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いつもダンジョンに居ます  作者: ねむねむぴよ
第一部 三章 再出発
168/256

138話


 侍女達は覚悟を決め、賊を睨み付ける。

 斬られても縋り付き、一瞬でも時間を稼ごうとする鬼気すら感じるそんな目をしている。


 シャー!

 布を裂く音と共に二つの風が吹く。


 ジャリリリリ・・・・ ギャン!

 偽装兵の片手剣がいなされ、火花を散らす。

 慌てた賊が両手で剣を支えると、間髪入れず強打で弾かれ数歩よろめき後退する。


 「何者だ?!」

 男達も剣にはそこそこ覚えがあるが、その強打は華奢な女性の者ではなく非常に重いものだった。


 「最近の近衛兵も地に落ちたものね・・・・女性に名を聞くのに自分から名乗らないなんて」

 斜に構え足を開いた生花部の少女は、スカートを太腿の上まで裂き上げ、白く煽情的な生足が男達の目を奪う。

 「降り方はわかりますよね? ここは、手前どもが時間を作りますので、お急ぎください」

 二人の少女は振り返らずに尋ね、頷く侍女達を背に、身を低くし賊に襲い掛かる。


 少女は直線に並び前方が後方を隠す様に、一人の兵士を狙う。


 ガギン!


 剣を構えた賊が、少女の初撃弾いた。

 しかし次の瞬間、正面の少女が横に飛び退くと、後続の少女の鋭い突きが兵士の目の前に迫る。


 ギャン!


 相方の賊が、少女の突きを叩き落とす様に剣を振り抜く。

 しかし彼女は得物を手放さず、いつの間にかに仕込んだ含み針を、剣を払った男の顔に吹き付ける。


 「「グア!!・・・・」」

 初撃を凌いだ兵士は膝裏が突きにより大きく切り裂かれ、含み針を受けた男も瞼周辺に針を受け視界を潰されている。

 

 ズチャ ジャリ・・・ジャリリ

 少女は対角に位置するよう動き回り、賊の体の陰からもう一人の賊を襲う。

 少女らの鋭い剣が、賊を突き刺し、切り裂き、血だるまにしていく。


 「何を見ている!? 急ぎなさい!!」

 呆ける侍女らに檄を飛ばす。


 ザン! ダン!

 次第に動きの悪く成った偽装兵は深く首を切り裂かれ、口から血の泡を吹きながら崩れ落ちた。


 ビィィィィィ・・・・

 ロープが窓枠を削り、黒く焦がす。

 侍女は残り二人。

 少女らは脱出の補助に再び戻り、最後の二人ににフックを掛ける。


 「居たぞ!!」

 賊の増援が侍女に気付き、迫り来る。

 「くそ、窓から逃げるつもりだ!!」

 「王妃と王女はどこだ?!」

 「畜生!!もう外だ!!」

 偽装兵が窓の外を見る、そこには馬車溜まりに走る侍女たちの姿を目にする。


 ビィィィィ・・・・ ビィィィィ・・・・

 最後の二人を送り出す少女達。


 「逃がすな! 生きて捕えろ!! 行き先を吐かせる!!」

 賊のリーダーらしい男が怒鳴る。

 一瞬、偽装兵の行動が乱れる。

 殺すのではなく、どう捕まえるか指示がないからだ。


 「がっつく殿方は、もてないですわよ、では御機嫌よう」

 少女たちは持っていた剣を賊に投げつけた。

 「飛び降りるぞ!! ロープを切り掃え!!」

 明確な命令に、偽装兵がロープに飛びつく。 

 賊の怒鳴り声を聞きながら、少女達はどこからか取り出した革の手袋着けながらそのまま飛び降りる。


 賊の数名が、滑車のロープに取りつき剣を差し込み強引に捏ね、引きちぎろうとする。

 窓に取りついた賊は剣でロープを叩き斬り始める。


 バシ! バシバシ!!

 ビチ ブチチッ・・・・ブツン!

 斬撃のたびに子縄が千切れてゆき、ついにロープが千切れた。

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