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いつもダンジョンに居ます  作者: ねむねむぴよ
第一部 三章 再出発
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133話


 セルシオ家の一行が姿を現すと、地面が揺れる程の歓声があがる。

 パッと見で数千人がこちらを見ている。

 人込みの為かザワザワと、散発的に上がる歓声がなかな治まらない。


 クディがダンディな礼服姿で前面に立ち手を掲げる。

 喧騒が次第に収まり、程なくして水を打ったような静けさが辺りを包む。


 セルジオの左右を レシアとクディ、その後ろをグレゴとジード、 背後を元村長とニーニャが固め、レラがニーニャの脇を固める。

 テラスの入り口周辺に男衆とメイド、ニーニャの従業員頭達が陣取りどこかの総帥が演説を行うような布陣となっていた。


 「セルジオちゃん 私が口上を呟くから大声で復唱してくれる?」

 クディが傍らで呟く。

 頼りになる変態紳士だ。


 「セルジオちゃん、一歩前に出て、石鋤を掲げて」

 良く解らないセルジオが、一歩、歩み出て、両手で石鋤を天に掲げる。

 一見、鉄棒にぶら下る様な姿なのだが・・・・


 『オオオオオオォォォォ!!!!』


 歓声が館を揺らす。


 「・・・・まぁいいわ・・・・杖の様に床に突いて歓声が治まるのを待って」

 クディの考えと違った立ち姿だったのか、少し引き攣った笑いを浮かべながら声を掛けるが、歓声でセルジオの耳に届いていない。

 「セルジオちゃん、杖みたいに石鋤を突いて!!」

 ついつい大きな声になるクディ。


 セルジオは石鋤で床を打ち据える。


 バンバンバン!!


 異音に群衆が静まり返る。

 再びクディの笑顔が引き攣る。

 しかし、セルジオの話すセリフは忘れず伝える。


 「新年のこの日に、当家への参詣、誠に大義!・・・・」

 セルジオの顔が強張っている。


 「・・・・拙くね? 元村長・・・・セルジオたぶん真っ白になってるんじゃね?」

 ジードが村長に呟く。

 村長は、頷きながら冷や汗を流している。


 「し、新年に来てくれてありがとう!!」

 セルジオを取り囲む面々が、『あちゃぁ・・・やらかした』といった顔になる。

 『 オオオオォォォ!!!! 』


 クディは諦めずセルジオを励ます。

 「セルジオちゃん、しっかり頑張って、慣れないと思うけど踏ん張りどころよ」


 「しっかり頑張ってください!! 慣れないと思うけど、ここが踏ん張りどころです!!」

 セルジオがそのまま群衆に伝えてしまう。


 クディが青く成る。

 セルジオを囲む面々は、『あぁ、こうなるよな・・・・』と、既に諦めモードに入っている。

 クディの頭がフル回転してどう治めようかと思案をはじめる。

 「まぁ、セルジオが楽しめればいんじゃね?」

 ジードが呟く。

 何故かその声が、歓声の途切れた所でセルジオの耳に入ってしまう。


 「まぁ! 新年初日は!! みなさん楽しんでください!!!! 」


 『オオオオオォォォ!!』

 歓声が一帯を覆い尽くす。


 セルジオが血の気の引いた顔で振り向く。

 控える面々は『まぁ、セルジオだから有りか?』みたいな顔で彼を見ていた。




 ブォオオ!! ボン! ボン!


 突然、群衆居る数か所から青白い火球が浮かび上がり、セルジオに向けて飛翔した。

 テラスの一行の血の気が引く。

 セルジオは、『やっぱりだめだった?』みたいな顔で皆をみており気付いていない。


 クディとレシア、グレゴがセルジオを庇い前に出る。

 ジードと元村長が、セルジオに掴みかかる様に駆け寄るが、魔法の飛翔は早い。


 クディとレシアが無詠唱の魔力障壁を作ろうと前面に手を翳し、グレゴが儀仗用の剣を抜く。


 群衆も異常に気が付き幾つもの悲鳴が上がった・・・・


 


 

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