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いつもダンジョンに居ます  作者: ねむねむぴよ
第一部 一章 墓守始めました
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9.7話


 その日は昼近くまで靄が晴れず、昼近くまで霧が村を覆っていた。

 朝靄に遺体を焼く臭いが染みつき、村自体が瘴気に包まれている・・・・

 そんな錯覚を覚える程、村の雰囲気が沈んでいる。

 

 村長たちが打ち合わせていた事の中に、隔離病棟で亡くなった伝染病患者は老若男女問わず火葬とし、その灰を浄化して埋葬する取り決めが行われていた。

 その場で、話を聞いていた面々は十分に理由を理解しそれに従っていたが、現状を甘んじて受け流す事しか出来ない一般の村民には、「苦しんで死んだ者を更に鞭打つ所業は幾ら名役といえど・・・・」と反感を燻らせている者も増えていた。


 ・・・・


 「どうしするかの・・・・」

 特効薬の購入と代金の清算のため、バルザード邸を村の名役達が訪れていた。

 木箱毎引き取り、隔離施設へと搬送していく薬を見送り村長は目頭を揉む。


 「儂も個人の資産を切り崩し、もう現金の準備は厳しいのぉ・・・・」

 「私もです父さん。 王都からの連絡は何かありませんか?」

 「うむ・・・・既に周辺の村々に病気が拡散して大感染を引き起こしておる様じゃでな・・・・」

 特効薬の噂でこの村を訪れる使いの者は多く、周辺の情報が早く集まるのは良いが、とても安穏と聞き流せる状況ではなかった。


 ドンドンドン!

 商談室にまで響く扉を打つ音と腹の底に響く声が聞こえてくる。 

 『・・・・特効薬を分けて頂けると・・・・何卒・・・・』

 そんな零れ聞こえるやり取りを聞きながら一同は深い溜息を付いた。


 「そろそろ村民の我慢も限界やも知れません」

 テリル医師が溜息混じりに零す。

 「村民の多くは隔離病棟に運ばれたが最後、生きて戻れないと思っておるようです」

 教会の司祭が隔離病棟に家族を向かわせたくないと懺悔する少なくない村人の話を皆に語った。

 治療を手伝うシスター達もこの場におり、暗い表情で俯いている。


 村長が重い口を開く。

 「バルザードさん、此方は敷地も広く仮救護所の設置をお願いしても良いかの?

 まだ薬を使っておらず、初めて投薬を受けた者が落ち着くまでじゃが・・・・どうであろうか?」


 「そんな事でしたらお任せください」

 村長の問いにバルザードは即頷いた。


 「私も巡回しに参りますので、よろしくお願いします」

 テリルも頭をさげ、村民の不安の払拭の一助を依頼した。

 世話役のオッドも頭を下げ、話は火葬以外の対応についての検討を始めた。


 ・・・・


 打ち合わせも終え、皆が三々五々散っていく中、テリルが興味深そうに一人の人物を見つめていた。

 

 完治した最初の患者、バルザードの長男だ。

 家宰や従事長の手伝いをと、薬の販売を手伝っている。


 その様子をみて、息子の所作に医師が軽い違和感を覚えた。

 見られている事に気が付いており、緊張しているのか動作がぎこちない・・・・


 テリルは調子が悪いのかと、彼に声を掛けることにした。

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