124話
『何が悪かったのだ? 組し易い相手ではなかったのか?』
頭の中が真っ白で、何も思いつかない。
『父から王国を引き継ぎ、足を引っ張る有象無象の貴族共から国を守って来たのは俺だ。
俺の代で王国が終わるのか?』
必死に白痴た思考を抑え込み心を現実に繋げようと努める。
しかし、カールの頭の中では全ての計画が瓦解していく轟音が思考を塗り潰していく。
『俺が描いた絵は・・・・
隣国とセルジオ家の仲を取り持ち、2万の死者を出した怨みはセルジオに背負わせ両者に恩を売る。
それに、王女の手紙から貴族の何足るかを知らなさそうな当主を血族に抱え込んでしまえば、向こう云十年は財政問題も心配ないはずだ。
のらりくらりとセルジオ家の家臣の非難をかわし、難局さえ乗り切れば金蔓ごと懐に転がり込むはずだった・・・・
しかし蓋を開ければ・・・・
セルジオは、こちらの顔を立てる形で賠償権は放棄。
拙い手紙では、いろんな物が不足した発展途上の辺境の村で王国の支えがなければ立ち行かない場所。
セルジオは王女に好意を寄せている風の惚気まで書いてあったが・・・・
真逆、セルジオは然程王女に惚れている風はなく、どちらかといえば娘がセルジオに惚れている様子。
労働力が2万人も消えた隣国の経済基盤は崩壊寸前。
俺が国王なら尻を捲って、国そのものを売りに出してもおかしくない。
そんな無謀を許した、王族が悪い、正直自業自得なのだが・・・・
今年の冬は保つだろうが、春には傾国からの難民が押し寄せるだろう。
詰め腹を切らせた貴族に農奴として引き取らせるにも口がある以上王国の蓄えた食料にも限度がある。
長い歴史から僅かに血のつながる貴族も隣国に居る。当然助けを求めてくるだろう・・・・今回の様に。
様々なことも王国として対処せざる得ない状態。
しかし、隣国の価値を金貨5千億と算出した根拠はなんだ?
小国なら2~3国丸ごと買える額だぞ?!
土地か? 領内の鉱物資源か? わからん!!
それを今更ながら聞くことも出来ん。
その借りを『助けて下さい』の一言にぶっ込んで来やがった。
奴は本当に底意が無いのか? いや底意が無かったとしてもこの借りは簡単には返せぬではないか!
悪夢だ、これは夢だ!! 腑抜けのおべっか使い財政担当官、日和見外相、俺は何故連れて来なかった?!・・・・ぺらぺらだが日よけくらいにはなったのではないか?』
カール王は冷や汗が止まらない。
口の中が苦い。
心臓が早鐘のように脈打つ。
この場に王の望む助言を行える者はいない。
そこに、セルジオが追い打ちを掛ける。
「この国の一番偉い人にも、あれを見てもらってもいいよね?」
カール王がビクリと体を震わせ、セルジオの顔をみる。
セルジオはそんな王の異常な状態に気が付かず、ダンジョン管理者の蝋封に自分の血を垂らすのだった。
カール王・・・・剥げるかな?
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