表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつもダンジョンに居ます  作者: ねむねむぴよ
第一部 三章 再出発
139/256

109話


 セルジオが道端の麻袋を拾い上げ、後ろを振り向く。

 「本当にダンジョンに潜るつもり?」

 「は、はい!」

 少し後ろをカルガモの雛のように付き従う彼女に、『ちょっといいかも』と思うセルジオ。

 「セ、セルジオ様? 忘れ物をしたので取りに戻ってもよいでしょうか?」

 「ん? わかった、ここで待ってる」


 「はい! 急いで戻ります!」

 サラは後ろ髪を引かれながら寝泊りしている馬車へと走り去った。


 ・・・・


 「はぁはぁはぁはぁ・・・・やった! ご一緒できる! 上々だわ」

 重いぶかぶかのブーツも気にならない。

 体が軽く感じる。


 セルジオを追いかけた距離はとても長く思えたのに、今はとても短く感じる。


 何人かの人とすれ違う。

 彼らはサラを王女と思う者はだれもおらず、寝ぼけ眼で見るだけで関心を示すものはいない。


 自分の馬車が見えてきた。

 馬車の傍で、侍女が朝食の準備をしている。

 近衛兵が、走り寄る人物を誰何すいかしようと集まるが、サラスティア王女と見て判り、その場に膝をつく。

 侍女もたまったものではない。

 夜回りの侍女は王女の外出に気が付かず、死ねと言われてもおかしくない状況に凍りつく。

 「はぁはぁはぁはぁ・・・・すべて不問にする!

 今は時間がないのです!

 はぁはぁはぁ・・・・質問は受け付けません!

 セルジオ様とご一緒できる機会です! 邪魔する者はゆるしません!

 はぁはぁはぁ・・・・お父様から授かった物をいそいで!! はやく!!!」


 サラは差し出された白湯を呑み、息を整える。


 「そのようなお召し物を・・・・」

 侍女が瀟洒なローブを持ってくるが、サラは手で払い避け、強い口調でたしなめる。

 「お黙りなさい! これはセルジオ様からお預かりしたものです!

 あなどることは許しません!」


 いつもほがらかな王女の何時もと違う強い語気に侍女は今にも泣きそうになる。


 「姫様、お持ちしました!」

 「はやく、はやく付けて!! はやくはやく!!!」

 いつもは侍女にまかせっきりのサラは、指輪を取り上げ自分で付けていく。

 ネックレスとイヤリングを付けて貰ている間に、ティアラの頭に乗せ「どう?おかしくない?」などと侍女に聞く。

 ティアラの位置を直してもらい、「朝餉あさげの支度が整いました」と告げる侍女に「それ所ではありません!」とそのまま走り去ろうとする。

 そこへ、状況を見守っていた近衛兵が傅き口上を述べる。

 「王女様御一人での外出はあぶのう御座います、我々供回り・・・お?」


 近衛兵が顔を上げると、サラの姿はもう随分小さくなっていた。


 「はぁはぁはぁ・・・・間もなく、間もなくお傍に参ります!」

 遠くから聞こえる近衛の声を聞こえない事にしてセルジオの元に向かうサラスティアだった。

感想・評価など お待ちしてます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