107話
ゴーレムの蹂躙から2日、セルジオの館も災禍に見舞われ焼け落ちた。
その日の混乱も収まらぬ間に、彼の館に有るであろう財宝を狙い、何人もの火事場荒しが訪れるが、彼らは何故だか次々と捕らわれ、鎖で繋がれ強制労働に勤しんでいた。
捕まえたのは、クディと王国近衛兵達が表向きの主役となっていたが、実質はセルジオ家に過去に押し入った盗賊達とその影の統率者:ターニャ婆さん、そしてレシア率いる男衆だったりする。
闇に紛れ、館跡を掘り返す賊を音も立てずに無力化、在る者は吹き矢で、または罠や礫で速やかに排除され、翌朝には簀巻きにされて曝される。
暗がりからささやき声がする。
「・・・・おい、セルジオさん戻って来たぞ?」
「おいおい、あれ姫様じゃないか? お持ち帰り?」
「面倒な事になる前に、ターニャ師匠に知らせておこう」
「あぁ、黙ってたら俺たちの命が危ない!」
男女の囁く複数の声が一つ減り、他の者は状況を見守る。
「セルジオ様も隅に置けないね・・・・やっぱり男の人ってこと?」
「まぁ、それはそうだけど、セルジオさんだ、俺達が思っている通りにはならない気もするな・・・・」
複数の頷く気配がする。
「レシアさんにも知らせとくか?」
「それよりレェブラーシカさんに伝えた方がよくね?」
「そうだな・・・・じゃ頼む」
「任された!」
また一つ声が減る。
「じゃぁ俺はしっかり小屋の中を・・・・」
バキ! ドサッ!
なんだか酷く固い物でぶん殴り、ぶっ飛んだ音が聞こえる。
「私がいく! お姫様も女性!」
「わ・・・わかった」
明け方の薄明りに鼻血を流しながら立ち上がる男の影。
そこには相方の女声の姿は見えなかった。
・・・・
ギギィ バタン
少し前にセルジオが住んでいた小屋より少し大きめの家・・・・いや小屋にサラを連れ帰り、暖炉に薪を焼べる。
燃えさしで腰のカンテラに灯を点け、その燃え止しに藁を足して火を起こし、彼女を暖炉に招きその前に置いた椅子に座らせた。
少女の足は雪の中を駆けてきたせいで、赤く腫れたように見える。
セルジオはケガをした家畜の世話をするように水桶に水を汲み、綺麗な布きれを浸して少女の足を拭く。
「・・・・痛い所はないか?」
サラスティアは若い男性に足を触られ赤面しているが、唇は紫色になっている。
セルジオは小鍋に水を汲み、そのまま火にかけた。
「痛い所はありません、お手間を掛け申し訳ありません・・・・」
恐縮して身を小さくするサラ。
「そんな恰好で、外に出るから・・・・」
コップ一杯分の湯が沸き立っている。
セルジオは自分のカップを取り出し、山盛りのジャムとバターをスプーンでつっこみ、小鍋に茶葉を入れながら少女に尋ねる。
「それで、何故俺と一緒にダンジョンに行きたいんだ?」
「・・・・」
いろんな思いが過るが、言葉にできず俯くサラ。
茶葉を漉しながらカップに注ぎ、スプーンで混ぜ、そのまま彼女に渡す。
「熱いから、気を付けて・・・・」
「あ、ありがとうございます」
サラはカップを受け取り、口元にカップを運び啜った。
セルジオは彼女が暖を取っている間に、服を探すが男物:彼の作業服しかなく新しい物を見繕い彼女の元にもどった。
その頃には彼女の頬には赤みが戻り一息付いたといった感じには回復している。
「こんな物しかないがいいか?」
セルジオが服を差し出す。
「は、はい!!」
彼女は立ち上がるが、服を受け取らない。
「・・・・あ!」
セルジオは俺が見ていると流石に着替えられないと気が付き、背を向けて、予備の靴を探す。
「・・・・あぁ有った!」
物音がしないので、恐る恐る振り返ると、真っ赤な顔をしたサラがそのまま立っている。
「・・・・」
目の前で、コートをその場にずり落とす様に脱ぎ捨て、真っ赤な顔で透けそうな寝間着姿になる。
「!!!!??? ちょ、ちょっと待った!!」
セルジオも赤面し顔を両手で覆う。
「わ、わたくし、そのようなお召物を着た事がございません・・・・
お手間とは存じますが・・・・その・・・着せて頂けませんか?」
そう言うと胸の前で握り締めていた両手を開き、少し顔を背けて、両手を広げた。
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