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いつもダンジョンに居ます  作者: ねむねむぴよ
第一部 三章 再出発
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123話


 コンコン!

 執務室の戸が叩かれる。

 いつの間にか、戸の外に守衛が居り、開かれた戸からリエンがおずおずと来訪者が訪れた事を告げる。

 「サラステア殿下がセルジオ様に至急面談を求めて居られます」

 「サラさんが? あぁ、どうせなら一緒に話を聞いて貰った方がいいかも・・・・」

 「承知しました。ご随伴の方も居られますがお通ししても良いでしょうか?」


 『あぁ、近衛隊長かなぁ・・・・』

 セルジオは勝手に唾を飛ばすおっさんを思い浮かべ軽い気持ちで了承する。

 「あぁ、断るのも面倒だから通しちゃって」

 「承知しました」


 リエンが下がり、そう間が経たずに再び戸が叩かれる。

 開かれた扉から、リエンが、その後にサラと、見た事もないやけに風格のある男性が入って来た。


 サラの表情が彼女にしては珍しく引き攣っている。


 「セルジオ様、お忙しいのに突然の面談を快諾して頂き、ありがとうございます。

 こちらは、お父様です。 私がお手紙を出したら、お忍びで来ちゃいました・・・・ごめんなさい」

 サラが申し訳ない気持ちが振り切っているのか、少し涙目になっている。


 「「「「!!!?」」」」


 元村長、リエンさん、ティーセットを運ぶメイドに守衛まで傅く。

 セルジオは・・・・どうすればいいか解らずそのまま硬直していた。

 こんな時に限って、足元にちっさいインプがセルジオの足に隠れ国王をのぞき見している姿が妙にホッコリしてしまう。


 「カール・レイクフィッシュ・ゴートだ。

 セルジオ殿、本日は独りの親として顔を出したに過ぎぬ故、我の事をカールと呼ぶ事を許す」


 「・・・・セルジオ・ゴートフィッシュ、セルジオと呼んで下さい」

 「閣下、立ったままでは・・・・そちらのソファに・・・・」

 元村長が慇懃にソファーに座られるのを勧める。

 リエンは給仕役のティーセットを目配せで引き継ぎ、彼女がみずからお茶を入れる。


 コンコン!

 「セルジオ!! クディとアレクを連れて来た・・・・ってなんか雰囲気が・・・・」

 何も知らずに入って来たジードにメイドが耳打ちをする。

 「げぇ!? 閣下! 失礼いたしました!」

 ジードがその場で跪くとカールは「よいよい気にするな」と気さくに返す。


 「それにしてもセルジオ殿の村・・・・いや、すでに町か、随分の活気であるなぁ」

 「はぁ・・・・」

 フレンドリーに話しかけてくるカール王に間の抜けた返事しか返せないセルジオ。

 「ハハハハハハ、さすがはセルジオ殿、物怖じせんとはなぁ、ハハハハハ」

 何が愉快なのか解らないが、カール王はご機嫌な様子だ。


 コンコン!

 「セルジオ!聞いたわよ!!・・・・って、わぁぁぁぁぁもしかして王様?」

 ニーニャとレラも固まるが、その場で傅く。


 いつもの事なのか再び、「よいよい、気にするな」と軽く流す。


 「さて、急な話で悪いが・・・・」


 コンコン!

