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いつもダンジョンに居ます  作者: ねむねむぴよ
第一部 三章 再出発
155/256

125話

何時ものように書きなぐってしまったので、本日ゆっくり加筆・改稿しました。

いつもより長め?です。


 『俺一人で全部やるの面倒だから、国王様に助けてもらおう!』

 セルジオは既に助けてもらう気満々、当然で上機嫌だ。

 そんな浮かれた彼は、いつもなら周りの空気を読むが、今は自分の都合だけで話を進めてしまう。


 周りの皆は、セルジオの『 賠償請求はしない 』発言で固まっているのを良い事に、形見のナイフで自分の小指の腹を少し傷つけ、一滴の血をポタリと蝋封に落とした。




 巻物の蝋封に真紅の血が染み入るように吸い込まれると、ポロポロと封が崩れドラゴンの革用紙がパラリと広がる。その瞬間、部屋の内部が暗転した。


 部屋にいる惚けている面々も、冷や水を浴びせられたような悲鳴を上げて、辺りを見回した。



 ・・・・



 セルジオの見覚えのある、大きな門が開け放たれていた。


 『オオオオオオオォォ!!!』

 大回廊いっぱいに隊列を組んだ兵士達が次々と門の中に雪崩れ込んでいる。


 「セ、セルジオ様!!」

 サラがセルジオの傍らに駆け寄り目を見開いていた。


 セルジオの正面に座っているカールは跳ねるように立ち上がる。

 国王は壊れたゼンマイ仕掛けのおもちゃの様に、ぎこちなく振り向き、眼前に広がる情景をみてアングリと口を開けたまま固まった。


 「セルジオ様、これってあの門ですよね?・・・・」

 サラがセルジオの側で呟く。

 「セルジオちゃん、急に巻物開くなんて性急過ぎるわよ?!」

 クディ他、いつもの面々はセルジオの側らに集まり、過去の出来事に見入り始める。




 視界は、兵士と共に門の中へと入って行く。

 門は漆黒ではなく、輝くばかりの純白。

 門は光輝き、回廊やその奥も明るく照らしている。


 「奥はこんな感じになってるのねぇ」

 クディが呟く側でセルジオが頷く。


 門の中、いくつもの純白の列柱が光り輝き、広大な地下空間を明るく照らしている。


 中央通路の左右、スロープを下った先、白いスケルトンが大量に陣取り、雪崩れ込む兵士達と激戦を繰り広げていた。


 ゴォオォォ!!

