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いつもダンジョンに居ます  作者: ねむねむぴよ
第二部 王国の食指
128/256

99話

 ズン、ズンズン ゴリリリリ!!!


 「入って来たのかしら、あれってゴーレムの動く音でしょ?」

 クディーが体を起こし、音の方に目を凝らす。

 石戸までかなりあるり、闇の中に紛れその様子を窺うことはできない。


 ガガガ! ガギン ガツ! ガリリ!


 幾つもの金属が固い地面を叩くような音


 ズン ズズン ブォォオオオ!! ドドゴン!!

 ブォオオオ! ドゴン!!


 重い物の足音、大きな物が風を切る音

 音だけで、そこに居る兵士たちの立たされた状況が、悲惨なものに思えてくる。


 そんな無機質な音に、雄叫びや悲鳴、湿った何かが碾き潰される音が混じり、満ち溢れ、その残響音が離れたセルジオ等の元にまで届いてくる。


 「セルジオちゃん、一応、灯落としておく?」

 「あ、はい、灯は落としておきましょう」


 カンテラの灯を消し、周りが闇に閉ざされる。

 次第に慣れていく目。


 トンネルの様に続く回廊の先に、微かな光が見える。

 

 「やっぱり戦ってるわねぇ」

 「クディ殿、ゴーレムはこちらに来ないのですか?」

 「うぅ~ん? たぶんセルジオが居るからここは大丈夫かしらん?」

 クディがセルジオを見ながら首をかしげる。


 「た、たぶん大丈夫だと思うけど、できれば動いているゴーレムには近づきたくないなぁ」

 「それは、私もですが。上がる前に石戸の近くを通らないといけないですよね?」

 アレクセイが眉を寄せながらセルジオに問う。


 「そうですね・・・・はぁ、しかし危なそうだから、もう少し様子を見ましょう」

 セルジオは、回廊の先を眺めながら、溜息をつく。


 ・・・・


 絶叫や悲鳴が途絶える。


 ズズズズ ズン ズズン

 ゴリゴリゴリゴリ ゴリゴリゴリゴリ


 「・・・・たく・・・・はぁ」


 遠くでき臼の音がする。

 セルジオが更に深く溜息をつく。


 「セルジオちゃんどうしたの?」

 「ん? あっ、いや、片付けるの大変そうだなって・・・・」

 「片付ける?」

 アレクセイが理解できず尋ねる。


 「えぇ、たぶん、あの音だと、床に擂りつけてるんだろうなって・・・・」

 「・・・・そうねぇ、そんな感じの音ねぇ・・・・頑張れ!当主さん」

 クディが他人事のようにセルジオを応援する。

 「クディさんも、ダンジョンに降りられるのだから手伝えるでしょ?」

 セルジオが暗闇の中でクディの方を向く。

 「そうです、死者を葬る行為は尊いおこないです!」

 アレクセイがセルジオの話に乗っかる。


 「じゃアレクちゃんはダンジョン内回収要員、確定ね?」

 「へぇ?」

 暗くて見えないがアレクセイは大量の冷や汗を掻いていた。


 ・・・・


 何の音もしなくなるのに、たいして時間は掛らなかった。

 ダンジョン内の回廊に再び静寂が訪れる。


 「もっと掛るかと思ったけど・・・・そろそろいいかな、ゆきましょうか」

 セルジオが腰を上げ、手探りでカンテラに灯を入れる。


 「なるべく、まとまって通り抜けましょう・・・・」


 3体の直立不動のゴーレムが、カンテラの光に浮かび上がる。

 周辺に人影らしいものはなく、強烈な血と糞尿の臭いが立ち込めていた。


 床面の血糊がカンテラの灯を受け湖面の様にキラキラと輝く。

 金属製の残骸、波間の流木の様に光に揺らいで見える。


 「・・・・はぁ、ここ綺麗だったのに・・・・」

 セルジオがまた深く溜息をつく。

 気持ちは分らないでもない、石戸の中、外一帯が血の海なのだから。

 「でも、セルジオちゃん? こうなるの解ってたんでしょ?」

 「えぇ、あの状況でクディさん達や、村人達を助ける方法って、他に思い浮かばなかったんです」

 「セルジオちゃん! 私、猛烈に感動してるわ!!」

 「クディさん、そういうの、もう要りませんから・・・・」

 迷惑そうにクディを見るセルジオ。

 クディはアレクセイが静かだと視線を向けると、戸の近くで嘔吐している。


 「上が心配ね、急ぎましょう」

 クディが先を急ごうと、石戸を潜る。

 「うわぁ・・・・」

 クディが絶句する。


 石戸の付近に大量の兵士が将棋倒しになり、息がない。

 圧死の様だ。

 そんな遺体が坂下の突き当りまで何人も折り重なり合っている。


 「・・・・はぁ」

 セルジオは大きな溜息をつき、石戸を閉める。

 

 ズズズズ・・・・ズン!

 仮にダンジョン内で死霊憑きになった者が(みんなペースト状になっていそうだが)居たとしても上がって来ないだろう。


 「ここの遺体は大丈夫かしら・・・・」

 クディが心配げに呟く。

 「・・・・わかんないですが、もし動いてたら入り口から、あのお酒流し込んで燃やしましょう」

 セルジオはサラリと言ってのける。

 「セルジオ殿・・・・ウェエエエ」

 もう吐く物がなく胃液の臭いをさせるアレクセイが何か言いたげにしているが、まともに話せない。


 「とりあえず、地上に戻って侵略者のトップと休戦協定からね・・・・」

 クディが遠くに光る入り口を見ながら、再び険しい顔になる。

 坂道にびっしりと押しつぶし、踏み殺された兵士の遺体が敷き詰められていた。


 ・・・・


 セルジオが階段を上がっていく。

 一同がセルジオの後を追い、ダンジョンの入り口から漸く這い出した。

 肉の敷き詰められた坂道は、予想以上に上り辛く、両手両足を駆使して昇るしかなく、死んだ兵士の哀れな表情を何度も直視しなければならなかった。


 そこに来て、ダンジョンの外の景色・・・・

 セルジオの顔から血の気が引いていった・・・・ 


100話は 4日0:00 予約投稿済です。


何じゃそら!? って言う声が聞こえそうな100話です。

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