100話
セルジオがダンジョンの入り口で立ち尽くしている。
クディとアレクセイがその後に続き、外の景色を眺める。
そこには、セルジオの知っている風景は無くなっていた。
段々畑の殆どの土は全てはぎとられ、見通しが良くなっている。
セルジオは下唇をきつく噛みしめた。
足元から屋敷に向かい非常に緻密に組まれた石組の道が見える。
大石の周りの土も無くなっており、今は祭壇のような少し高い場所にセルジオ達が立っていた。
屋敷からはと黒煙が噴きあがり、日当たりの悪い夕暮れの斜面を赤く照らす。
巨大なゴーレムの背中。
屋敷の倍程大きな体は膝立ちにような状態で、轟音と共に雷撃を煌めかせ敵兵を焼き払っている。
大気に人の焼ける独特の臭いが充満している。
夕暮れの薄明かりで全てを見通し難いが、2万の兵の姿は無く、逃げ惑う兵士の姿も、ほとんどいない。
パッパッパリリリィ ドンドドンバリバリバリバリ・・・・
高所から見下ろすゴーレムが反射的に、動く兵士を察知しては雷で打ち殺している。
ズズズズズズ
地面からさらに大量の土を補給している。
ゴーレムが残りの足を完成させようとしている様だ。
セルジオの手が震え、目が潤んでいる。
彼は墓所の方に視線を向け被害がない事を確認する。
そして胸のメダリオンを翳しながらゴーレムに向かって走り出した。
「セルジオちゃん危ないわよ! よしなさい!!」
「セルジオ殿!!!! 自棄をおこしてはいけません!!」
彼等の声を背に、ゴーレムに向かって駆けるセルジオ。
「やめろ!!!! もういい!! これ以上はやめろ!!!!」
ズン! ズズン!!
胸元の辛うじて表に見えるゴーレムの頭が、ゆっくりとセルジオの方を振り向く。
ゾゾゾゾゾ
ゴーレム自身の雷撃の熱が焼いた体表から、マグマの様に溶けた土がズルズル落ちてくる。
ゴーレムはセルジオを正面に捉える。
「もういい、止めてくれ!!」
セルジオがメダリオンをゴーレムに翳す。
ズズズズ
メダリオンをより良く見ようとしているのか、地面の土を吸い上げながらゴーレムの頭が胸から押し出され、セルジオに近寄るように伸びてくる。
ズズズズズ
メダリオンを認めたゴーレムの額にスパークが走る。
セルジオが再び叫ぶ。
「もういい!! やめろ!!! これ以上、畑の土をもっていくな!!!!」
『『 そこかよ!! 』』
心の中で絶叫する、クディとアレクセイがセルジオの激白に固まる。
ゴーレムの頭は全ての制御を手放し、只の石塊のように、本体から剥れドスンと落ちた。
巨躯が屋敷の火災に照らされながら次第に倒れ始めた。
ズズズゾゾゾゾゾゾ・・・・ザザザンンンン
半ばガラス化した体表に無数のヒビを走らせ、原型を留めないまでの土塊となって崩れゆくゴーレム。
日が落ちる。
すべてが何もなかったと、いう様に夜の帳静かに辺りを包んでいく。
隣国の兵士2万。
半日もしない短時間で、名実共に蒸発したのだった。
セルジオの憤りの原因、しっかり落ちてましたか?
少しは楽しんで頂けましたでしょうか? かなり気にしてますw
拙作者の私ですが、当初も目標の一つ、100話まで一気に駆け抜けてみましたw
年内に収まらなかった点は悔やまれますが、その分少しでも意表をつける話にできたのかなぁと反芻しています。
続く3章の頭、書きだしをどうするか迷ってます。
・・・・やっぱりお姫様かなぁ 商工会より絵になるよなぁ・・・・
(まずは、これまで書いた話の変なところをもう一度、改稿してゆきたいと思ってます。
※もし気が付かれましたら、ガンガン突っ込んで頂けると助かります)
感想・評価などお待ちしてます。




