラに歩み寄る王妃。

 「サラティア、貴女は何ともないのですか?」

 「はい、お母様ダンジョンに比べたら全く怖くありませんでした」

 「あらまぁ、いつの間にそんなお転婆な娘になったのかしら・・・・」

 「早く退いて!」

 血の気の引いた顔で世間話を始める王妃を、少女が急かす。


 一人、また一人と侍女が降りてくる。

 目隠しはしておらず、腰の砕けた侍女を抱き上げ母と一緒に、手招きをされる生け垣の方へ走り出した。


 ・・・・

 ほろ付きの馬車の中で、残りの侍女と手を貸してくれた少女を待つ。

 そこからは辛うじて窓辺が見える。

  

 剣戟の音が窓から聞こえてくる傍ら、侍女が降りてくる。

 窓辺の戦闘音は静かになり、最後の侍女が地面に降り立つと、窓下で彼女らを受け止めた2名が侍女らと此方に走ってくる。


 「あっ!」

 逃がしてくれた少女二人が飛び降りた。

 一回、二回・・・・と壁を蹴り、階下の窓にフックを掛けて再び降り始めると、切られた綱が暴れながら地面に落ちた。


 偽装した兵士が窓からこちらを見ている。


 馬車に少女らが飛び込み声を張る。

 「出してちょうだい!!」

 先ほど祝賀会場で見た少女は返り血で朱に染まりながらも、見つめるサラに微笑みを返すのだった。

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