118話
サラは余程怖かったのだろう。
セルジオは、腰に力の入らない彼女を抱きかかえる様に寄り添い暗闇の中を地上に向けて歩いて行く。
「セルジオ様、申し訳ありません」
「気にしなくていいよ、王国の兵士でもなかなか倒せない死霊憑きを倒したんだ。
サラはとっても勇ましい子だよ」
「・・・・わたくしは、セルジオ様から勇ましいと言われるより、可愛らしい、お淑やかなどと言われた方が嬉しいです・・・・」
無理やり作った笑顔を向けるサラ。
震える肩が、サラの精神的なダメージが大きかった事を体現している。
サラは失禁したようだ。
強張る彼女の動きで察してしまうセルジオ。
今にも泣きだしそうな顔で俯き、よろよろと足を前に出す彼女が不憫に思えてしまった。
「えっ?! セルジオ様?!」
震える彼女を、ひっしと抱き留め震えが治まるのを待つ。
「俺を助けようと、こんな奥まで一人で・・・・
しかも、怖い目にも合わせてしまった。 すまないと思ってる・・・・」
サラが、顔を上げ目を見開く。
「わたくしが身勝手におこなったことです。 セルジオ様には何の落ち度もありません」
「それでも、怖かっただろう? ごめんな・・・・」
彼女の綺麗な柳眉が歪み、綺麗な目じりから大粒の涙がホロホロと落ち始める。
「あれ?・・・・やだ、なんで? 嬉しいのに・・・・あぁ、わあぁぁぁぁぁん」
セルジオの胸に顔を押し付け、醜く歪んだ泣き顔を見せまいと両手で胸に縋り付く。
・・・・ダンジョンに彼女の泣く声が響く。
次第に落ち着き、少し鼻をすすりながらサラが顔を上げた。
その顔はとても晴れやかで、陰気なダンジョンの空気が浄化された気がした。
サラの震えはもう治まっていた。
「ちゃんと立てる?」
「はい!」
「じゃ、早く地上に戻ろうか・・・・」
「はい♪」
只でさえセルジオに憧れ尊敬している少女が、その人にやさしい声を掛けられたらどうなるか・・・・
何故だか、サラの瞳にハートの模様が浮かんでいる気がするセルジオだった。




