114話
壁一面が漆黒の扉であった。
カンテラの灯は全て戸に吸われ、門型の闇が広がっている様に感じる。
セルジオは恐る恐る素手で触ると、彼の精神力に反応したのか、振れた所から放射状にカンテラの光に似た淡い揺らぎが広がり、消えてゆく。
「相当な力がないと、この門は開かないんだろうな・・・・」
セルジオは壁の隅まで移動し、カンテラを持つ手と石鋤を使い、ゆっくり撫でるように調べていく。
カツ カツ カツ ・・・ カツ
石鋤で叩く壁面に空隙がある。
少し下がり全体を照らすと、勝手口のような出入り口が、奥に向かって開いたままになっていた。
「・・・・ここからインプが出入りしていたのか?」
足元を調べる。
長い年月に降り積もった塵が床面に足跡を残す。
小さな裸足の足跡、ガリガリインプの物だ。
少し大きな裸足の足跡、二度目のインプの物だ。
行き返りの足跡だ・・・
それに・・・どうやってここまで来たのか5名の足跡が門を潜り、戻っていない。
「それにしても、すごい奴らも居るんだな・・・・冒険者かなぁ」
セルジオは再び足跡を数え直し開口部から頭をそっと突き入れた。
あまりにも静かな場所なので、セルジオの耳には常に耳鳴りのような音が聞こえている。
その耳鳴りに自身の鼓動と呼吸音が聞こえ、生きている事を実感させる。
何故か一人暗闇の中に居ても怖いと感じないのはセルジオ自身不思議だった。
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