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いつもダンジョンに居ます  作者: ねむねむぴよ
第一部 三章 再出発
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130話


 彼女にとって初めての感情・・・・彼女自身、良く解っていない。

 サラは恋に落ちた・・・・ただ、なんとなくだがそう感じていた。


 昨晩は、彼女はセルジオに送り届けられてから、馬車の中で一睡もできなかった。


 落ち込んだセルジオの姿を思い出す度に、胸がキュンとする。


 『わたくしがセルジオ様をお支えしないと!』

 そう思う度に、赤面してしまいベットの中で転げまわる。


 セルジオの優しい手の温もりと胸に抱かれた感触が思い出される。

 「あわわわわ・・・・・」

 更に赤面し、ベットの中を転げまわる。

 今度は胸の奥だけでなく、お腹までキュンキュンする。

 『セルジオ様に後ろから、ぎゅって抱きしめられたら、わたくし・・・・キャァァァァァァ』

 妄想といえ可愛い物なのだが、そんな甘々な妄想が妄想を呼び、ベットから落ちても更に激しく馬車の床を転げまわる。


 彼女は激しく床を転げまわり、一瞬我に返る。

 すっと立ち上がり、何事もなかったようにベットを整える。

 再び潜り込み、それ程経たず、ゴロゴロと同じことを繰り返す。


 日は昇り、朝餉を準備する侍女達。

 馬車から一晩中聞こえてくる転がる音を聞きながら、昨晩から何度目かの声を掛ける。

 「姫様、如何されました?」


 「何でもありません!!!! ひゃぁぁぁぁ」


  ゴトン! ゴロゴロゴロゴロゴロ


 声を掛けると、更に激しく転げまわる音が聞こえる。

 「はぁ、姫様は一体何をなされてるのでしょう・・・・」

 「昨晩、泣きはらしたお顔でお戻りに成られた後、惚けたように公爵を見て居られましたが・・・・」

 「やっぱり何か有ったのでしょうか・・・・」

 「あったんでしょうね・・・・」

 「国王とお妃にご報告した方が良いのでは?」

 「私たちより、近衛隊長にお任せしましょう・・・・」

 小声で囁き合う侍女一同が、近衛隊長に視線を合わせず様子を窺う。


 彼女達の視線の先には、真っ赤に目を充血させ、射抜くように馬車を睨みつける近衛隊長の姿があった。彼からは一晩中異様なオーラが漂っており、未だに誰も声を掛ける事が出来ずにいたのだった。


 サラの奇行の所為で、また一つ誤解(不幸?)を招いている事をセルジオは、まだ知らない。

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