 三度、話の腰を折るように戸が開かれる。

 「セルジオちゃん! 聞いたわよぉ・・・・ってどなた?」

 クディ・レシア・アレクの三人が入ってくる。 


 「!!!!? 国王閣下!?」

 アレクが扉の前で急に傅くので、クディが踏んづけ、レシアが尻を蹴飛ばす。

 「ゲフン!」

 小柄なアレクが顔から床にダイブして伸びる姿がおかしく、一同が失笑を堪える中・・・・

 「ハハハハハハハハハ!!! 愉快な家臣だなぁ、セルジオ殿」

 豪快に笑うカール王に一同は苦笑いするしかなかった。


 ただニーニャだけはアレクセイを抱きかかえ、鼻の下を伸ばしているのは軽くスルーしておく。


 ・・・・


 沈黙の中、皆にお茶が配られ一息ついたところで再び口を開くカール王。

 「少し政治向きの話をと思ったのだが、セルジオ殿の様子を見ると人払いは不要の様だが良いか?」

 「あ、はい、俺より皆の知恵を借りたいと思います」

 「うむ・・・・儂もいろいろ放り投げて来た身でな、話が早いと助かる。

 で、外交担当はクーリンディアド殿でよかったか?」

 「はぃ、微力ながら担当させて頂いておりますわ閣下」

 微妙な空気が流れるが、それもスルーする。

 「そうであるか、では端的に申す。あまり隣国を虐めてくれるな。

 儂の所に、彼の国の外相が泣き付いて来おったぞ?

 何でも、金貨にして5000億枚・・・・我が国でも払えぬ額を吹っ掛けるとはどうだ?」

 「かなり値引きしたのよぉ・・・・セルジオちゃんの数か月分の稼ぎなんだから。

 閣下もセルジオちゃんを舐めてません?」

 クディの目は笑っていないが、口調は軽い。


 「・・・・そうであるか、道理で通貨の流通が滞るわけじゃな・・・・

 クーリンディアド殿は都の状況をご存知か?」

 「存じないわ、想像は付くけど。

 子飼いの貴族がやらかした事でもあるわけだし、自業自得じゃないかしら?」

 「そう言うてくれるな、市井の者が責めを受ける事でもあるまいて・・・・

 貴族に関しては既に処分済だ」

 「そうなの? それってトカゲの尻尾切りって言わないのかしら?」

 「クククハハハハハ!! さすがはセルジオ殿の外相だな ハハハハハ!!」


 「閣下の御厚情に感謝はしているわ、そちらの言い値だけど・・・・」

 「そうであったな、すまんすまん」

 クディは、やらかした責任を横に置き、王国に花を持たせていると暗に告げている。


 「こちらに来てから、サラからも幾度となく文が届いておってな、セルジオ殿が凄い凄いとそれはもう、父親としてはどうにも妬けてなぁ、ハハハハハ」


 王と親の顔をコロコロ入替話を進めるカール王にクディもなんとも言えない顔をしている。

 ちなみにサラは先ほどの暴露で赤面し、頭から湯気が出ている。


 「それで、どこまで話したか・・・・そうそう隣国だったな。

 彼の国は略2万の兵が消えたのだ、跡形もなく・・・・

 僅かな傷病兵が帰国し、ゴーレムの話が尾ひれを付けとんでもない話になっているらしいなぁ」

 「そのようねぇ・・・・」

 「ほう! 知っておったか」

 「多くの商人がこの地を訪れるわぁ・・・・」

 「そうかそうか、でだが、取り立てを王国で肩代わりするから、がっつり値引きして欲しい」

 「・・・・セルジオちゃん良いかしら?」

 クディも請求金額がそのまま貰えるとは思っていない。

 しかし、向こうの交渉団は何かある度に「本国へ持って帰り採決を・・・・」と言うばかりで一向に話が進んでいないのも現実。

 交渉全てを王国に肩代わりさせるのも有りだとクディ・元村長・ニーニャあたりは考えている。


 「はい、いいですよ。 値引きじゃなくて、賠償請求しなくていいです」


 このときはじめて、カール王の顔から一切の表情が抜けポカーンと口を開けるという誰も見た事のない顔を一同は見る事と成ったが、セルジオ以外の全ての者がそんな顔をしていた。


 「カールさん、後は任せます。 だから困ったときに助けて下さいね?」


 セルジオは解らずにやっている事だが、カール王はこの一言で顔面が蒼白になり冷や汗を流すばかりだった。

  

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