 魔法使いが数人で詠唱をおこない、大きな火の玉を作り出す。

 その火の玉が滑るようにスケルトンの集団に投げ込まれ火柱を上げ吹き飛ばしてゆく。


 『押せぇ!! スケルトンなど取るに足らん!!薙ぎ払え!!!!』

 ずんぐりむっくりしたハンマーを持つ集団がスロープの途中から飛び降り、スケルトンの群れに殴り込みをかけ砕き、蹴散らし潰していく。


 状況を見れば数に勝るダンジョンの骨の兵であった、古代の兵士は軽々と打ち砕き骨片の山を築いてゆく。

 戦況は明らかに古代の兵士に傾いていた。逐次戦力を投入する古代の兵の指揮官、前衛の戦闘を邪魔しない様に後方の戦力を削ぐ魔法使いたち。

 人族に限らず、エルフにドワーフ、獣人の姿があちこちに垣間見え、連携を密に有利に戦いを進めている。

 「一方的だな、あとは時間の問題だぞ」

 レシアが呟く。

 腕組みをした、元村長、ジードやクディが頷く。


 カールはそんな彼らを見て、『何故落ち着いていられる?!』と戸惑うばかりだ。



 数で押され粉塵を上げて砕かれるスケルトン。

 しかし、戦況に違和感が漂い始める。

 戦闘の影響か空間に瘴気を感じる。


 薙ぎ払われ、倒したはずのにスケルトンが蠢く。

 一部を砕かれた頭蓋を再び頭に乗せ、骨の剣を持ったスケルトンが前線の兵士に背後から襲いかかる。


 乱戦・・・・戦場が混沌とし始める。


 「・・・・嫌な予感がする」

 セルジオがぽつりと呟く。

 その言葉尻が言い終わる前に、列柱の光が次第に暗く成り始める。

 「・・・・」

 セルジオ他、皆、状況の変化を見守る。



 古代の兵士達が篝火を用意し、薄れゆく光に対抗するようにダンジョン内に灯りを足していく。

 足元からカゲロウの様な黒い揺らぎが満ちてくる。


 列柱と門の光はついに失われた。

 視界に光るのは篝火の光を反射する、蠢く林のような兵士たちの鎧や剣だった。


 「むむ?・・・・これは魔素? それとも瘴気か?」

 レシアが唸る。


 闇に乗じて、スロープの下に滲みだした靄がたまっている。

 刻々と黒い靄が満ち満ち、兵士たちの剣や鎧の反射光が見えなくなる程、スケルトンと古代の兵士を包み込んでゆく。



 そして、潮目が変わった。

 優勢だった古代の兵士の武器がスケルトンに効かなくなり始める。

 靄は更に濃さを増し、それを吸収する様に白いスケルトンが黒く染まってゆく。


 「セルジオ様、あのスケルトンは・・・・」

 「うん、そうだね見た奴と同じスケルトンだ・・・・」

 その会話に『何故娘がそんなことを知っているのだ!?』といった表情でカール王が振り返るが、聞こえ始める悲鳴に、再び映像に視線を向ける。


 頭蓋に黄金の紋様が浮かぶスケルトンが一体、また一体と立ち上がり、一騎当千の戦いを仕掛け始める。


 先程はたやすく砕けた頭部は、ドワーフの大槌の直撃を受けても首を僅かに傾げるだけで倒れず、持っている黒い骨剣で数人の首をまとめて狩る。

 中央通路では、上段の兵士達を次々とスケルトンの溜り場に突き落とし、転落した兵士を滅滅多刺しにする下段の黒スケルトンに獲物を供給している。


 弓兵が矢を射るが、スカスカのアバラをすり抜ける。

 睨まれた弓兵には、落ちていた兵士たちの武器を軽々と投げつけは、数を削って行く。


 瘴気が更に濃くなってゆく。


 辛うじて拮抗していた古代の兵達の前線に異様な状況が発生した。


 大怪我で虫の息で倒れていた兵士が虚ろな目に赤黒い光を湛え、すくと立ち上がり始めたのだ。


 そして・・・

 つい先程までの仲間にゆっくり振り向き、耳まで裂けるような大口を開けて生きる者に襲い掛かる。


 狂喜の笑みを浮かべ仲間に掴みかかっては、首筋、頬の肉、耳を食いちぎり、スケルトンに自身諸共串刺しにされる。

 そして、倒された兵士が重症者になると、その者もスケルトン側の戦列に加わりまた仲間を襲い始める。


 篝火の灯りの下、繰り広げられる地獄絵。

 カール王が嘔吐する。

 サラはセルジオに縋りつきガタガタ震えている。




 魔法使い側から組織的な反撃が開始された。

 黒門の方角から魔法の輝きが前線に襲い掛かる。

 いくつもの光り輝く矢が黒いスケルトンを射抜く。


 黒い頭蓋に光の矢が突き刺さる。

 魔力に金色の紋様が激しく反応し、光の矢を吸収した。

 黒スケルトンの全身が激しく震える。

 眼球の無い空洞と喉の奥に光源が生まれ、次第に明滅するそれが頭蓋を満たしピシリとヒビを生む。


 ズバン!!

 髑髏は激しく爆ぜ飛び、周りの兵士やグール化した兵士達を巻き込み肉塊に変える。

 戦場のあちらこちらでスケルトンの爆裂音と共に血の花が咲く。



 『門外まで転進!!』

 隊長格が乱戦状態から立て直しを計るため、前線へ支持を飛ばす。

 伝令は瞬く間に戦場に広がる。

 「しっかりと訓練された兵士達だ・・・・しかし被害は減らせまいな・・・・」

 レシアが呟き、クディが厳しい視線で見守る。


 『転進!! 急げ!! 動ける者だけで良い! 転進!!』

 次々と敗走を始める兵士達を後衛の弓兵や魔法使いが援護する。

 魔法使い達が波状攻撃で、追いすがる元兵士グールの顔面を火球で吹き飛ばす。

 弓兵は、生の肉体を持つグールの肩や足を射抜き、餌食になる兵士を一人でも救おうと攻撃の手を緩めない。


 次々と門へと走り寄る兵士達。

 その背後で、聞きたくない地響きが聞こえてくる。


 ズン・・・・ズズン・・・・ズンズンズン


 必死で逃げる兵士の足もとに、青白い細い電気が走る。

 「この前と同じじゃな・・・・これに耐えられる兵は周辺各国には居るまいな・・・・」


 パリリ・・・・ズガガガガガガァァン!!


 元村長が、吹き飛ぶ兵士を見ながら唸るように呟く。

 サラがまた一段とセルジオを掴む手に力が籠る。

 カールは腰が抜けたのかへたりとその場に座り込んだ。


 靄った列柱の奥から中央通路上を特大の雷撃が奔る。

 電撃は門を抜けその先の兵士達まで焼き払い、肉と毛の焼けた臭いが一面に広がる。


 通路上を逃げ惑う兵士達を、スケルトンやグール諸共敵兵を焼き払う雷撃。

 眩い閃光の後、動く者の姿は無い。


 『門を、門を閉じよ!! 早く!!』


 漆黒の門が、兵士と魔法使いの魔力により次第に閉ざされていく。

 「走れ!! 早く!!!! 取り残されるぞ!!!!」

 生き残りの兵士たちは必死に形相で門へ群がる。



 ズン ズズン ズンズン


 篝火に浮かび上がる巨大なストーンゴーレムとその脇に控える小ぶりなゴーレム。

 逃げ惑う兵士をゆっくりと追うゴーレムが動けないが、まだ命ある兵士を踏みつぶし挽肉にしていく。


 ズン ズン ズン


 視界は既に漆黒の門の外側

 次第に迫るゴーレムが閉ざされる門の隙間からこちらを睨んでいるように見えた。

14日18時に2000文字位なの予約投稿しました。

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